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The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.




沈むより溺れたい act.1


※R要素が含まれています。もう、1度ご確認。お姉さんは18歳以上ですか?OKな方はスクロール。















久方ぶりの人間界の訪問。もう、最後に会ってから半年が過ぎようとしていた。何故、これほど迄にもこちら─人間界─に足を向けなかったのか。理由はただ1つ。蔵馬にこたえを求められる、その一点だった。

時折、蔵馬の視線が可笑しいことには気づいていた。常の穏やかな翡翠ではなく、獲物を見つめるそれであった。何故、そんな瞳で己を見るのか。何故、その瞳とかち合った後、憂いをおびた切なげな瞳に代わるのか。そして、悲しく微笑を浮かべるのだった。

「飛影!?」

窓から侵入をはたすと、蔵馬の動揺の声で迎えられた。

「・・・、もう、来てくれないと思ってた」

その声には、諦めの色が隠しきれていなかった。浮かべられた微笑は力なく、消えてしまうのではなかろうか、と、いうほど儚げであった。実は、そのつもりだった。蔵馬からの思いもよらない告白を聴き、怖くなった。蔵馬の真剣さに。その情熱的な眼差しと言葉に。本気であるがゆえに、その思いを受け止めるべきか、ずっと悩みもした。が、悩めば悩むほど、蔵馬のことばかり考えを巡らせる己に気づいた。馬鹿らしい、何故、奴に囚われなければいけない。そう、思い、思惟そのものを中断したことさえある。が、それでも、夢のなか迄蔵馬は追いかけてくる。払っても、払っても、払っても、「好きだよ」と。「愛している」と。困惑した、迷いもした。が、しかし、ある日、蔵馬が消滅した世界を想像し、ゾッとした。躰が半分になったかのような錯覚。走る悪寒、額に無様な冷や汗が幾つも流れ落ちた。それは、蔵馬に告白をうけた時の比ではなかった。

そうか、・・・。もう、既にこの心は蔵馬によって喰べつくされていたのか。

ならば、もうこたえは1つしかない。

「諦めたのか」

暗に、半年前の告白を指した。

「まさか。でも、・・・、重い、でしょう貴方には。俺の気持ちは」

そう云い、自嘲の陰りが見える笑みを浮かべた。

「じゃ、聴きたくないのか、こたえ」

すると、明らかに動揺を見せた。常の冷静沈着な仮面は、そこには皆無だった。拳を握りしめ蒼白になって、ただひたすらに待っている。己の返答しだいで、この生暖かな関係が終わりを告げる。己のたった1言を待っている憐れな死刑囚。そう思ったら、急加速に眼前の狐が愛しさを増した。最初にこちらの心を喰らっておいて、脅える狐を、後悔してしまう愚かな狐を。そのさまを、始めて可愛く思った。

「もう、俺はお前に喰われたんだ、好きにしろ」

「・・・。え?」

喰われるものはあとは躰のみ。そうしたならば、心身ともに蔵馬のものになる。それでいい。蔵馬ならば、くれてやってもかまわない。髪も、瞳も、血も、肉も、それ以外全て。そうしたならば、悩む必要もなくなる。そうだろう、蔵馬。お前の一部になることは、すなわち、お前も己の一部になるのだから。美しいお前。聡明なお前。人間臭いお前。妖怪のお前。その全てが己のものになる。その欲する願望を、人は愛情と呼ぶのであろうか。判らない。でも、蔵馬が他のものになるのは赦せなかった。他のものに、あの優しさに溢れた瞳を見せて欲しくない。他のものに、たおやかに微笑みを浮かべるのが我慢ならない。たんに、自己顕示欲なだけなのかも知れない。それだけでもかまわない。真実は他にあるのかも知れない。それでも、お前だけを欲しい。お前だけが欲しい。お前だけを己のものにしたい。それはまぎれもない真実。

驚愕の渦のただなかに蔵馬はいた。信じられない、とでも云うような表情。否定的な言葉が返ってくると、確信さえしていたのに。見事にそれは打ち砕かれた。それも、思いもよらぬかたちでもって。

