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The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.




愛を請う act.2


※R要素があります。もう1度ご確認。お姉さんは18歳以上ですか?OKな方はスクロール。















その後、如何にして百足の自室に戻ってきたか記憶にない。気づくとベッドの上で膝を抱え震えていた。その様はまるで棄てられた幼子のようであり、飛影を更に打ちのめすには充分であった。氷河の国から棄てられた時も、川辺で1人蹲っていた。その際の記憶が蘇り、飛影は苦虫をかみつぶす。忘れていた古傷が今の飛影をまた苦しめた。あの時は、生への執着が強かった。憎しみが強かった。だからこそ、それらを糧に前へと足を踏み出せた。が、しかし、今はどうであろうか。どのようにして前に進めばいいか判らない。蔵馬の提示した条件をのんだとして、はたしてそのあとは?まるで魂が抜けた抜け殻のような己。何故、あんなことを約束してしまったのか。後悔とはかくも苦い物なのか。いくら蔵馬を好いていても拒むことは可能だったのに。蔵馬に抱かれる。その甘美な誘惑に贖えなかった。その為だけに好いてもいない男に抱かれるなど。まして、蔵馬の目の前で。そして、その後は又しても棄てられるのだろう。始めて愛おしいと思った者から。毎日が苦痛であった。食事もろくにとらず、部屋のなかでじっと時が過ぎるのを待つ日々。いつ躯からの命で蔵馬の所へと向かわされるか気がきではなかった。いっそのこと蔵馬との約束を反故にしようかとも考えたが、そうなった時、蔵馬はもう2度と己を見ようとしないだろう。仲間としても。穢らわしい者を見る目で、あの冷めた目でただただ一瞥し振り返ってはくれないだろう。容易く想像出来る暗黒な未来。不安と恐怖心から飛影は見えるはずもない未来を見ていた。その未来が正しく足音を立てて近づいてきていると信じてしまっていたのだった。

暫くたった後、恐れていた様に躯に呼び出された。痩せた己を一瞥したものの、深くは追求されなかったことに安堵する。例えこの時、問い質されたとしても、飛影には答えなど用意していなかったのだから。傍らの時雨から必要なリストを受けとる。その際、袖口から伸びた己の手首の細さに驚き、時雨は顔を顰める。その時雨の表情を見て自嘲の笑みが裡に宿る。己でも判っていた。もともと細身ではあったが、今は痩身をこえ病的なほどだ。顔色も同様に死人の様になっているのだろう。馬鹿なことだと他人事なら嘲笑ったに違いない。

それに・・・。まだ決断しかねている。このリストを持って行くということは、すなわちそういう意味を持つことになる。だが、誰にこんなことを頼めるというのか。恥を晒せというのか。それに、こんな躰を抱こうという物好きがいるとは到底思えない。

ふらふらとした足取りで百足の廊下を歩く。すれ違う者を1人1人眺める。男を物色している男娼のようで己自身に吐き気がする。しかし、誰かを連れて行かなければ蔵馬は会ってさえくれない。飛影は軋む胸を抑える様にその場に座り込んでしまった。泣きたい気持ちがこみ上げてくる。泣いてしまえば少しは楽になれるのだろか。唐突に胃液が逆流してきた。その様は飛影の複雑な気持ちを躰が発しているかのようであった。

蹲っている後ろから声がした。知った声に振り返ると、やはりそこには先ほど別れた時雨が心配顔を浮かべ立っていた。

「・・・雨」

泣いているかのような声に時雨は眉間のシワを更に深めた。このところ闘技場どころかパトロールさえ無断で休み、自分自身の部屋に閉じこもっていたことを、時雨は知っていた。それゆえに、先ほど会った時、ある程度予測はしていた。おそらく、原因はあの“狐”にある。前回、蔵馬のところから夢幻華の花粉を届けた後から様子が明らかに可笑しくなった。それは誰の目にも明らかであり、躯様も何かしら云いたげであった。しかし、飛影はなにも語ろうとはしないだろう。無理に問いただしても却って逆効果に繋がる。そう判断されたようだった。時雨は躯に一礼するとともに飛影の後を追った。飛影への心配は無論であったが、躯様の不安を取り除くこと、その理由で後を追った。周囲を怖ごわと見渡し、その度吐き気と闘っているかのようだった。こちらが見ていられないと思うほど。

