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The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.




もういいよ黙って act.1


※R要素が含まれてます。もう1度、ご確認。お姉さんは18歳以上ですか?OKな方はスクロール。















可愛いよ。好きだよ。

胸や背中がむずむずするそれらの言葉。蔵馬は、さも当然、と、いった風体で、後ろから抱きつき、しかも、何時も気配を消して覆い被さるのである。それが尚、腹が立つし不愉快極まりない、極めつけは耳たぶを甘噛みしながら甘くそれらの言葉を囁くのであった。認めるのは、非常に、この上なく、全くもって不本意ではある、が、蔵馬のあのテノールのように低く深く透き通るような声は、奴の胡散臭い性格を除いたなかではかなり気に入っている部類だ。きっと、蔵馬は己の心情に気づいてやっているのだ、また、それが苛立つのだが。

やめろ、離せ、それらの拒否の言葉は、蔵馬には有効な働きを促したためしがない。「そのギャップがね」などと気味の悪い薄ら笑いを浮かべほざき、こちらの了承も了解も得ず、ことに及ぼうとすることさえたびたびで、しかも、ことに流されてしまう己が1番腹立だしい。

蔵馬は、情事の際は、己の声を聴きたがる。それと知ったのは、ずいぶんと前だった。

蔵馬以外とも、女や男、どちらも相手にしたが、魔界で性処理に愛撫など必要ではない。突っこみ、吐き出せばそれで充分。一々、犯る相手を喜ばせて、なんの特があるというのだ。魔界でも、性欲を好み、それらに付加価値を加え商売をする輩がいるのは知っていた。しかし、そういう輩と寝たことはない。もっと正確にいえば、己は性欲に対し淡白であった。そう、いたってシンプルな情事しか経験してこなかった。が、蔵馬に抱かれ、それががらりと代わった。情けないことではある。奴の手管に見事に落ちたといっても過言ではない。突っこまれ、ただ、液体を内に受け止める、または、放つ。それだけだった情事に、奴は面白そうに、かつ、楽しげに快楽を徹底的に覚えさせたのである。

唯々諾々とそれらに承服も納得などしなかった、最初は徹底して抵抗した、無論だ、何故、奴のような性格異常者と、1番無防備になる閨で快楽を共有し合わせなければならない、たまれば吐き出しそれでよいではないか。しかし、奴からの口づけを受けると、たちまち躰から力が抜けた、これ迄、愛撫をしたこともなければされたこともない、それは結果的に、口づけも蔵馬が始めてを意味していたのだった。その有り様を見た奴は、「まさか、知らないの」その一言には、2割の呆れと7割の嘲り、そして、飛影には看守出来なかった1割の狂喜の微妙で絶妙なブレンドが含まれていた。そのことに渇となってしまったのは無論のこと飛影の方であった。後日、なんと馬鹿であったことだろう、と、己を詰ったが、後の祭り。蔵馬のその挑発にムキになり、口づけはその後、己のなかに眠っていた性欲に火をつける起爆剤に代わっていた。





「ごめんね。残業長引いてさ」

パトロールのない日、躯を始めとして手合わせの相手がいない日、つまり、己が暇な日は人間界の蔵馬のマンションへと足をむける。

男の手のわりには綺麗な指をしている蔵馬の手。その指を器用に使いネクタイをシュルシュルとほどくさまを見て、有らぬ想像が頭をかすめ知らず知らず躰が内側から火照るのを自覚した。あの指は、本当に綺麗で、その上淫らに動くことを知っている、これ迄の経験でいやというほどこの身が。

嫌いな訳ではない、奴が。しかし、こうして人間界に来てしまうのは何故なのか、その理由が未だ己自身にも不可解であった。ただ、抱かれに来ている、ここ数ヶ月、いや、正解に表現するならば、蔵馬と出会ったあの日から、ずっと。蔵馬の好きという意味が判らない、奴は、そう囁くだけで、それきり言葉を必要とはしない。こちらに返答を求めてる風にはとてもみえない、が、情事に任せてなにかしら告げようとすると、すかさず唇を塞ぎこちらの言葉を封じるのだった。あとは、ただただ、快楽を求めあうかのようにセックスのみが2人の時を刻む。

