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The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.




月がとても青ひですね act.1


※R要素があります。お姉さんは18歳以上ですか?OKな方はスクロール。















眼前で幽助から大笑いされ、飛影としてはいたたまれない。それに、些か恥ずかしくもある。蔵馬との喧嘩(人はそれを痴話喧嘩と云う。恥ずかしがりやな飛影は認めたがらないが。)の洗い浚い話しってしまった。幽助は、2人の関係をよく知っている。稀にそのことについてからかわれはするものの、こうして、匿ってくれまでする。その安心感から、気づくと吐露した後であった。

「笑うな。俺だって、大人気なかったとは思ってる」

語尾が震えていたことに、はたして幽助は気づき得たであろうか。それは、未だもって飛影自身が自分の気持ちを整理出来ていない表れでもあった。

些細なことから担を発した喧嘩は、それすなわち飛影の嫉妬を物語っていた。蔵馬は飛影にとことん優しい。と、飛影だけは信じている。実際はどうかといえば、飛影という存在には尽くし甘やかすが、その周辺にはブリザードの対応を信条とする冷徹であり狭量な男として周囲の者たちには映っていた。手合わせの度に殺気を込めて睨まれていると、陣たちを始め幾人か嘆いているほど。微笑を浮かべつつ、その眼は一切笑っていない。実際、飛影との手合わせは蔵馬の許可制になっているくらい。飛影本人はそれを知らないが・・・。傍から見ると正にめのうえのたんこぶ、八つ当たりと映っていた。しかし、それは蔵馬からすると、知人や仲間たちだからこその譲歩であった。猜疑心、独占欲が強く、少しでも飛影と関わろうものならば、地獄を見せるのも厭わない。そればかりか、自ら進んで手を染める。地獄行の片道切符を喜々と相手に押しつける。それも、荒行で。その様はまるで氷の覇王。この為かどうかは知らないが、百足内の不埒者たちが一掃され躯は上機嫌で、蔵馬が飛影のもとを訪れることを許可したのは記憶に新しい。あれほど迄に頑なにパトロールを最優先しろ、と嘆いていた躯の変貌ぶり。その結果、蔵馬による百足内部の一新は、躯からの依頼でもあったのではないかとの噂もあるにはある。当事者の2人はなにも語ろうとはしない。しかし、無から火はおきない。それになにより、この討伐?後によって得た蔵馬の権限はNo.2の飛影にも匹敵するほどだった。百足内部を闊歩しても怪しまれない立場を手に入れたのだった。蔵馬としてはそれで充分だったが、躯自身から手加減無用とまえまえから云われていたのか、その苛烈な迄の仕置きには思わず目を背けたくなるほどだった。政治目的で一掃された者たちのなかには、単なる飛影への憧憬を抱く者ばかりではなかっただけは事実だった。なかには、躯に敵愾心を持ち、且つ今の魔界大統領政府そのものを叩き壊そうと考えていたような危険人物もこの中に含まれていたからには、あながちその噂も間違ってはいないだろう。決済等々、蔵馬は煙鬼が運営し始めた大統領政府の高官として遺憾なく発しており、各自治国家がその任を果たしているパトロール等の割り振りも、実はこの蔵馬がその権限を行使して飛影の負担を減らしているほど。「愛のなせる技です」等と云って嘘ぶく。いつだったか、幽助がそれらのことに含みをのせて云ったが、返答はそれだった。呆れた口が塞がらないとはこのことだ、と、当時幽助は思ったものだった。

しかし、その蔵馬はともかく、この飛影が嫉妬とはねえー。幽助は感慨深く思う。恋愛に関して、無知というより他人の気持ちやましてや自分自身の気持ちに思いを馳せる時が来ようとは。出会った頃を幽助は思い出し、少し嬉しくなった。笑ってしまったことは悪いが、飛影のその変化がこそばゆい。が、その話しが問題だ。嫉妬、ね。話しを総合するとそれになる。面白い事態ではある。逃げ出した飛影の後ろ姿を見、慌てふためく蔵馬を想像すると、愉快ではある。しかしながら、その裏面を察した幽助としては、そう笑ってもいられない。速く飛影の誤解を解き、蔵馬のもとに返さなければ、間違いなく怒りの矛先がこちらへと向かう。部屋の中吸血植物園になりかねない。その植物たちに凍てつく命令を下す様まで幽助ははっきりと見えた。仲間であっても一片の慈悲なく『さあ、その血を地獄の門へと注げ。残った肉体は永遠に切り刻んでやろう』・・・──なんの躊躇もなく蔵馬は云うであろう。その有様を想像し、幽助はゾッとした。幻に違いないのにやけに真実を捉えていると悟ったからである。

