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The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.




愛を請う act.1


※R要素があります。蔵馬、飛影に優しくありません、中盤は飛影たん蔵馬以外とオイタしてます。ので、蔵飛以外駄目な方はご遠慮ください。最後はハッピーエンド?















人間界と魔界との境界線がなくなり、迷い込む人間が増えた。霊界との和平協定がある為にこれは大統領政府側から見れば、頭の痛い出来事ではあった。この為に、面倒なパトロール部隊を設置し、魔界トーナメントの敗者がそれに従軍することとなった。己自身それらに与することとなった。しかし、今となってはそれは有難い処置だった。人間を保護するにあたり、肺の洗浄と共に記憶処理が先ず優先された。この為に必ず夢幻華の花粉が必要不可欠となったからだった。蔵馬に会える口実ならなんでも良かった。躯や煙鬼に旧知の仲なのだからと、己が選ばられた。蔵馬の造り出す夢幻華の花粉を人間界から受け取り魔界へと運ぶ誰かが必要だった。2人は軽い決断だったに違いない。しかし、その任を与えられ、内心狂喜した。魔界と人間界との間に隔たりがなくなると共に、蔵馬との距離は自然と開いた。当たり前だ。蔵馬は人間界、そして己は魔界。生活基盤が違えばおのずと会える回数も減る。加えて、蔵馬は必要以上に魔界に来たがらないし、己自身も人間界に雪菜が居る以上頻繁に足を運ぶのは躊躇われた。でも、会いたい。会ってその傍らにいたい。いつの頃からか定かではない。しかし、気づくと蔵馬を好いていた。始めは愕然とし、幾度も勘違いだと己に云い聞かせた。長いこと仲間として過ごしていたから錯覚しているだけ、人間界にいる同じはみ出し者、と。しかし、それらの理由のなんと滑稽なことかと、自嘲する日々を過ごすうちに諦めた。今にして思えば尤もないい訳を並べて己のなかで育った気持ちから逃げていたにすぎない。好いてしまったものはどうしようもない。毎日蔵馬のことを考えた、気づくと雪菜を心配する回数をはるかに越えていた。好かれようなどと思わない。そんな高望みは抱かない。ただ、傍にありたい。蔵馬の為ならば、どんな責苦も受容する。もし蔵馬が耐え難い状況に置かれたならば、己自身が身代わりになってもかまわない。蔵馬の為ならば、なんでもする。死ねと云われたなら、喜んで此の身を差し出す。己の命より他人の命を優先する日が来ようとは、昔の己が今の己を見たらなんと云うか。でも、それでもいい。それでもかまわない。蔵馬という男を愛した事を悔やまない。例え、この先なにがおきても・・・





※ ※ ※





テーブルの上のココアはとうの昔に冷め、下にミルクと分離し沈殿している。飛影はただ黙って蔵馬の作業を見ていた。蔵馬の元へと夢幻華の花粉を受け取りに来る時、飛影は敢えてその必要な分量納品日時を蔵馬へと伝えない。意外とせっかちな躯、予想以上に完璧に管理する煙鬼をかわすのは実のところ毎回苦労するのだが、しかし、前もって伝えたりすると、蔵馬の性格を思うと「造っておきましたよ」と、さっさと魔界へと帰されるのは目に見えていた。それに。

「はあー、疲れた。まだ注文の半分も終わらない。今夜はこのくらいにしておきます。飛影泊まっていくかい?」

これだ、毎回待ち遠しく思うのは。飛影は2、3回分をわざとまとめて蔵馬へと頼んでいた。少しでも長くと願いながら。この甲斐あってか、蔵馬は度々飛影を自身のマンションへと寝泊りさせるようになった。この行為と言葉が例え蔵馬の気まぐれだとしても、この一時がなによりの至福であることに代わりはない。

