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The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.




恋しらに、 act.1


※R要素があります。もう1度ご確認。お姉さんは18歳以上ですか?OKな方はスクロール。















己はいつの間にあの性悪狐に絆されたのであろうか。

あんな顔だけがいい狐に。性格は最低であり最悪。他者を威圧し屈伏させるのを誰よりも心得ている。そして、他者が狐に屈すると同時に、それを当たり前のように受容し平然とした態度を貫き通すのだった。それが冷静沈着にも見え、また、不遜にも見える。人間に融合した後も、表面的には穏やかと称していい顔をしているが、性質の悪い立派な二重人格者。また、本人たる蔵馬もそれを自覚しているからなお始末に悪い。嫌みたらしく、底意地が悪く、嫉妬心は誰よりも根深く太い。妹たる雪菜の話しが出るだけで、秀麗な眉にシワがよる。躯と一晩中手合わせをしていたと云った際は、5日間ほど妖力をほぼ零にする薬草をこっそり盛られ、戦闘それ自体が叶わなくなってしまった過去もある。幽助の店を秘かに手伝っていたとバレた際には、幽助の店を食用植物の餌にし、1週間魔界の蔵馬の塒の1つに監禁ととても他者には恥ずかしくて云えない数々の行為をされた。(その間幽助はと云うと、昼も夜もなく、魔界のオジキ草に追いかけられたらしい。その後、追いたてられたのがよほど堪えたのか、それとも蔵馬からの脅迫からなるものなのか、飛影の前に“もう2度としません”と書かれた血判を持って土下座に来た。)妖気さえも、狐が支配下に治める薔薇の棘同様刺々しいものへと変化する。その鮮やか過ぎる変化には、呆れることを通り越し、いっそのこと称賛を贈ってやってもよいほど。そのうえ色々ねちっこくて、あの時とてなかなか離してはくれない。朝日を過ぎても、夜の帳が来ても離してくれないことも度々だ。要するに、まる1日間もの間ずっと狐に組み敷かれ続けるなんてしょっちゅうだった。千年もの長きに渡り生きてきたのだ、いい加減枯れて欲しいと願いたくなる。

だのに、何故、このベランダに立つのであろうか。

カラカラと窓を開ける。室内からは、狐特有の匂い。

今日、狐はいない。いないと始めから判っていたのに、気づくとここに足が向いていた。

人間界で云うとこの週末という時間帯。いつも蔵馬と過ごしているから習慣になっているだけだ、そう、幾度も己に云い聴かせながら。

『ごめんね飛影。来週は出張でいないんだ』

そんな言葉を云っていた。出張というものが判らなかったが、“仕事”だということは理解出来た。要は、魔界トーナメントで敗者たる地位につかざるを得なかった己たちが常に行っている“パトロール”を遠出して行うのだろう。そんな風に確か切り返し、狐が苦笑したのを覚えている。

ひんやりとした室内。灯りさえもなく、どことなく寒々しい空間。人間界は、初夏のもっとも過ごしやすく、また、芽吹いた花々が最盛期を謳歌し、人々に美しい景色を彩る季節を迎え惜しみなく与えていた。それなのに、1歩室内へと入った途端、肌に触れてくる空気が冬の凍てついたものへ代わったように感じた。狐の匂いだけがありありと残っているのに、その主がどこにもない。一瞬、飛影の表情が、本人の意思とはそぐわないものとなった。本人には全く自覚はないが、他者が見れば明らかに“淋しい”と、その顔には書かれていたであろう。

脳裏に蘇る蔵馬の表情。たおやかに笑う蔵馬。その微笑は己のなかに理解し難い感情を生む。なにもかもを包んでくれるかのようなその笑顔。いつだって嫌みたらしいくせに、ふとした時だけに見せるその微笑。だが、しかし、その造りもののような笑顔を、己だけに与えられるものではないからであろうか。幽助、潰れ顔、魔界でのかつての同士たち。そして、なにより、母、志保利。平等に与えられるそれに、訳も判らず苛々としたものが募る。それが嫌いで、「笑うな」、そう詰ったこともあった。しかし、よりいっそう己を苛々させるのはその後の微笑みと言葉だった。

