The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.
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盲目少年期 act.1
※少し特殊?な設定。なんでもバッチコ〜イという勇気あるお姉さん方々スクロール。
可愛い可愛い、愛しの飛影。まさか、彼から逢瀬の約束を貰える日が来るだなんて。蔵馬は常になく浮かれ、又、緊張してもいた。当然だ。いつもであるならば、蔵馬が脚を運ばなくては、顔を拝めるのもままならないのだから。
「いらっしゃい」
ついいつも以上に熱がこもる声でもって目の前の彼を招き入れた。キョロキョロと忙しなく動く赤い瞳。訝しく蔵馬が問うてもなんでもないと返される。
「・・・。どうかしましたか?」
「いや、別に」
そのわりには挙動不信だった。まるで始めて訪れた場所に戸惑っているかの様だった。
「代わったところは無いでしょう?」
すると、ベッドを一瞥するやいなや、朱色に染まる。あの時のことを思い出している、とういう訳でもなさそうだった。じっとりと彼を上から下迄舐め回す様に見つめた。戸惑っている、というより困惑に近い態度。一歩近づくと2歩後ずさる。
可笑しい。なにかがいつもと違う。しかし、蔵馬が幾ら聡明でも今回の自体を果たして想定内に描いていたであろうか。
「飛影、挨拶は?」
「は?挨拶?」
「してくれないの?いつもみたいに」
「あ、挨拶ならさっきしただろう」
「違いますよ。・・・キス。してくれるでしょういつもは」
真っ赤な嘘だった。狐であるから嘘八百はお手の物。が、ここで慌てる姿が見られなかったことに、益々蔵馬は猜疑が強まった。慌ててはいる、しかし、その慌てぶりは当惑しているかの様であり、常の羞恥心からくるものではない様に見受けられた。
恐る恐る近づき、子供がする様な幼稚な触れ合い。口づけというよりただ合わせただけのもの。そして、これで良いのか?という赤い瞳。こんなもので火をつけられるとは、困ったものだ、自身が。下がろうとする躰をグイッと引き寄せ、打って変わって貪るような口づけ。歯列をなぞり逃げをうつ舌を絡ませ、その柔らかさを存分に味わう。互いの間から細い糸が流れ落ち、それさえも愛おしいそうに拭う。
・・・、う、嘘だろう。こんな激しい蔵馬は始めてであった。こんなことがもし“本人”にバレたりしたら。それ以前に、飛影と蔵馬が挨拶の代わりにキスしていたという事実にも驚愕だ。背中に冷たい雨が降る。氷の使い手であるのに我ながら情けないやら、恥ずかしいやらで、兎に角これ以上は誤魔化しが効かなくなると思った。が、しかし、なにをどう云えば伝わるのだろうか。下手なことを云ったら2人の間に溝が出来てしまわないだろうか?心配は思わぬ蔵馬のセリフから驚愕へと席を譲った。
「貴様、誰だ」
氷を連想させる冷たい瞳が降り注ぐ。それと同時にこんなにも早く正体がバレてしまったという焦り。
「本物の飛影はどうした。返答次第では貴様の命がどういう運命を辿るか判るな」
ぞっとした。恐怖しかなかった。浦飯たちほどではないにせよ、普段の南野秀一を知っているだけに、その違いが嫌というほど判る。伝説と迄謳われた妖狐が今まさに眼前にいる。恐ろしい、一刻も速くこの場から逃げ出したい。だが、ここで逃げても結果は決まっている。容易に判る結末。事情を話して赦して貰えるかは甚だ疑問だが、嬲り殺されるよりははるかにマシに思えた。
「・・・、すまん。凍矢だ」
たかが数十秒の沈黙がそら恐ろしく感じた。時とはこんなにも長く流れるものだっただろうか。
「はあー。1から説明してくれない?どうして君が飛影の姿をしてるんですか?妖気も彼のものですよね?」
怖い恐い!兎に角恐ろしくてならない。蔵馬の目が据わっている。特訓の時の苦しみ以上だ。
「つ、辛い、らしい」
「は?なにが」
泣いてもいいかな、俺。誰に赦しを乞うでもないのに心のなかで呟く。
「躰が、・・・その」
どう云い方を代えても結局はそれで。蔵馬も察してくたれが、察しが良いから尚いたたまれない。
「で、その鈴木に相談した」
本当はそれだけではないのだが、飛影と利害が一致した為こうなってしまった。それに、たまたま鈴木が魔界のなんたらという新種を手に入れた。要は人体実験。躰と躰の入れ替え。言葉を代えれば心と心の入れ替えだった。
「鈴木の野郎!後で殺す!」
怖い!だんだん口調が荒々しくなっている。
「そんなに鈴木を怒らないでやってくれ、云い出したの俺たちだし」
「たち?」
しまった。どうしてそう重箱を突くように言葉尻を拾うかな。
「つまり、このことは飛影も充分以上に承知の上だと?躰が、いや飾っても仕方ない、セックスが堪えてるから逃げ出した?」
なんか、男の矜恃をへし折った、みたい?あの蔵馬が今度は今にも床にめり込みそうなほど落ち込んでいる。
「に、逃げてないぞ!飛影は親切から!」
「親切?」
キラリ、と、蔵馬の瞳が光った気がした。喩えて云うならば、獲物が罠に掛かった時の獣の瞳だった。嗚呼、俺の馬鹿野郎!見え見えの芝居に乗るなんて!