ふと、蔵馬と視線が交わる。すると、奴は、ニヤリ、と、毒を含んだ笑みを浮かべたのである。それはまるで、こちらの望むものを見透かしたかのように。

「俺の手を見て欲情した?」

「してない」

「この場合の即答はYESと同じ」

嫌みな奴だ、そう思うのとほぼ時を同じく、ネクタイが意思を持ったかのような動きをみせた、それは、奴が何時も操る鞭のようにしなり、気づくと、左手に巻きつき奴の胸に引寄せられ抱きしめられていた。熱い奴の体温が直に感じる距離は、何故か、何時も居心地を悪くする。

「あんな目で見られたら、誰も彼も誤解を招くよ」

どんな目だ。キッと恨めしげに奴を見上げると、奴の秀麗な顔が近づき唇が落ちてきた。避けるまもなく塞がれ、逃げようとする舌を器用に絡めとられ、それを吸われ歯茎の裏も丹念になぞられる。すると、えもいわれぬなにかしらが脊髄に電流の如く流れる。角度を代えた瞬間に、己のものとは思えない甘い喘ぎが零れ落ちた。静かな部屋のなかでは、そんな些細な音さえも反響し、うちに確かな火がともる。羞恥と怒りがない交ぜになり、うっすらと瞳を開け奴を見ると、意地の悪い性格が見え隠れする蔵馬の黒に近い深い翡翠とかち合う、奴はじっとり、と、獲物が陥落するのを待ち望む、そんな狩人の目をしていた。

長い口づけから解放される頃には、己の下半身は如実に変化をし始めていた。羞恥が勝り、悟られまいと奴と己の間に、自由のきく右手を挿し込み、距離をとろうと試みる。が、それより速く、蔵馬は己の下半身を荒々しく握ったのである。

「ぁんっ!」

「半勃ちじゃないもう」

「う、五月蝿い。離せ」

「貴方は本当に学習能力低いね。さっきも云ったでしょう、そういう目は相手に誤解を生むし、加虐心をも煽るんだよ」

勝手なことを、そう抵抗するより速く、ソファーに組み敷かれている己に気づき唖然とする。綺麗な顔をしている奴ほど、底意地が悪く、性根が腐りきっている、また、それを本人が自覚しているから尚もしまつに困る。眼前の奴は、それのいい見本だった。出来れば屍の標本にしてやりたいところではある。丸こげにしてもかまわないところだ。が、こんな奴を殺したら、間違いなく後味が悪い。その訳は何故だろうか。殺したいのに、殺せない。何時も、そこで立ち往生をしてしまう己は女々しいのだろうか、それさえも判らない。

「遅くなったから拗ねてるんだ」

「誰が、自惚れもたいがいにしろ」

「でも、いいの、ここ。このままで辛いの貴方だよ飛影」

相変わらず意地の悪い笑みを浮かべたまま、奴は服の上からそろそろと撫でる。直に触られていないというのに、服のなかでは窮屈に芯が硬くなっていくのが判る。下半身に徐々に熱がこみ上げ解放を望んでいる。簡単に奴のいいなりになる己の躰が悔しくて、両の足を閉じようと試みた。が、奴は絶妙なタイミングで、足の間に奴の身を滑りこませ、反対に両足を広げられ、左足は奴の肩に担がれた格好になってしまったのだった。

「素直じゃないんだから」

少しだけ、奴の顔がなにかしらに怯えたかのように歪む。それがなんであるか判らない、判らないのがまた苛々する。

そうこうしているうちに、奴はネクタイでこちらの両手を縛りあげ、黒い己の服はいつの間にか奴の手によって1枚残らず脱ぎ棄てられていた。嬲るように躰を見つめられ、羞恥で顔どころか躰の隅々迄もが、まるで熱にうなされたかのように紅潮する。プイッ、と、奴から反らし、ソファーの背もたれに視線を意図して逃避した。瞬間、クックックッ、と、奴のどころか勝ち誇ったような笑い声が耳に入る。

「駄目。全然駄目。そんなの逃げたうちにはいらないよ飛影」

「五月蝿い、黙れ」

「本当に貴方は、可愛いんたから」

またそれか。可愛い、女ではない、そんな甘い言葉で、縛られて身動き出来ない己はなんと不甲斐ないのだろうか。あまつさえ、躰は正直に次のものを望むのだった。

蔵馬は下半身の半起ち状態のそれにやんわりと包み、極上の笑みを浮かべた。どくどく、と、脈をうち続けるそれを軽くしごくと先端の小さな穴から、ぷくり、と、液体が可愛らしく姿を表す。人差し指で、その液体を絡めとり、蔵馬は飛影に見せつけるように、紅い舌を出し、ぺろり、と、飛影の眼前でその先走りの液体を舐めた。

