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The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.


2011/05/25Wed
残像
紫煙の向こうに嫉妬・・・



「貴様もか」

情事の後、ベッド脇にあるサイドテーブルに手を伸ばし、箱から1本取り出し、肺に吸い始めると、飛影の眉間にシワがよる。

意味を謀りかね、瞬きを数回し、ジッと彼の表情にきをくばる。煙が気にいらないのか、はたまた、それを吸う蔵馬自身が気にいらないのか、忌々しそうにゴロリ、と、向きを代え彼は呟いた。

「人間はみなセックスの後はそれを吸いたがるんだな」

その意味するところを咀嚼し、今度は蔵馬の眉間に剣が加わったのである。その表情は、氷よりはるかに冷たいものであった。彼が、自身に向けている思いなど、たかが知れている。こうして、部屋にきて、情事を楽しむことさえ、彼にとっては暇潰し以外のなにものでもないことを、その言質から明らかであった。

これほどの思いの差を目の当たりにしていて、なおも、彼を憎めずにいる自身は、おそらく、滑稽なのであろう。

「幽助はよかった?」

彼の向こう岸に見える残像にさえ、荒れ狂う心。蔵馬のこたえに含まれている嫉妬の成分に、飛影は気づきえなかった。おそらく、これから先もないであろう。例え、この思い全てを伝えたところで、飛影に一笑にふされることは判りきっていた。が、少しくらいの嫌みを云わないとおさまりきれないのも、又、事実であった。

「セックスの善し悪しなら、貴様のほうが気持ちいい」

「まあ、数はこなしてますからね」

たかだか、10数年生きてきた幽助に、これさえも敗北したとあっては。酸味の強い飲み物を飲んだ後のような表情でもって、蔵馬はそう首肯したのである。と、同時に、脳裏に幽助の無邪気な笑顔を浮かべながら、その首に手をかける。擬似的に、幽助を絞首刑に処したのであった。夢想のなかだけは自由である。誰にも侵せはしない。もし、蔵馬のその夢想が現実していたならば、幽助はこれまで、数100回は霊界へと旅立っていたことであろう。そうならなかったのは、その機会がなかったのと、なによりも、その結果がもたらす恐怖だった。思いのまま、幽助を殺しえたとしても、飛影がそれにより自身から離れてしまうことを恐れたゆえであった。

「・・・美味いのか、それは?」

蔵馬は逡巡した後、半分になってしまったタバコを彼の唇に挟み入れた。

本当のところ、飛影が意図するところを蔵馬は判っていた。幽助の嗜好に興味があるのであって、自身への理解ではない、と、いうことに。それでも、蔵馬は飛影の濡れた唇にあてがったのである。内心の複雑な思いを押し殺し。

「ゲホ!・・・苦い」

「そう?美味しいよ」

飛影にまとわりつく煙の行方を見据えながら、蔵馬は思う。

その苦い苦痛が俺の思いでもあるんだよ。

飛影からタバコを取り戻し、その唇に自身のを重ね合わせた。柔らかな彼の唇から、始めてタバコの味がした。










Fin.
Title By 確かに恋だった



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