「つまり?」
「えっと、その、飛影のふりしてただ夜を過ごせれば、な、と。深い意味は無いぞ!キスだって想像して無かったし、せ、セックスだって、その」
嘘つき、だ。少なからず期待していた。だから鈴木の提案に乗った。飛影はふりだけだし、と、軽い気持ちだったに違いない。自分自身の浅ましさが見て取れるではないか。
「お、俺、陣が好きなんだ」
「知ってますよ」
「ええー!蔵馬もか!?」
飛影にも気づかれていたからには凍矢の驚愕は当然であった。これで気づいてないのは当の本人たちだけであろう。陣に至っては自分自身の思いに気づいているのかも甚だ怪しい。
「で、鈴木の口車にまんまと乗った訳ですか?」
飛影もああ見えてお人好しだからなあー。男同士どうするんだ?おそらくはそんな疑問だったのだろう。最初は。飛影も骨休み?くらいにしか考えてない筈。手を出す可能性はほぼ無いと思ってくれたのは、自身への信頼度からか凍矢の純真度からかは甚だ疑問だが。
「まあ、そういう訳でしたら・・・、実地訓練しますか?」
「い、い、い、い、嫌!!嫌!!それは遠慮しておく!それに蔵馬忘れてはないか?この躰は飛影だが中身俺だぞ!?」
「躰の記憶力って侮れないんですよ?」
声にならない悲鳴が上がる。狼狽する体を何事も無かったかの様に安々と抱きしめる蔵馬の本心が何処にあるのか判らない。噂以上に妖狐蔵馬は鬼畜で、空恐ろしく感じた。
「ま、待ってくれ!知りたいけどやっぱり陣が良い!」
「クス。だろ?俺も飛影が良い」
俺って、考え無しだ。自分自身は良くても相手の気持ちなど一切考えていなかった。幾ら飛影が良いと云ったからとて、所詮別人なのだ。自分自身に置き換えたらやはり悲しいし耐えられない。嫉妬で気が狂ってしまうかもしれない。
「すまん」
「クスクス。そんなにしおらしく謝られると勘違いおこしそうです。だから、速く“俺だけの”飛影に返って下さい」
ねえ、飛影出で来て。
凍矢(?)を魔界へと帰し、暫く待ってみたが、一向に来ない。その向こうに隠れているのは気づいていた。最初に折れたのはやはり蔵馬であった。ベランダを開け、見えない飛影に優しく囁く。
「飛影、出ておいでよ」
「・・・。いつから気づいていた?」
そこには凍矢の躰の飛影がいた。
「気づいたのは凍矢にキスした辺り、かな?」
「・・・、チッ、じゃ、ほぼ最初からからか」
「どっち」
「は?」
「凍矢への親切心、それとも俺に妬かせたかったの?」
我ながら意地の悪い質問だ。飛影の性格を思えば前者であるのに、後者を期待している。そして、後者が限りなく正解であり飛影がそれを否定するのも判った上での質問なのだから。飛影も本当はのところ不安で不安でたまらなかったに違いない。だからこそ、こそこそと隠れてなかの様子を伺っていた。それとも安心をこそしたかったのだろうか。蔵馬のこれ迄にの色事を思えば、飛影としては寧ろ両方の意味を持っていたのだろう。案の定、言葉につまり青い瞳で睨みつけてきた。常の瞳の色とは違う筈なのに、その瞳の色が飛影のそれとだぶる。そして、それを想起して興奮している愚者がここにいる。
「だから貴様は嫌いなんだ。判ってることを聴くな」
「クスクス。嬉しいです」
「チッ」
舌打ちだって、飛影だから可愛い。どんな飛影だって、可愛くてたまらない。
チュ、と可愛らしい音を立てキスを1つ。青い瞳が困惑と悲哀に濡れる。
「勘違いしないで。俺は今貴方にキスしたんですよ。今、貴方は別人だけど、心はここにある。違う、かな?」
「・・・」
「さっきのキスも凍矢にしたんじゃないよ。躰の貴方へキスしたんです」
「詭弁だ」
「確かに嘘は俺の十八番だけど、貴方への気持ちは嘘はないもの。貴方だから好きになった。だから、貴方に会いたいしキスもしたければセックスだってしたい。ねえ、だから俺に貴方へのキスをさせて。1つになった貴方をちゃんと感じさせて」
「・・・。蔵馬」
名前の後に“好きだ”と、蔵馬の心が聴こえた。2人にはそれで充分だった。
※ ※ ※