が、しかし、それとは裏腹に飛影は慎重に舌打ちをした。少しでも油断すると己の気持ちを蔵馬に露呈しかねない。貴様など意識していない、己は大統領政府から依頼され、仕方なくここに来ているのだ、というスタンスを飛影は貫いていた。気づかれたら終わりだ、なにもかもが。好かれたいと願っては駄目なのだ。この思いを知られたら、間違いなく軽蔑され嫌悪される。それがなにより飛影に恐怖を与えていた。不安と緊張感は常に飛影の裡にあった。飛影は用心深く、己という自身を蔵馬の前で演じていたにすぎない。傍目にはそれは上手く繕われていたかもしれない。が、しかし、その飛影に蔵馬は違和感を感じていたのだった。皮肉にも、蔵馬だけが。蔵馬はその違和感の正体をも感ずいていた。だが、それが自身の独りよがりの妄想なのではないか?その思いがいつも蔵馬に飛影に対し聴きださせないブレーキとなっていた。そして、そのこと自体が蔵馬をも苦しめていたのだった。

無言のままバスルームへと移動し、シャワーを浴びる準備をする。以前、そのままソファーで寝ようとしたら、普段温厚な蔵馬とは思えないほどの剣幕で叱られた為だった。バスルームへと来ると、己のサイズと思われる衣服がすでにあった。バスルームのなかには、己専用のシャンプーにトリートメント。それに、ボディーソープ迄ある。「飛影は意外とくせっ毛だからね」ある朝、酷い寝ぐせを見かねてか、蔵馬が用意したものだった。飛影はそれが嬉しかった。些細な事だ。来る日時を前もって伝えていないにもかかわらず、己がここにいつ来てもいいのだと云われているようで。

さっぱりし、蔵馬の居るリビングへと戻る。その横顔が常になく張りつめた糸のように飛影には見えた。その横顔は、先ほど迄確かにあった温かいなにかを失わせるには充分であった。飛影は俯き、黙ってその場を離れようとしたが、それより速く蔵馬が飛影の存在に気づき微笑んだ。

蔵馬は努めて明るく「俺も入ろう」と、飛影の傍らを過ぎてゆく。そんな蔵馬の後ろ姿を飛影は見送ることしか出来なかった。あんな思いつめた蔵馬は始めてであった。そんな蔵馬に対し優しい言葉の1つも云えない。情けなくなり帰ろうかとも思ったが、蔵馬自身に帰れと云われたわけでないと思い直し、飛影は蔵馬のベッドへと入り込む。途端に新緑に包まれたかのような安心感が、飛影を不安から遠ざける。蔵馬の匂いだ。大好きな蔵馬の。現金なものだ。先ほど迄一抹の不安であんなにも心が揺れたというのに、蔵馬の匂いに包まれただけでこのありさまとは。飛影はそのまま意識を手放していた。

安らかな眠りを遮らないように、蔵馬は優しい仕種でもって飛影の艶やかな黒髪を梳く。この一時が幸せだった。この安らかな顔を曇らせるのは蔵馬の本意ではない。だが、こうして、なにも無かったかのように時は過ぎてゆくのだろうか?なに1つ確かめることもせず。自身の気持ちをも有耶無耶にし。それが、はたして自身の望みなのだろうか?これがこの先も永遠に続くのだろうか?少なくとも、飛影はそれを望んでいるのだろう。しかし、蔵馬は今の危うい関係を終わらせたかった。が、しかし、前に進んでいいのだろうか?飛影ははたして自身の言葉を信じるだろうか?おそらく、いや、確実に負の方向へととらえるだろう。最初からなにもかも諦めている飛影が、この時蔵馬は苦々しく、また、始めて憎らしいと思ったのだった。

朝を知らせる前。まだ、カーテンの向こう側は夜の支配から抜けきれておらず薄暗い。うっすらと飛影は瞳を開き、蔵馬の綺麗な顔に魅入る。そして、己の手のひらがなにかを握りしめていることに気づき次いで慌てた。よりにもよって蔵馬の胸の辺りを。かあー、と、顔が紅潮するのが自分自身判った。速く離さなければ。だが、気持ちとは裏腹に、手は硬直して動こうとしない。己の手のひらの筈なのに云うことをきいてくれない。まるで磁石にでもなったかのように。いや、離したくないのだ、本能が。もう少しだけ、あと、もう少しだけ。このままで。