「まさか本気であの蔵馬が浮気したと思ってんのか」

兎に角、旨く飛影を誘導して、早々に蔵馬のところに返そうと、幽助は話しをふった。しかし、顔を真っ赤にして対抗してくると思われたが、飛影の態度は幽助の想像していたものとまるで違っていた。蒼白な表情を隠すかのように俯き、握られた拳は震えていた。疑心暗鬼にかられているなによりの証拠だった。

「否定しなかった」

「はあー!?浮気を?あの蔵馬がか?」

声が裏がえるほど大きく問い返していた。なにやってんだあの馬鹿。飛影の性格を思えば、そこは否定するところだろう。こう見えて、飛影は人の言葉に敏感であり、人一倍傷つきやすい性質だ。本質的には繊細といってもいいほどに。高慢で高飛車、他人を寄せつけさせなかったのは、その脆い部分を見られるのがなにより嫌だったからだ。だからこそ、そうして心に鎧をつけて生きてきたのである。本来もっていた飛影の矜恃もそれを赦さなかった。にもかかわらず、その鎧を壊し飛影の懐におさまったにも関わらず、飛影にこんな顔をさせるとは。思わず、この場にいないもう1人の当時者をぶん殴ってやりたくなった。こういう思考の持ち主だからこそ、飛影は無意識のうちに幽助の場所へと逃げてきたのだろう。なんやかやと云って、幽助も飛影には甘い。幽助としては、頼られれば嫌とは云えなくなる。それも、普段は斜めに構えてる飛影からとなると。そして、その2人の友情が蔵馬としては面白い筈もなく、つい、幽助を虐めたくなるのだった。程々とは遠い虐め方ではあるが、そうすることにより、蔵馬は要するに牽制しているのである。友情が恋愛感情に科学反応するとはいいきれない。現に、蔵馬自身がそうであった。仲間へ向ける感情だと思っていたものが、愛情だったのだから。

喧嘩がもつれた要因は蔵馬だろう。おそらく、蔵馬にしては珍しく、無表情に貴方には関係ないでしょう、とかなんとか云って、飛影を怒らせ、その飛影も売り言葉に買い言葉の感覚で蔵馬を詰ったのだろう。そして、激高したままここに逃げ込んできたというわけか。

「・・・、あんな匂い」

呟くというより、苦しみが滲んだ独り言。それだけに、飛影が如何に蔵馬を思っているかが窺い知れた。今、飛影の頭の中は様々な妄幻に囚われているのであろう。そして、最たる恐怖は、このまま蔵馬に別れ話しを切り出されたら、というものだろう。女ものの香水。その残り香が意味することは、誰でも容易に想像し得る。

今にも涙を流しそうな赤い瞳を見つめ、その顔に1人の少女を幽助は重ね合わせた。ホント、似てない双子。だが、そっくりな双子。

幽助は心の中でため息を零した。蔵馬が云ったセリフを思い出していた為でもあった。こりゃ、速くなんとかしねえーと、飛影の方から身を退くなんて馬鹿なことを云い出しかねない。そうなったら、泥沼より性質が悪い。

「酷なこと云うようだけどよ、男の心と下半身は別の生き物だぞ。おめーだってなんとなくそのへん判んだろう」

幽助の意図は飛影を奮い立たせるものだったが、却って追い込んでしまったようだった。飛影は苦しそうに首を縦にふった。色事に疎い己とて、それくらいはなんとなく肌で判る。幽助の云わんとしていることもなんとなく判るつもりだ。浮気の1つや2つ水に流せ、と。事実、蔵馬は飛影と出会う迄様々な浮名を流してきた。魔界から、果ては人間界に暮らす妖怪に迄も冷酷非情の極悪盗賊として名が高かったが、それと対をなすように色師としても名が高かった。過去のことは我慢出来る、本当は胸が締めつけられるほど嫌だが、過去の様々なことが今の蔵馬に繋がっているのだと思えば飛影としてはなにも云えはしない。蔵馬の方が己より遥かに長い時間を生きてきたのだから。それに、飛影と恋人ととして付き合うようになってからは、それらの女たちと全て縁を切った。蔵馬が人間界に暮らしていると知って、そうした女が復縁を求めて何人も訪ねてきた。過去、そして今現在の勇名に魅力を感じ押しかけてくる女もいた。しかし、それを全て断った。飛影の目の前で。「1番の宝石を見つけたから」臆面もなく女たちにそう云い、優しく口づけ迄して。それなのに。やはり、蔵馬ほどの男を繋ぎ留めておくほど、己には魅力が無いのだ。不毛と感じたのかもしれない。男より、まろやかな女の方が誰だって抱くのは善い。それとも、人間界で暮らし続けるうえで、己が邪魔になったのだろうか。以前、不安から魔界に帰らないのか、と、蔵馬に尋ねたことがあった。「ごめんね、飛影。これだけは“けじめ”だから」そう云う蔵馬になにも云い返せる筈もなく。その時の蔵馬が、あまりにも寂しく儚げに見えた。普段の鋭利な表情はそこには皆無であった。こちらを蕩けるように見る瞳もなく、夜、獣のように見える瞳でもなく。