『クスクス。そんな意地っ張りもいいね』

あの際に見せるのが本性の顔だと悟っている。罠にかかった獲物を嬲るように見つめ返される。まるで覗姦されているかのような錯覚を覚えるのだった。それが気に入らない。・・・、気に入らないだけなのだろうか。あれこそが、狐の本質なのに。それを、己だけに見せているのに、何故、その本性に恐怖より羞恥心を覚えるのか。それが、不愉快の原因であり、己の裡に理解し難いどす黒いものを見出すのだった。狐が見せる様々な顔は、己だけ知っていればいい。そう、思うことはなにに由来するのか、未だ飛影はその答えと向き合うのを恐れているかのようでもあった。

寝室へと入り、手触りのよいタオル生地のタオルケットを頭から被る。鼻腔いっぱいに広がる蔵馬の匂いに目眩しそうだった。

嫌いな訳ではない。そもそも嫌いならば、話しは速いのだ。それが腹立しくもあり、己の気持ちを嫌いで埋めつくしてくれない蔵馬に対し八つ当たりをしてしまうことも度々。そこで、少しでも殊勝な表情を見ることが叶えば、こんなに迄も苛々したりはしない。さらりとかわす訳でもなく、自分自身の態度や言葉に悪びれた様子もない。結果、飛影は怒りの矛を代えるか抑えるかになるのだった。

散々脳内で狐に向けて悪態をつく。しかし、その後、主のいない室内の静寂さが、飛影の裡と脳裏に伝染してゆく。

ギュッ、と、生地を掴むと、ここにはいない狐の匂いに包まれているかのような錯覚を生む。あれほど苛々していたものが、それに包まれた途端に霧消してゆく。いつだってそうだ。狐本人を前にすると、蔵馬の言葉に憤慨し、態度に憤りを露にするのに。しかし、その後、それらは、蔵馬本人によって存在していたことを忘れるかのように、最初から無かったかのように包まれるのだった。だからこそなのだろうか、蔵馬が成すことを最終的に赦してしまう。

「・・・、蔵馬」

気づくと零れていた。しかし、それに応えてくれる筈の相手がいない。飛影の呟きは空虚な室内へと吸い込まれかき消えていった。しかし、名を呼んだ為か、あらぬ場所が熱を帯び始める。散々この前も蔵馬に抱かれたのに。つい先ほども枯れてくれと願ったのに。躰はもう既に蔵馬を求め始めてしまっている。

恐る恐る飛影は自身の分身をに手を伸ばす。服の上からも充分に硬度が判るそれ。一瞬、羞恥と躊躇いが過ったが、この室内には誰もいないことに背中を押される。逡巡の後、カチャカチャと金属音をたてながらベルトを外してゆく。窮屈にしていたそこから出され、飛影のそれは一瞬ぶるりと震えた。輪を造り、自らの手のひらで追いたててゆく。

「ふんっ、・・・、あ」

ぬるぬると先走りの液で、手のひらが濡れてゆく。先端をグリグリと弄り、竿をもう片方の手のひらで包みこみ上下にゆるゆると掻いてゆく。時折、シーツの上に先端部を擦り合わせる。そうすることにより、蔵馬の匂いに触られているような錯覚が呼ぶ。しかし、幾らそうしていても決定打となるものが一向に来ない。熱はますます増すのに、排出が出来ない苦痛に飛影の顔に苦悶を呼びこむ。

自分自身でも、本当はどこをどうすればイケるか知っている。幾らこうして掻き続けても、なかをあの太くて硬いもので貫かれ揺すられない限りそれは叶わないのだ。

泣き出しそうな表情を浮かべた後、飛影は片方の指先を己の咥内へと導き、たっぷりと唾液をつけてゆく。頭は枕に置いたまま腰をゆったりとした動作で上げてゆく、すると、その反動でタオル生地のタオルケットがスルリと落ち、代わって白皙の双丘が天を向いた姿でのぞく。飛影は、背から奥まった箇所にある後孔にその濡れた指先をあてがった。

「んんっ、・・・はぁ」

僅かな水音が室内に響いた後、飛影の甘やかであり艶のある声が静寂から席を譲る。

「ぁん、・・・く、蔵馬ぁ」

飛影は夢中で自らの指を出し入れする。高々と上げられた腰はその動きに連動するかのように蠢き、腰の下からは雫が止めどなくシーツの上に染みを造りあげ、その色を代えていた。

しかし、それでもなお、最終的な波が襲って来ない。霞みゆく脳内とは裏腹に、そのことばかりを望んでしまう。蔵馬、と。

突如、後孔に出入りしている指に、その場所に、ヌルリと舌のような生暖かい感触が走る。闇のなかいない筈の人の気配を感じ、枕の上で首だけを後ろに向くと、そこにはいる筈のない蔵馬がいた。一瞬、夢かと思った。あまりにも、蔵馬を求め過ぎたゆえの己自身が造り出した幻。