しかし、そのささやかな望みは蔵馬の突然の覚醒によって終焉を迎えた。己の手のひらを掴むと共に冷たい声が続いた。

「なんのつもり」

蔵馬の本質が冷淡である事を忘れていたわけでない。しかしながら、この時の蔵馬の冷酷な響きは飛影の心に雪を降らせるには充分であった。バレた!?聡い蔵馬だからこそ今迄充分に注意をはらってきたのに。それなのに、終わりは呆気なく訪れた。

手のひらを乱雑にはらわれ、クツクツと奇妙に笑う蔵馬の姿を、飛影は茫然とした面持ちで見ていた。眠っていた獰猛な獣を起こしてしまった錯覚に陥った。

「クククッ、そんなに俺が好き?」

飛影には絶句するしか術はなかった。蔵馬のセリフで否が応にも判った。蔵馬が今迄こちらの思いを知っていて知らないふりをしていたことが。その事自体が胸を抉られるほどの痛みを飛影に与えていた。青ざめてゆく己の顔が嫌でも判った。そんな飛影の顔色をむしろ楽しげに見つめ、蔵馬は笑い続けた。そこに居たのは、紛れもなく妖狐と云われていた頃の蔵馬だった。残忍で残虐な。冷酷非情な。南野秀一とういう人間の皮は剥ぎ取られ、剥き出しになった妖狐蔵馬があった。

「・・・、蔵馬」

「ねえ、答えてよ。俺が好きなの?」

飛影は沈黙した。しかし、それすらも蔵馬は赦してはくれなかった。

「答えなさいよ、飛影」

ゾッとするほど冷たい声で。ゾッとするほど美しい声色で。飛影は無言でこうべを垂れる。まるで敗者のその姿に、蔵馬は不敵に口角をあげた。

「俺に抱かれたいほど?」

「・・・」

「黙ってたんじゃ判らないでしょう。ほら、抱かれたいの?抱かれたくないの?どっちさ」

「・・・たい」

葛藤のすえ、飛影は短く答えた。その端的な言葉の内面にどれほどの思いが詰め込まれていたのであろうか。そのか細い声が蔵馬の耳に届いたのを合図に、有無を云わさず服を脱がされた。あまりの手際の良さに蔵馬が如何にこういう行為に慣れているのを思い知らされ、飛影の胸は二重に苦しみを味わったのだった。

こんな形で蔵馬と情交を交わしたくない。なのに躰は切ないほど蔵馬を求めていた。薄い胸板に飾ってあるだけのものだと思っていた乳首、なのに、そこを嬲られ躰が歓喜しはじめる。捏ねられ、弾かれ、摘まれ、蔵馬の形のよい唇で容赦なく吸われ甘噛みされる。蔵馬の手のひらが飛影の肌の上を統べるかのよになぞってゆく。たったそれだけの行為に、飛影は下半身がジワジワと変化してゆくのが判った。が、決して声をあげなかった。恥ずかしさよりも、同じ男に愛撫されみっともない声を蔵馬に聴かせたくない思いからであった。それは、飛影が持つ矜恃の高さだったが、蔵馬にしてみれば苛立ちと不満を増大させたにすぎなかった。何故抱きかえさないのか?やはり、その程度の思いなのか?こんなにも貴方を求めているのに。手のひらから思いが伝わらない。こんなにも愛おしいと叫んでいるのに、飛影は耐え難い苦痛から目を逸らしているかのように、躰は小刻みに震えていた。

フッと重なる重さから解放され、飛影は恐る恐る瞳を蔵馬へと向けた。無表情な蔵馬がそこにはいた。が、しかし、その奥深くに眠る怒りと狂気に気づき飛影は己が蔵馬の逆鱗に触れたことを悟り更なる恐怖に支配された。