人間臭い蔵馬が大嫌いだった。人間のふりをするその理由もまた大嫌いだった。自分の子を殺された女と殺したことさえをも隠し続けてゆく男との家族ごっこ。吐き気さえした。が、その時唐突に理解したのを覚えている。そうか、己に無いものを持ってるから蔵馬を羨んだのか。己の生命と引き換えに失うしかなかった母。顔さえも思い出にない。なのに、一方では、血の繋がりなどない親子が仲睦まじく暮らしていた。なんと理不尽なのだろうか。しかし、その反面、蔵馬に悪意を持たなかった己が不思議だった。蔵馬だからこそ惹かれた。出会った頃は、やはり噂通り剥き出しの刃のような奴だと思った。己と似ているようでまるで違う生き物。張りつく笑顔は仮面であり、鋭利で怜悧な刃物を彷彿とさせた。心の奥底に暗い鬼を忍ばせている魔物。しかし、違った。1度繋がった糸を断ち切ることをせず、その細く脆い糸を愛おしいむ。その為ならば、死さえ厭わない覚悟の大きさ、強さ。形は違えど、母親への憧憬と思慕。罪を背負ったまま、母親の最後を看取るのだとその時理解した。その日迄そのことには2度とふれないでおこうと、勝手に誓いをたてたりした。

いつの頃からか、蔵馬を見る眼が代わっていった。母親に向けるその眼差し。そんな風にこちらを見て欲しいと望むようになり、蔵馬がそれに応えてくれた。それは、奇跡に値した。嬉しかった。始めての恋。始めて、必要とされた。溺れる自覚はその時からあった。だからこそ、いつか、別れの日がくることもどこかで覚悟していた。

しかし、別れればそれら全てが過去に属することになる。

結局、飛影は憂鬱なまま蔵馬のマンションへと戻った。残り香をその躰に染み込んでいることも知らずに。

「あれ?戻ったの」

飄々とした常の対応にムッとなった。所詮、己は蔵馬にとって、取るに足らない存在なのだと云われたようで哀しくもなった。戻らなければよかった。幽助になんやかんやと丸め込まれ、渋々帰ってきた飛影だったが早くもそれを呪った。だのに、蔵馬は何事もなかったかのように振舞う。飛影は苦虫を噛み殺しながら眉間にシワを寄せた。その為か、余計に胸が焼けた思いだった。

蔵馬の横を素通りした、その刹那。悪寒が駆け巡る。それと共に、冷たい汗が流れる。背中からの苛烈な殺意に、恐る恐る振り返る。かつて、躯を意図して怒らせた際に受けた殺気よりもはるかに強大な殺意。まともな人間はその殺意だけで霊界へと旅立つであろうほどの、いや、妖怪とて同様の道程に到るであろう。そこに立っていた蔵馬に飛影は息を呑む。無表情に見据える金褐色の瞳、そして、銀髪。しかし、妖狐のそれではなく、人間のままの姿をした蔵馬がいた。警戒音が裡にけたたましく鳴り響く。ごく希に、蔵馬がこのような変化を遂げることは知っていた。しかし、蔵馬本人から聴いただけであり、実際にこの目で見るのは飛影でさえ始めてであった。それほど迄に怒りを露にしている。憤怒が極限にならないとこうはならないんですよ、と、又、そうなった際自分自身でもコントロール出来ないのだと、そう云っていたことを思い出す。