百足の広い闘技場で、本日珍しい飛影と蔵馬が手合わせをしていた。審判は非番な時雨、上座には躯、観客、又は次の対戦待ちに幽助を始め陣や凍矢の六人衆。この日は鈴木が先日の怪我の為に欠場。怪我を負わせたのは誰かは、数名のみの秘密。
「クスクス」
「随分余裕だな貴様!黒龍波がそれ程欲しい訳か!」
「良いですよ。貴方がくれるものならなんでも謹んで受けますもん」
これに飛影はカチンとくる。包帯を取ろうとするが、蔵馬から見ればそれは唯一の隙だった。
気づくと馬乗りになった蔵馬がいた。退けと叫ぼうとする唇を奪われたかと思うと、観客などお構いなしに蔵馬は濃厚な口づけをする。
割って入って来た舌を噛み切ってやろうかと思う前に、その舌を絡め盗られ容赦なく突いたり吸われてしまう。そうすると躰の自由さえ奪われる。絡み合う唇の間に顎を抑えていた蔵馬の親指が伸びてきて、角度を替えた瞬間隙間を縫うように入れられ、舌と指で愛撫される。伝え落ちる物にさえ五感を支配される。またしても角度を代え、今度は下唇を甘く噛み吸われる。ジンジンとするその疼きの様な痺れが電流の様に躰を駆け巡る。その間にも、躰ラインを確かめるかの様に蔵馬のもう片方の手のひらが妖しく蠢く。脊髄から脳天に駆け上がる快感に、飛影の抵抗も虚しく崩れるのだった。
「・・・。躯様。あれも“寝技”としてカウントしても良いのでは」
生真面目な質問者を眺めやり、躯は好きにしろとばかりに蔵馬からの差し入れ(賄賂と人は云う。)のワインを呑んでいた。その後ろでは、顔を赤らめる2人。1人は先日のことを思い出し、今1人は目覚めた嫉妬からであった。
「凍矢!!」
「・・・、えっ?な、なに?」
陣にしてみればその一瞬の間も癪に触った。ここ最近、凍矢は蔵馬を見つめては顔を赤らめる。幾ら鈍い陣でもその意味が判る。胸が苦しい苦しいと叫ぶ。蔵馬じゃなく俺を見て欲しい、と。
「蔵馬じゃなく俺じゃダメだべか!?蔵馬は飛影のもんだべ!横恋慕はよくねえーべ!」
自分自身のことは棚にあげ、というより興奮と憤りの余りに己がなにを云っているかも判らなくっている様に思われた。
「俺じゃダメだべか!?なあー凍矢」
「・・・。ダメなんかじゃない。陣が良い、陣が好き、だ」
素直に口にする凍矢に陣は感動したかの様に震えると、すかさず凍矢を腕のなかへと抱きしめた。
こうして2人は恋人同士になれたのだった。
───数日後。
「なあーなあー、何処が凍矢喜ぶと思うべ?なにが好きだと思うべ?なあーなあー蔵馬」
「・・・」
「なあー!?」
「嗚呼、もう五月蝿い!そんなの知りませんよ!」
「ケチ」
「なんとでも。飛影からのお願い以外聴きいれる気更々ないですから」
「・・・、外道、鬼畜、変態、死神、エロ狐」
「あのね、幾らなんでも怒りますよ。大体、5番目なんなんですか?君に手を出す程飢えた獣じゃありません」
「出したべ凍矢に!!凍矢のファーストキス返せ!!」
全く、凍矢の素直さには感心するが、これは幾らなんでも。大体、あのキスはあくまでも躰のなかにいた飛影へとしたのであって、本来の躰の持ち主である凍矢にした訳では決してない。浮気では断じてないと思っている辺りが蔵馬の救い難く、又、度し難いところと云えたであろう。まあ、あれがきっかけではあるが。
「返せって云われても、貰ってしまったものをどう、・・・」
「「・・・、おえっーーー!!」」
避ける容赦が無かった。勢いでくっついてしまった唇と唇。事故としかいいようがない。が、少なくとも、陣は返せと突っ込んでしまった責任がある。
「やっぱ凍矢じゃないと気持ち悪いべ!」
「当たり前だ!なんてことしてくれたんです、か!?」
外に妖気を感じ視線をそちらに向ける。すると、1番見られたくない2人がいた。
「飛影!?」
「凍矢!?」
凍矢は悲し気に、飛影は憤り無表情な額に青筋が立っていた。
「貴様という奴は、だから信用出来んのだ!」
「誤解!誤解です!待ってー飛影ー!!」
Fin.
2013/10/16
Title By 水葬
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