「つまらないなあー、貴方。ねえ、俺に抱かれたいならその気にさせてよ、女みたいに」

云われた意味が判らなかった。ただ、愕然と蔵馬を眺める事しか出来なかった。

「そうだな、この場で貴方1人でヤッてるところ見たらその気になるかも。なに茫然としてるの?ほら脚開いて」

「や、やっ!ヤダ蔵馬!」

「俺に抱かれたいんじゃなかったの飛影?」

ささやかな抵抗は蔵馬のそのセリフでかき消された。そうだ。たった1度でも、そう願わなかったか?こんな扱いであっても、蔵馬は己に興味を示してくれたではないか。後々後悔すると判っていても、この機を逃したらまた元の生活が待っている。蔵馬は己等見向きもしない、そしていつか誰かが蔵馬を独占する日を指を加えて眺める己。今、蔵馬に従えば、そんな未来が少しでも先送り出来る気がした。まさに錯覚だったが、この時飛影はその錯覚にすがったのだった。

躰の力が抜けた事を了解と受けとり、蔵馬は飛影の脚を開く。先程迄たかまりを見せていたものは今は力なく下を向いたまま。蔵馬は飛影の手のひらを掴むと躊躇うことなく握らせた。その意図は明らかだった。飛影は羞恥を棄て、矜恃をもこの時棄てたのだった。なにかに取り憑かれたかのように一心不乱に飛影は蔵馬の目の前で自慰をした。蔵馬に抱いてもらえるならば、喩えたった1度だとしても。

最初の方こそ萎縮していたが、蔵馬が見ていると思うと躰が勝手に反応する。先端をグリグリ
と撫で軽く引っ掻くと、プクリと小さな穴から液が溢れる落ち、飛影の手のひらを次第しだいに濡らしてゆく。血管が脈打つ速ささえも伝わる。蔵馬の視線は媚薬のように飛影を狂わせてゆく。やがて感極まった飛影は白濁したそれを手のひらに放った。途端に冷静さを取り戻した飛影は蔵馬を見上げる。しかし、蔵馬の顔には表情というものが一切無かった。冷酷もなく非情もなく。ただ飛影という1個体を眺めていた。

「それだけ?」

「・・・?」

「抱いてほしいんじゃなったの?貴方1人だけ気持ち良さそうにイってるとろこ見てもねえ。正直な所つまらないし、全然その気になれないよ。せめて下の穴解してなか見せて誘うくらいはしてくださいよ」

「そ、そんなこと」

「出来ないんだ。ふーん、じゃ貴方が夢幻華の花粉の納期を偽っていたことや水増ししていたこと躯や煙鬼に知らせてもいいんですね」

その脅迫は飛影をさらに青ざめさせるには充分であった。飛影が蔵馬と会う口実。その細い糸を飛影は大切にしてきた。確かに、蔵馬を始め躯や煙鬼を欺いてきたが、それはその糸を断ち切らせたくなかったから。蔵馬との多くの時間を共有していたかったから。だのに、蔵馬はそれさえも脅迫の種にした。飛影がどういう意味でそうして来ていたか、そこまで知っていながら、蔵馬は飛影を突き放すかのように云い放ったのだった。

「・・・、どうすればいいんだ」

最早飛影は蔵馬の傀儡でしかなかった。蔵馬は妖艷な笑みを浮かべ、飛影の耳元へと囁く。

「ここで、この部屋のこのベッドの上で俺以外の奴とセックスしてください。そうしたらならば、貴方を抱いてあげますよ」

悪魔の囁きだったが、飛影は拒むことはしなかった。壊れた人形のように機械的に頷く飛影は、どこか感情が壊れたかのようであった。蔵馬に抱かれる。その一点が飛影から思考さえも奪っていた。頷く姿を満足気に見ていた蔵馬は、その白皙の頬にくちづを1つ落としたのだった。それはまるで、契約の証のように・・・










2014/7/21

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