「嫉妬するよ、今より貴方を束縛するよ。それでもいいの」

それだけではきっとすまない。貴方の見るもの、貴方の思考の全て。貴方が触れるもの、貴方が感じるもの全て。自身だけの色に染めたくなる。

「そうしたいんだろう。それが貴様の望みなんだろう」

「でも、・・・」

尚も云いよどむ馬鹿な蔵馬。でも、可愛い蔵馬。手を差し出しているのに、何故今さら恐れるというのだ。最初に欲したのは貴様ではないか。

俯くその表情は、震えている仔犬を彷彿させた。主人に棄てられることを恐れている、己だけの可愛い狐。その艶やかな漆黒の長い髪に、おのが指を絡めた。蔵馬が驚く間を与えず、その柔らかな唇に己のそれを重ねた。

「飛影!?」

「・・・、躰しかもう喰らうものはないぞ。それとも、他の奴に喰らわせていいのか」

刹那、凶悪な瞳が息吹を吹き返した。鋭く輝く翡翠の瞳。他を圧倒し、威圧する灼熱の瞳が鋭く己を射ぬく。その名を嫉妬と人は位置ずけるのだろう。

次の瞬間には、唇を塞がれていた。激しく、なにもかもを奪いそうな口づけ。角度が代わるたびに零れ落ちる甘い囁き。

「飛影、飛影、飛影」

口づけの合間に、上半身の衣服を脱がされる。その雪と見まごう肌に、花びらを幾つも咲かせる。自身だけに赦された甘く芳しい特権。

浮き彫りになっている鎖骨に歯をあて、噛みつく。犬歯が彼の肌に食い込み、微かに鉄の匂いが鼻腔を擽る。その芳しい芳香に酔いしれ、さらに深く牙を穿つ。まるで、その行為は血を欲する、かの吸血鬼のように。

「ふッ、・・・ああッ」

何故、吸血鬼が血を好むのか、その飛影からの甘い喘ぎで悟る。

「貴方の血は甘いね」

「もっと欲しい、か」

己の全てが。その、底なしの欲望にこの身を捧げてもかまわない。そう、真剣に思った。

「欲しいよ。全部、全部、俺だけの飛影にしたい」

口づけが再開され、蔵馬の首に己の腕を絡める。互いに飲み込めなかった甘い銀の糸が、顎を伝い喉を通過する。そのささやかな刺激さえも愛しい。

「可愛い、キスだけで乳首勃ってる」

「やぁ、んっ!」

少しざらついた舌でそれを愛撫する。途端に、ビクッ、と反り返る躰。丹念に転がし、本格的に芯持ち始めたそれに、歯をたてられると、躰にえもいわれぬ電流が流れる。恥ずかしいのに、躰は貪欲になるばかり。胸を突きだし、蔵馬の頭部を掻き抱く。胸の間から零れ落ちる淫らな音が、より己を煽る。もどかしい、でも、もっと蔵馬に喰われたい。

するり、と、下半身に蔵馬の手が伸びる。下着の上から、かたちをなぞるかのようにしごかれる。

「アッ、んん・・・、ふ、ん」

「フフフ。なか濡れてる」

下着は蔵馬の指摘するように、先走りの液で既にぐちゃぐちゃになって気持ち悪い。腰をまさぐっていたもう片方が、下半身の衣類に手をかける。殊更ゆっくりと、下に下がる衣類。粘り気の愛液が、それらとともに伝え落ち太股を撫でた。それさえも、すぎた快感だった。膝元に下がるとともに、濡れたペニスが天をあおいでいた。外気に触れ、なにも隠すものがない姿。

ふと、視線を下へと向けると、そこにいたのは先ほど迄の蔵馬ではなかった。口元に卑猥な笑みをたたえ、こちらをあおぎ見るその目には、妖狐の金褐色の際の凄み、他者をひれ伏しようと望むそれが回復していた。そうだ、その瞳に喰われたのだ。躰も心もなにもかも喰われたいと。