時雨は飛影の腕を掴むとそのまま自室件研究室へと連れて行った。話しを聴くにしてもここでは人目につく。

「ここなら誰の目も憚ることはない。なにがあったのだ飛影」

「・・・」

重い沈黙は事の重大さを物語っていた。しかし、時雨は辛抱強く待った。そして、その結果、飛影から聴き出したことに驚愕することになるとはまだ知らずに。

「貴様、・・・男とセックスの経験あるか」

飛影からのセリフとは思えず、時雨は一瞬我が耳を疑った。

「あるのかないのか!どっちなんだ!」

居丈高というよりも、癇癪をおこした子供のように時雨からは見えた。

1つため息を零した後、正直にあると答えた。魔界に住む以上、性的な倫理感など遥か昔に棄てていた。が、その後のセリフは時雨に更なる驚愕をよんだ。

「じゃ、貴様。・・・、俺を抱けるか?」

投げやりともとれるその態度と口調に、時雨は再び内心でため息を零した。

「理由を云え」

「・・・」

「その理由如何によってはお主の希望をきいてやらぬこともない」

「・・・」

「お主は儂の昔の患者じゃ。つまらぬ理由で死なれたら、せっかく移植したのが無駄になる。今までのデータもな」

それは時雨なりの優しさであった。敢えて非情な言葉を紡げば、飛影の性格から想像するに必ずや本音を吐露するであろうとの。案の定、飛影の逡巡は僅かばかりであった。昔、邪眼の移植をした際、その交換条件で過去を包み隠さず時雨に話した。それらを未だもって誰1人にも話していない時雨。医者としての守秘義務を貫いているだけなのだとしても、その生真面目さあるいは医師としての矜恃は飛影を安心させるには充分すぎる材料であった。あの様な云い方の裏にも、時雨の優しさを見ることができる。時雨が本当は躯を第一と考え、飛影に接しているのだとしても。いや、それが判っていたからこそ時雨の優しさが有り難かった。飛影は全て話した。蔵馬に惚れていること、その蔵馬に嫌われるのが恐ろしく本心をずっと隠していたこと、しかし、些細な出来事で蔵馬に知られ、脅迫まがいに蔵馬の目の前で他の男とセックスをしろと云われたこと。

話しを進めるうちに時雨の眉間のシワが深くなっていったことにはたして飛影は気づき得ただろうか。時雨は今までで最大のため息をついた。それは飛影だけに限らず蔵馬にもむけられたものだった。狐がこの小さな妖怪に友情以上のものを持っていると薄々感ずいてるゆえだった。正直になりさえすればそこに待っているのは幸福なものであるのに、何故、自ら進んで茨の道にゆくのか時雨には理解出来なかった。

すがる様に飛影は時雨を見つめていた。その昔も、こんな瞳だった。勝ち気で居丈高な態度とは裏腹に、必死で涙を堪えた赤い瞳。なにかにすがりたい硝子の瞳。その瞳の方こそが飛影の本心だった。愛情に餓え愛情を請うている瞳。昔も、今も。だからこそ移植の手術も了承した。あの激痛に耐える唯一の方法はそれを超える深い情ゆえに。今回も根は変わらない。時雨からみれば意に沿わぬ交わりではあったが、この飛影を見棄てることは時雨には出来そうになかった。

「判った。お主を抱こう」

すまないもありがとうもなかった。ただ、時雨が了承したことへの驚愕だけがそこにはあった。その飛影の姿を見て、哀れと思うのはこちらが傲慢なのだろうか、と、時雨は暫し考えに耽った。

「いいのか?」

「お主こそよいのか?考え直すならば今だぞ」

おそらく、蔵馬は2度3度と同じ要求を飛影にかすであろう。それを見込んでの時雨の発言であった。引き戻せるのは今だ、と。しかし、飛影にはその時雨の思いは届かなかった。移植の際にも頭を下げなかったあの矜恃の塊だった飛影が、時雨に対し頭をたれたのだった。おそらく、飛影にとっても生まれて始めての謝意。その時、床に落ちたものにも気づいたが、時雨は敢えて視線を外したのだった。罪悪感からか、それとも・・・。時雨は敢えてそこで思考を停止したのだった。






※ ※ ※





時雨と共に蔵馬のマンションを訪れる日が来ようとは。しかし、もう後戻りは出来ない。覚悟もした。ベランダに降りると、不敵な笑みを浮かべた蔵馬が窓を開ける。全身から冷や汗が出る。そこは地獄へと続く道だと、蔵馬の妖気が物語っていた。氷河の国より凍てつており今迄対峙したどの妖怪よりも禍々しかった。眼前の蔵馬ははたしてついこの前迄の蔵馬と同一人物なのだろうかと疑ってしまうほど。飛影を萎縮させるには充分であった。