「・・・く、蔵馬、ぐっ!」

次の瞬間、己が宙に浮いていることを悟った。蔵馬に首を締めあげられ、壁へと躰ごと抑えられる。いくら飛影が痩身で華奢でも、片手でそれをする蔵馬の腕力にこんな状況でありながら感心した。しかし、このままでは締め殺される。もがきながら名を呼ぶが、却って首を圧迫した。酸素が頭迄回らなくなり始め、意識が混濁してゆく。目の前の視界が狭まりつつあった。それでも尚、飛影は蔵馬をその矜恃の為睨み返していた。が、しかし、その先にある金褐色の瞳からはなんの言葉も無かった。ただただ荒れ狂う狂気がそこにはあった。漆黒の闇から解き放たれた獣。まさにそれだった。己のなにかが蔵馬を変貌させたことだけは判った。半ば死を覚悟したその時だった。ダン、と床に勢いよく叩き落とされた。それと同時に、空気が勢いよく躰を駆け回るのを感じた。

「かはっ、はあ、はあ、はあ。・・・、な、なんの、つもりだ貴様」

反撃の声は自分自身で驚くほど弱々しいものだった。躰の震えは留まることを拒否しているかのように、未だ止まない。見上げた蔵馬をその視界に捉えると同時に、今度は馬乗りになって抑え込まれた。その際、腹に強烈な膝が振り下ろされ、胃液が逆流してきた。その隙をつかれ、手首を頭上でひと括りにされた。

「やっ、蔵馬、止めろ」

嫌だ。止めてくれ。こんなのは。こんなのは、・・・──まるで陵辱だ。

「よかった」

「?」

なにを問われたのか判らなかった。探るように蔵馬を見上げる、が、代わらずそこにあったのは氷よりはるかに凍てついた瞳だった。

「幽助と楽しんできたんでしょう」

そのセリフにカッと血がのぼった。幽助と寝てきたと思われたことへの怒りと悲しみが、飛影の心に突き刺さる。

「幽助はそんなことしない!」

しかし、それは蔵馬に更なる逆上をうむ結果を招いたに過ぎなかった。飛影が幽助を庇えば庇うほどに、蔵馬のなかで凄まじい勢いで腐敗した黒い塊が増幅されていった。

「いっ!・・・、や、離せ蔵馬!」

いつの間にか手首は蔵馬の持つ薔薇の鞭によって縛らていた。逃れようと動くだけで、棘が食い込み手首を赤く染めていた。床はフローリング、植物の元となるものがあれば蔵馬はいくらでも武器を造り出せることを失念していた。

伸びてきた蔵馬の手によって衣服が全て脱がされ、床の上に剥き出しにされる。フローリングのその冷たい感触はそのまま蔵馬の心を表しているかのようで、堪らなく飛影を惨めにさせていった。ブーツだけを履いたそのあまりにも屈辱的な姿に、言葉を失う。衣服を脱がされていたその間、飛影は必死に抵抗を試みたが全て徒労に終えた。首筋に痛みを覚える。蔵馬が犬歯をたて噛みつくように肌を吸われる。愛撫などとはまるでちがう接触に戸惑うことも赦されず、飛影は歯を食いしばった。唇が切れ、口の中には鉄の味がした。これほど迄に、血は醜く不味いものだっただろうか、昔は、血を見れば興奮すらしていたのに。噛まれる都度、そこに這わされる蔵馬の熱い唇さえにも嫌悪感が募っていった。

「・・・、くっ」

「後、どこに触れさせたの飛影。幽助にさ」

これから躰を検分でもするかのような口ぶりに、飛影は益々もって蒼白になった。子供が嫌々をする時のように、飛影はただただひたすらに首をふる。そんな飛影の様子を蔵馬はどう思ったのか、苦々しそうに舌打ちをした。

蔵馬は充分解すことはせず、荒れ狂う凶器でもって飛影の内部を貫いた。硬い蕾から純血が滴り落ち、飛影の内腿を伝う。

「・・・、いっ」

せり上がる苦痛に躰が硬直し、内部への侵入を拒む。しかし、蔵馬は無理矢理全てを押し込んだ。腸壁にまで傷が出来たことは明らかだった。血の滑りが蔵馬を増長させたことは、己を見下ろす瞳でも判った。苦痛は魅惑の快楽に繋がっていると、過去の経験からも飛影は知っていた。その為、蔵馬が穿つのに合わせ、無意識に力が抜け中部へと誘う浅ましい蕾。だが、これは違う。これは暴力以外のなにものでもない。

「フフフ、淫乱」










2014/11/24

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