「蔵、馬」

無意識のうちに腰を突きだしていた。速く、速く、その魅惑的な唇でもって嬲って欲しいと願うかのように。

「フフフ。貴方って本当は欲張りなんだね。口と手、どっちがいいの」

悪戯っぽく尋ねる。すると、頬を紅色に咲かせながらこたえるのだった。

「・・・、りょ、両方」

「いいよ。たっぷり貴方を味わってあげる」

その宣言はすぐさま実行に移された。蔵馬の熱い口内に導かれ、睾丸をしごかれる。小さな穴から出され続ける愛液は、音をたてながら、蔵馬に吸われる。

「ふ、ああ、・・・ん、は」

亀頭を捲られるように舌先で嬲られ、そのたびに穴から喜びの愛液が溢れた出す。一滴も逃すまい、と、プクリ、と、滲み出てくるたびにそれらは蔵馬の口に吸い込まれてゆく。幹の根元を上下に掻かれるつど、その動きに連動して勝手に腰が動いてしまう。

「う、んん、・・・、く、蔵、馬。も、もう」

ダメ、そう云おうとした矢先、蔵馬にすっぽりと全て飲み込まれた。喉の奥に当たる感触が決定打となり、そのまま蔵馬の口内へと熱い液を放っていた。

「はあ、はあ、はあ」

自慰などより、ずっと気持ちよかった。蔵馬の手で、口で、新しい己が開花した瞬間でもあった。

「後ろ向いて飛影」

云われるがまま後ろに振り返り、ガラス窓に両手をあてがう。獣のような交わりに抵抗する間もなく、腰を攫われる。割り開かれた尻に、ヌルッとした感触が続いた。

「ああ、ひっ・・・、んっ」

硬い硬い真っ赤な蕾。侵入を赦さなかった可愛らしい蕾が、今正に蔵馬によって開こうとしていた。

舌先をすぼめ、丹念に入り口を行き来する。その間に自身の唾液をなかへと注ぎ入れる。クプクプ、と、いやらしい音をたてながら、それらは飛影の蕾の肥料となる。ほんのりと色づき始めたそこに、傷つけないようにと細心の注意をはらい、指を入れゆっくりと注入を繰り返す。

「あ、んん、んっ・・・、ひっ!あああー!」

なんだ、今のは。躰のなかの一点に触れられた瞬間、目の前がスパークした。

「フフフ、見つけた」

ニィー、と、蔵馬の唇が奇怪に歪む。それは、歓喜のあらわれでもあった。

「ひぃあ、・・・、クッ、んん」

さっき出したばかりのそれは、再び意思をもち始め、絶え間なく液体が流れ落ち、それは睾丸を経過し蔵馬の美しい手へと到達する。

「あんッ、ふ、ぐぅ・・・、いあッ」

また出てしまう。そこばかり攻めたてられ、飛影の足腰がガクガク、と、揺れる。

「く、蔵馬、も、もう」

チュポ、と、なかを掻き回していた指を引き抜き、羽交い締めのまま飛影の背中にキスの雨を降らす。まるで、労りのその優しさに、飛影の決意が固まる。

カチャカチャと後ろでバックルの外す音がし、次いで、蕾に硬く熱いものがあたる。

「ま、待て!」

振り返り、慌てて制止する。

「飛影?・・・、やっぱり、いや」

「ち、違う。・・・、か、顔。貴様の顔見ながら、したい」

瞬間、蔵馬の顔が花が咲き乱れるかのように綻ぶ。可愛らしいその飛影の言葉によって。

「了解」

くるりと向きを代え、飛影の顔いっぱいに口づけをする。愛している、と、それは全身が伝えていた。欲しい、とも。

飛影の片足を腕に担ぎ上げ、蕾へと昂ったそれを導く。ぴくぴく、と、収縮を繰り返していた蕾は、待ちわびたかのようにその蔵馬の分身をその身に迎え入れた。

途端に広がる苦痛。解れたとはいえ、こうした行為をしたことがない飛影にとって、それは邪眼を移植した際以上の痛みを伴った。苦しい。痛い。滲む冷や汗。内臓ごともっていかれる感触。いや、抉られる感触に全身の毛穴が開く。

