The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.
2011/06/14Tue
耽溺と溺愛
飛影に対する思いに瞑想する・・・
貴方の隣が心地よいと気づいた際に、もう1つ気づいた思い。その思いに愕然となったことも。
馬鹿な。そんな感情など、自身のなかで枯れていたものと思っていた。いや、始めから備わっていないものであると、思いこんでいたのかも知れない。愛情、など。
何百年という歳月を経て、狐の獣から妖狐へと変貌を遂げた。その間、1人で生きた。誰とも交わることなく、誰にも感情を示すこともなく、ただ1人。その間、淋しいであるとか、悲しいであるとか、そういった感情は日に日に鈍摩していった。それを嘆き悲しむこともなかった。寧ろ、それらの感情が消え去ることに、喜びさえ感じていたのである。妖怪にそんなものは必要ではない。1人で良い。誰かと共にいることに、激しい嫌悪さえ存在した。孤独は心地よい。孤独こそ、自身が望むこと。
それは、もしかすると臆病の裏返しに過ぎなかったかも知れない。強がりの甲冑を心に施すことにより、より深い孤独から身を守っていた結果かも知れない。そして、それに疑義を抱くこともなかった。
それがどうだ。あまりの代わりように、似合わない微笑を口元に表した。それは、自嘲であった。
最初から好きであった訳ではない。愛しい、と、感じたことさえ皆無。寧ろ、出会いは最悪に近いものであった。味方であり、敵で。欺くこと、出し抜くことばかり。目的さえ叶えば、最終的に貴方を始末することもいとわなかった。それは彼も同様であった。侮蔑、嘲弄、蔑み。貴方の瞳はそれらによってみたされていた。一片の友愛などなかった。
いつからであろうか。そんな貴方の瞳に対し、苦しい、と、感じるようになったのは。辛い、と、感じるようになったのは。今まで無くしていたものに、右往左往する自身。感情的になる自身が可笑しく、気がふれたのではないかとさえ思っていた当時。
認めてしまえば、楽になれるのであろうか。自身でさえもてあますほどの思い。そして、悔しい、とさえ感じた。今まで、誰か1人を心の内に住まわせたことのない自身が、これほどまで恋焦がれるとは。
これが恋、なのであろうか。好き、なのであろうか。愛い、なのであろうか。何度も自問自答を繰り返し、ある日、彼の傷ついた血を見て唐突に理解したのだった。
貴方に傷をつける輩を赦さない。
貴方と対等に渡り合う輩に嫉妬する。
もう、認めてしまおう。
貴方を愛している、と。
すとん、とその全てが心に滑り落ちたのだった。すると、どうだ。自身はこれほどまで、感情的になる生き物であったのかと。
──彼が妹に向ける眼差しに苛々する。
──彼が幽助に見せる信頼に憤りを感じる。
──彼が躯に見せる敬愛に心が張り裂ける。
何故、それをこちらに向けてくれないのか、と、彼に詰ったことさえあった。彼の全てに降り動かされた。貴方を溺愛過ぎて、自身を見失う失態さえ演じてしまった。
愛しているからこそ、赦せなかった。酷い独占欲だ。醜い生き物だ。それでも、貴方だけが愛しくて愛しくて堪らない。他のなにかなど考えられないほど。
ねえ。判ってる飛影。貴方の居ない世界は、色褪せた世界だってこと。貴方が唯一だよ。
腕のなかで疲れはててしまった飛影に、口づけた。先ほどとうって代わり幼稚なキスで。
「愛してるよ」
こたえの代わりに、飛影は蔵馬に向かって手を差しのべた。気だるげに閉じられていた瞳が開かれ、蔵馬を優しく正視する。そこには、かつて彼を支配していた感情と代わり、新たな感情が存在を高らかに、そして、恥ずかしそうに主張していた。その、もどかしげな瞳に、熱が再燃しそうであった。
それは、きっと、蔵馬と同じもの。
愛してるという確かな思いだった。
Fin.
Title By 確かに恋だった
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