The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.
2010/12/18Sat
溺愛関係
愛しあってるからこそ、1歩が踏み出せない・・・
まるで猫だな。
蔵馬はソファーの上で丸まっている姿の飛影にむかい、そう、胸中で吐息しながら思わずにはいられない。
魔界での生活に飽きれ、フラフラとやって来ては、気儘に餌を食べ、寝床のように日のあたる場所でゴロゴロするさまは、まさに野良猫そのもの。
「全く、俺が自制心が高いことに感謝してよ、飛影」
知らないとは罪深いんだよ。
愛用しているフリース素材の膝掛けは、飛影の真下でいくつものしわの波をたたせながら丸まっている。ギュッ、と、端を握りしめ、普段の鋭利な彼は霧消しており、それとはうって代わり幼い表情が安堵と安らぎのなかにいることにほっとする、それと同じように、この腕のなかに抱きしめたい衝動にかられるのだった。
まさか、ね。
飛影が自身の匂いのするものを自ら求める訳ない、か。
希望や夢物語は、現実ではないからこそ甘く芳しいものなのだ。
やれやれ、と、肩をすくめ、蔵馬は飛影の上に今まさに着ていた上着を脱ぎそれをかけてやった。
いやが上に近くなる彼との距離に、一瞬、キスしても気づかないのでは、と、脳裏に宿る。ちらついた欲に従い、飛影の唇に自身のそれを近づけた蔵馬であった、が、寸前のところで思いとどまった。仲間。そういう位置に彼のなかにいるであろう自身を、壊したくはなかったのだった。
女々しいのか、それとも、臆病なだけなのか、蔵馬自身にも定かではなかった。
1つ、ため息をこぼし、彼の光沢のある黒髪を優しく撫でた。
「おやすみ、飛影」
彼を起こさないように気配を殺し、部屋をあとにする。それゆえに、蔵馬は気づかなかった。蔵馬が部屋をあとにした直後、飛影は眠れなかった瞼を開け、非難するかのように呟いたのだった。
「臆病者め」
蔵馬の温もりが未だある上着を握りしめ、飛影はそっと、その上着に重ねられなかった唇を落としたのであった。やがて、蔵馬の匂いに満たされた飛影は、今度こそ、夢のなかへと移行した。その顔は、どこ迄も満たされた顔だった。
Fin.
Title By 確かに恋だった
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