「く、蔵馬ぁ」

必死に痛みから逃れるかのように、蔵馬の首に腕を廻しすがる。首を左右に振るつど、汗が舞う。不意に蔵馬の手のひらに包まれた己の半身。

「ひぃ、あッ!」

「こっちに集中してごらん」

ペニスを再度しごかれ、意識が乱れる。目の前に白い靄がかかる。荒い呼吸が、蔵馬の胸に吸い込まれてゆく。その間隙をぬい、蔵馬は飛影の最奥へと穿つ。暫し、馴染む迄待った。その間も、飛影の内部は蠢きを繰り返し、気をぬけばこちらが先にもっていかれるほど締めつけられる。

「フフフ。貴方のなか、速く欲しいって」

「あ、ふ・・・、く、蔵馬もう」

動いて。

その飛影の心のなかを読んだかのように、蔵馬は腰を動かし始めた。

「はあッ、・・・、んんッ、ふ」

苦しいのに、気持ちいい。痛いのに、それが快楽へと意味を代える。蔵馬の亀頭が先ほどの一点を突く。チカチカと、その瞬間意識が遠のく。

「ヒィ、あああー!」

痛い、でも、もっとそこを突いて。苦しい、でも、もっともっと深く突き刺して。なかを蔵馬だけで満たして欲しい。

「飛影愛してます、飛影」

じんわりと痛みが快感へととって代わる。蔵馬のものが己の内部で膨張し蠢くさまがはっきりと伝わる。熱と熱のぶつかり合いに、確かに飛影は喜びを感じていた。

これで狐は己だけのものだ。誰にも触らせない。もう、誰にも。

「はあッん・・・、蔵、馬ぁ」

肌と肌がぶつかり、その間隙にグチュ、と、いやらしい水音が2人の間を包む。蔵馬に与えられた愛液と、自らが出してしまっている愛液とが混ざり合い、飛影の蕾へと流れを造っていた。

「なあに」

「もっと、深く、・・・、もっと奥に。お前を感じたい」

「・・・、飛影」

まいった、な。なんと可愛いことを云うのか。優しく抱きたいのに。貴方が悪い。

「ひぃ、あああー!」

床にかろうじて立っていたもう片足を持ち上げ、完全に飛影を宙に浮かせる。重力に忠実に、飛影の双丘は蔵馬の熱い楔に落ちてゆく。繋がっているのは、ただ1つのみ。だが、この上ないほど強く強く2人を繋ぎ合わせていた。

ゆらゆらと、飛影の足は意思を失ったかのように動き始めていた。蔵馬の首に腕を廻し、蕾からなかへの刺激に耐えた。すべらかな双丘に蔵馬は手をあてがい、腰をグラインドし続ける。硬く閉まっていた蕾のなかは、いまや綻び腰を打ち付けるつど、卑猥に蠢き蔵馬を熱くさせる。蔵馬の亀頭がそこを突くつど、飛影は甘い喘ぎを紡ぎ続けた。そして、蔵馬の腹で、無意識に擦れていたそれは、もう限界をこえた。

「あああー!」

その余韻で、飛影のなかが急速に波打ち、それ迄以上に蔵馬のそれを締め付けた。小さな息を吐き出すと同時に、蔵馬の熱い飛沫が飛影のなかいっぱいに広がる。

「飛影。愛してるよ」

やっと自身に堕ちた彼を掻き抱き、蔵馬は安堵の笑みを浮かべたのだった。もう、誰にも渡さない。貴方への愛も、貴方からの愛も。誰にも。

深海へ沈みかけた恋が、溺れるような恋へと、その時代わったのだった。愛しさという名の溺愛の船を伴に裡に浮かべながら。










Fin.
2011/12/28
Title By HOMESWEETHOME

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