- Awake Memo - | ナノ




The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.


2011/07/03Sun
迷走恋心
素直に云えない代わりに・・・



この狂おしい思いをあらわす術を知らない。いつ囚われたかなど、大した意味を成さない。気づけば、蔵馬だけを追っていた。これ迄馬鹿にしていた感情が、己のなかに育まれて始めていると気づいた際、その大きさに当然ながら困惑した。そして、恋愛感情であると確信し、恐れたのは侮蔑の眼差し。離れて行く蔵馬がはっきりと目に浮かんだ。それは、恐らく真実に限りなく近い現実。その時の絶望に似た感情をどう表現してよいか。ただ、ただ、恐怖に戦いた。生まれてこのかた味わったことのない恐怖に。

悟られてはならない。いつしか、飛影の瞳は生気を感じなくなっていた。他者から見れば冷淡に見えたことであろうが、それはあまりにも内在する熱さを隠してのことであった。

妖怪に倫理観や道徳心など必要ではない。気に入れば、男女の隔たりはない。が、蔵馬は違っていた。その類いまれな容姿のゆえの驕りか、これ迄、美しい女しか閨をともにしたことがない、と、自ら語っていた。男で、そうした不埒で邪な思いを抱いた者には、死をもって報いた。「当然だろう?醜い奴の相手をするほど俺がお人好しにみえるかい」口に弧を描き不適な笑みと、ゾッとするほど冷ややかな瞳ともに。

だからこそ、本心を云わないと心に決めた。それ迄以上に冷酷のフィルターを瞳に施した。見栄えもいいとはいえない己では、奴の気をひくだなんて、永久に有り得ない。仲間として認められた、そのささやかな立場を、自ら手離す行為もしたくはなかった。が、しかし、思いは膨らむばかりで終息する兆しさえ訪れない。いつしか自棄になってしまった。それとも、のし掛かる思いに耐えられなかったからか。

抱かれたいと望んだ。1度だけでいいからと浅ましく懇願した。だからといって、その後こんな肉体だけの関係を望んではいなかった。嬲る蔵馬から逃れる術を知らない。

「ほら、腰振って」

「んんッ」

手足を鞭で固定させられ、身動きが取れない。口には猿轡。声にならない吐息が漏れる。常に眉間に皺をよせる飛影ではあるが、更に深くそれは刻まれていた。苦痛と、与えられる快楽により。

「貴方が望んだんですよ、飛影」

熱い吐息に紛れ、それ以後は聴きとれなかった。ただ、一瞬、ほんの僅かではあったが、蔵馬の表情が切なげに歪んでいた。何故、と、不思議に思うよりも先に、蔵馬の硬い楔が挿入する。双眸に透明な膜が張られる。それは、蔵馬の律動により、雫となりシーツに伝え落ちる。捉えた瞳に誰が映っていたのか、飛影には判らない。

ただ、お前が好きなのに・・・





───心はいらないと貴方が望むから。

体だけを望むなんて赦さない。

ねえ、飛影、怖がらないでちゃんと見てその瞳で。

俺はいつでも差し出せるんだよ。貴方が真に望むものを。

貴方にはよく見える瞳があるのに、可笑しいね、それが見えないだなんて。

「淫乱」

だから、嘘をつく。貴方が気づく迄。

冷たい瞳のなかにあるものを2人とも知らない。

それは迷走のなかにある・・・









Fin.
Title By ≪プレゼント≫



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