一方の時雨は、内心でそれみたことかと思っていた。飛影に無理難題を云っておきながら、その一方で飛影が男を連れて来たことの事実に既にどす黒い嫉妬を放っているではないか。だのに、平然とした佇まいを崩そうとはしない。そればかりか。

「クスクス、時雨、か。まあ、妥当ですね」

その発言は不遜とも尊大ともとれた。飛影が連れて来そうな男は少し考えれば限られてる。蔵馬の予測の範囲内に自分自身も記されていたのであろうことが伺え、内心で舌打ちをした。それをよんだうえで、魔王のような笑みを浮かべる蔵馬。底意地の悪い狐を再発見し、時雨は苦々しくもあり、恐怖心から身震いしている自分自身に気づいた。

「寝室は隣ですから、適当に始めてやって。俺はその間夢幻華の花粉の精製をしますんで。ああ、そうだ、飛影おそらくバージンでしょうから念入りに解した方が。医師だし後ろのいいところは直ぐに判るでしょ。まあ、後はお好きに」

「・・・。そうさせて貰う」

飛影の腕を掴むと、こちらが可哀想なほど震えていた。無理もない。今から惚れた相手の部屋で情事をしようというのだから。いくら覚悟をしたところでそうそう葛藤や恐怖心が抜けるはずがない。

「・・・馬」

「なんですか飛影」

「傍にいてくれないのか」

小さな嘆願に、蔵馬はそぐわない笑みを深めた。

「クスクス。そんなに俺に抱かれたいんだ」

柔らかな表情とは裏腹に、その口元は悪魔の息吹を孕んでいた。ゾッとするほど美しさ、とは今の蔵馬を指すのだろう。

「だったら時雨に可愛がって貰って俺をその気にさせてください。貴方に出来るなら、ね」

その瞬間、飛影の顔色が失った。当然と云えば当然だ。この飛影に男を誘う術など備わってはいないのだから。時雨は哀れとも同情とも違うため息を零した後、飛影を隣室へと連れてゆく。蒼白な顔色をした飛影をベッドの上へと落とす。スプリングの音が飛影を現実へと連れ帰り、時雨から顔を覆うよに腕を交差する。おそらく今真っ暗な視界のなかで、飛影は精一杯蔵馬を思い浮かべているのであろう。時雨にはそれが判ったが、抱くと1度約束してしまった手前ここで飛影を1人には出来なかった。

白いスカーフを取り除くと、昔見たままの白皙の肌が露出した。痩せた為さらに鎖骨が浮き彫りなっており、そこに唇を這わせた。鎖骨を行き来し、その間に上衣をずり上げる。肌けた胸は想像以上に白かった。その上、小粒な果実は男を惑わす色合いをしていた。患者として診ていた時には気づかなかったが、この小柄な妖怪は男を誘う色香を持っている1度捕まれば抜け出せないほど。

時雨は小さな果実に爪に挟み、ゆっくりと捏ねた。柔らかかったそこは次第に芯を持ち始め、ぷっくりと花開く。途端にくぐもった声がした。その声色の艶に、我を忘れたかのようにむしゃぶりつく。肌理らかな肌に吸いつくと、面白いように痕跡が残っていった。しっとりとしていて、それでいて手触りのよい肌は時雨のなかの男を目覚めさせるほど。細い腰を幾重にもガードしているバックルを外し、まだ誰も触れたことのないものを包み込む。剣ダコの手のひらに包まれ、飛影の躰が艶かしくしなる。ゆっくりと成長させた竿からは、止めどなく雫が落ち時雨の手のひらを濡らした。時に睾を揉み、震える太腿に飛影の先走りの液を這わせ、その痕をおうように柔らかな太腿に歯をたてる。卑猥な水音と共に時雨の手は絶妙な加減で飛影を追い立ててゆく。やがて、ぶるりと震えると共に飛影は時雨の手のひらへと欲望を放った。

「・・・ん」

声を出すまいとする姿も男の征服欲と嗜虐心を煽るには充分であった。

衣服を全て剥がし、飛影の躰を反転させる。膝を立たせ腰をこちらへと突き出す格好にすると、時雨は双丘をわり開いた。そこには、確かに誰にも犯されていない証しのように、綺麗な色をした菊が1輪慎ましくあった。










2014/8/18


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