「ほら、指出して」

・・・、蔵馬の幻でも構わない。飛影は云われるがまま自らの指をそこから出していた。代わって、ぬるぬるした感触が後孔のなかを圧した。

「ひぃん、んっ・・・、あ」

口が裂けても云えないが、実は飛影は蔵馬にそこを、内も外も舐められるのが好きで堪らない。楔のように硬いそれとも違う、指先で扱われ弄らるのとも違う感覚と感触。内に練り込まれる唾液にさえも、いつも感じてしまうのだった。そこはいつしか、唾液がたっぷりと絡まり、蕾はとろりと解けてゆく。クチュ、と、イヤらしい音を追うように舌が抜かれる。

「クスクス、そんな物欲しそうな顔しないの。今あげるから」

白皙の双丘を割り開くと、ピンク色をした後孔が絡ませた唾液を光らせ妖艶に咲き誇っていた。そして、その後を待ちわびているかのようにピクピクと蠢いている。硬い楔をあてがい、ゆっくりと内を占領してゆく。

「あ、ぁん・・・、アアアー!」

太いそれが入って来たと同時に、あれほど来なかった波が一挙に押し寄せて来た。背を弓のようにしならせたかと思うと、竿の先端からは白濁した液がほとばしりシーツを濡らしていた。蔵馬と思うからなのだろうか。その判断力さえも、既にこの時飛影は消失していた。

「フフフ、先っぽ入れただけでイっちゃったね」

後はなすがままだった。ただ揺さぶられ、弄られ、嬲られ、声をあげることさえも追いつかないほど。

暗転は飛影自身さえ気づかなかった。





飛影は重たい瞼をゆっくりと開いてゆく。昨夜の“あれ”は夢だったのだろうか。まだ霞みがかっている脳内で、辺りを見渡す。そこは、昨夜同様の景色が広がっていた。しかし、自分自身でそこを掻き始めたこと迄は記憶にある。途端にカアッーと躰が熱くなってゆく。汚してしまったであろう、シーツやらなにやらを思い出した為であった。蔵馬が帰宅する前に、洗濯するなり処分するなりしなければ。そう思い、タオル生地のタオルケットを取り払う。が、しかし、そこで疑問と交差する。確か、タオルケットはずり落ちた、筈?よくよく見れば、己はいつもの黒い衣装を身に纏ってさえいた。恐る恐るシーツを探るが、染み1つない。

・・・、夢?

全部が、自分自身で造り出した幻覚だったのであろうか。それにしては、やけにリアルだった。躰に残る倦怠感や疲労感も。しかし、その甘い考えは次の瞬間に粉々に打ち砕かれた。

「おはよう、飛影。そろそろ起こそうと思ってたんですよ。朝食も造ってあります」

「・・・。蔵、馬!?」

酷使したとしか思えない声でもって、目の前に現れた美丈夫の名を呼ぶ。

「クスクス、そんな狐につままれたみたいな顔しなくたって」

・・・、夢、じゃなかった、のか?

未だ脳内で疑問符が飛び交うなか、眼前の狐はこの場に似合わぬほど優美に、また、妖艶に微笑をその端正な口元に浮かべた。それで悟ったのだった。いや、寧ろ、蔵馬は敢えてそうすることにより飛影のなかにある疑問をかき消したと云えたであろう。己がこの部屋に、蔵馬がいないこの部屋に来るかどうかの計略、を。出張だなどと真っ赤な嘘だったと云うこと、を。そして、この部屋でどういった己を見られるか、を。まんまと罠にはめられ失態を演じてしまい、矜持が傷つけられたのは云う迄もなかった。一時でも、目の前の奴を望んだ己自身への怒りも手伝い、今度は別の意味合いで躰が熱くなった。ベッドの隣にある小さな灰皿を思い切り蔵馬へと投げつけた。

「おっ、と。危ないなあー、飛び道具好きなんだから貴方は」

「貴様なんか大嫌いだ!」

それが、蔵馬を愛しいと思っている確かな証拠である。そう確信し、蔵馬は笑みを深めた。

「クスクス。本当、素直じゃないんだから、昨夜はあんなに素直だったのに」

「っ!・・・、あ、あれは!」

「フフフッ、いいよ、それでも。貴方が云えない分も、俺がたくさん云ってあげるから」

───愛してます、と。










Fin.
2012/6/20
Title By 確かに恋だった

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