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The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.


2011/05/31Tue
下等恋愛
眠ってしまった飛影を前にして・・・



魔界の満月が2人を優しく包んでいた。蔵馬は根城の1つに飛影をそっと運び入れ、独自の色彩を放つ魔界の月に改めて視線を転じる。美しさだけではない月。時間やその時の気象、そして、階層などにより、人間界の月などより遥かにたきに変化を遂げる魔界の月。なかには、月の力をかり、変化を遂げる妖怪もいる。多彩な色を放つ魔界の月は、それは飛影のようであり、蔵馬はそっと笑みを浮かべた。その変化は、まるで飛影自身が己の本質を隠しているようにみえてならない蔵馬であった。無機質であり硬質のようでありながら、その実とても柔らかな飛影。冷たい印象を他者に与え、まるで剥き出しの刃のようで、しかし、本質は情がとても厚い。1度赦してしまった者に見せる眼差しは、どこまでも深く。彼を深く知れば知るほど、そのアンバランスに惹かれて行く。

常のことではあるが、黒龍波を放つと彼は冬眠状態へと突入する。そのあどけない寝顔。愛しくて堪らない。抱きしめたい。こんな無防備な寝顔は誰にも見せたくはない。どこかに閉じこめて、誰にも見せたくはない。それは、滑稽なほどの独占欲。が、実力を認めた相手には、惜しむことなく曝す。その事実に、毎回嫉妬の焔が絶えることなく燃え上がる。飛影に認められた者に。そして、認めた飛影にも。しかし、同時に、飛影だから仕方ない、か。とも、思う。

「ほんと、罪作りなんだから。貴方は」

聴こえてないと知りつつ、ついつい愚痴がこぼれ落ちる。

好き。足りない。愛してる。いや、まだまだ足りない。もっともっと貴方を。この思いをかたちにする言葉が見つからない。渦巻く黒い感情をどう表現すればいい。愛情も、浅ましい独占欲も、貴方1人。他者へ向く激しい嫉妬を抑える術も、貴方だけ。こんなにも、感情を揺れ動かすのは貴方だけだ。

判ってますか、飛影。

そっと、重なるだけのキス。唇は自然と彼の瞼、頬、鼻先、あますとこなく啄む。触れた場所から、この尽きない思いが全て伝わればいいのに。

切なげに蔵馬の目が細くなる。それは、他の誰にも見せたことのない、蔵馬であった。

貴方にキスをしたのはこれが始めてではない。こうして、貴方が眠りの園へと旅立った際、その溢れる衝動に耐えられなくなってしまう。貴方があまりにも無防備だから。だから、貴方は知らない。知る必要もない。でも、この気持ちに気づいて欲しい。そう、願うのはきっと傲慢なのであろう。

矛盾の塊だな、と、自嘲の笑みが蔵馬の顔に刻まれる。

ここの階層は、夜になると氷河の国と見まごうほど冷え込む。着ていた厚手のコートを飛影に優しい仕草でもってかける。いやが上に近くなる貴方との距離に目眩がする。理性の箍が、たったそれだけで外れてしまいそうで怖い。

キスだけじゃ、ほんとは足りない。貴方の肌を見たい。貴方の肌に触れたい。その白皙の肌に、自身だけの所有の跡をつけたい。そして、まだ見ぬ場所へと、熱くたぎる楔を。

「ごめんね、飛影。醜い俺で」

嫌わないで。

どこにも行かないでくれ。

黒い感情の裏で、弱く醜態な思いが平行する。それさえも貴方が与えてくれた思い。貴方を愛してから育まれた思い。それらを甘んじてしまうほど、貴方だけ愛しいくて。そして、苦しい。

今1度キスを贈る。柔らかな唇に、そっと指先を滑らせて思う。今、貴方が目覚めたならば、どう思うであろうか。蔵馬の眉間に、悲しげな皺が一筋刻まれる。でも、キスだけは赦して欲しい。これだけは誰にも譲れない。

「やはり、俺は傲慢で醜い、な」










Fin.
Title By 確かに恋だった



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