「ッ!貴、様」

挑発的なその行為に、睨みつけたが、奴はそれを飄々とした態度でかわした。そればかりか。

「飛影の味だね。もっと濃いの飲ませてね」

宣言と同時に蔵馬の口内にそれは導かれる、下半身の一点に熱が集中するのが判る。逃れようと足を動かそうとすると、蔵馬はさわさわと、内腿を撫で上げ、それさえも微熱に代えこちらの動きを封じてしまう。唇を硬く閉じていても、もれてしまう甘い吐息。口淫は巧みで、確実にこちらを追いこむ、おそらくはわざと蔵馬が出しているであろう、ねっとりとした水音さえも、いまや羞恥の1つでもあり快楽の1つでもだった。蔵馬の口淫に合わせ、腰が無様に上下してしまうのを止められない。嚢丸を同時にしごかれ、目の前に火花が散る。

「んッ・・・、はぅッ」

このままでは蔵馬の口内に果ててしまう、それが判っているからこそ、離して欲しいと訴えるかのように、思わず両足で蔵馬の頬や頭を挟んだ。両手が塞がれていたので、たんにそうしたのであるのだが。が、奴は、その行為を違った意味で捉えたようだった。瞳が重なるのを見謀ると、ツゥー、と、紅い舌を殊更ゆったりと竿に這わせ、楽しげに、そして、見せつけるが如く嬲り、その口元に導く。

「やっ、ち、ちが。・・・、ぅんッ」

「もうそろそろかな」

その言葉が合図だったように、己でも制御出来ない欲は、蔵馬によってあっさりと堤防を越えた。かん高い喘ぎ声が己から放たれ、同時に両足の爪先は、ピンッ、と、1度伸ばされた後に、くたりとソファーにその身を置いた。その姿は、片方の足はソファーの背もたれに、もう片方は冷たい床に、そして、ペニスは意思を挫かれたかのように、性を放つと同時に萎縮している、というなんとも無様な姿だった。

荒い息づかいのなか、カチャカチャ、と、蔵馬のバックルが外れる音が微かに聴こえてくる。重たい瞼を開け、視線を向けると何時もの余裕綽々で飄々とした奴の顔つきはそこにはなかった。ギラギラとした、狐の皮を被った男がいた。

「手を縛って正解だったみたい。貴方のあんな色っぽい声聴けたもの」

何時もであれば、手で口元を抑えるなり、シーツや枕を噛んで声を殺すのだが、今日はそれは叶わなかった。「声、我慢しなくていいんですよ」それはすなわち、奴が情事の声を聴きたがっているのだということを己に教えた。その反面、奴にそう云われるつど、意地や矜持が表に現れ、これ迄絶対に矯声だけは抑えていたのだった。蔵馬にだけは聴かせてなるものか、と。それが、このざまとは。

愛撫に慣れただけでなく、矯声迄も女と同じくあげてしまった己が悔しくて、唇を噛みしめていると、その唇に奴はかすめるだけの口づけをした。ギラギラとした奴の瞳の奥に、何故か、哀しみの色があった。この瞳の奥底が解せない。今、まさに、犯そうとしているくせして、奴は、まるで迷い子のようにこちらを見るのだった。それも、毎回。

「蔵、馬?」

「黙って」

ほら、また、お前は口づけで遮ってしまう。好きと云いながら、何故怯えを含んで己を抱くのだ。

それ以後を望まぬ風を装いながら、蔵馬は己の言葉を待っている。それは、確信に限りなく近い心情であった。それならば、待たせておくのも一興かも知れない。答えは、未だ螺旋の迷宮のなかにある。解明する鍵は、己の裡にあるのだろう。探し当てろ、盗賊だったなら、な。

蔵馬の背に、己の足を絡ませて淫らに腰を振る。蔵馬が答えを見つけ出す迄、欲望のみに忠実になるのも悪くはない。己の裡に性欲を育てた責任者は貴様なのだから、鍵を見つけ出すのも貴様の責任だ、そうだろう、蔵馬。だから、己は沈黙を選ぼう。










Fin.
2011/9/29
Title By 確かに恋だった

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