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The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.


2013/04/24Wed
ホワイトロマンス
飛影が人間界へとゆく訳・・・



今夜は降りそうだ。灰色をした暑い雲なのなかでは、今まさに雪を造っている頃だろう。こんな夜は、決まって彼が魔界から訪れる。極寒の地氷河の国で産まれたにも関わらず、彼は雪が嫌いなようだ。魔界の雪と違いどことなく暖かみのある人間界の雪であっても。確固たる理由は聴いたことがないので憶測でしかないが、雪を見ると彼女達を思い出されるからなのだろう。寒いから、と、尤もな理由はおそらくは嘘の領域に属するのだろう。嫌いだと云いながら、なにかを思うようになにかに祈りを捧げるかのように、降り続く雪を飽くことなく見つめて。その横顔がひどくひどく・・・、気に入らない。

「やあ、来ると思ってましたよ」

無言のまま肩に積もった雪をはらう。触れることを極端に嫌うくせに、雪の日だけは素直に蔵馬に従う。それが、いっそう蔵馬に苛立ちを募らせているとも知らずに。

「ココアにしますか」

やっと、「ああ」、と返事を返えってきた。しかし、窓際に直立したまま、空を仰ぎ見続けている。その後ろ姿がやけに儚げで、蔵馬は見えない場所で苦々しく舌打ちした。一瞬にして躰中毒々しい血が沸き立つ。尚も彼のなかで生き続ける2人。1人は彼の代わりのように死んで、もう1人は異国ともいえる人間界の住人。どちらも遠い存在なのに、これからも勝ち目は皆無で。恋愛は勝負事ではないと判っていながらも、どうしてもその2人の存在自体を消去したいと望んでしまう。躰だけでは足りないよ、飛影。好き過ぎるとその存在自体が憎たらしくなる。愛おしい気持ちとは裏腹に、跡形もなく切り裂きたくなる。

「そんなとこに突っ立ていたら風邪をひきますよ」

優しい言葉とは裏腹に、蔵馬の口調は毒薬が込めらていた。そのことに飛影は気づき訝しい顔を返す。

「なにを怒ってるんだ」

「別に」

怒ってるとは少し違う。子供っぽい虚栄心が、自身で嫌になっただけ。気取られたことへの驚愕より、自分自身の未熟さを露呈したようにも思え恥ずかしくもある。貴方の心が目に見えるものだったならば、もう少し自身の気持ちを制御出来たかもしれない。が、所詮人の心は形には出来ない。人間然り、妖怪然り。それでも、貴方の全てが知りたい、貴方の全てを手にしたい。結局、惚れたほうが負け、か。どんなに憎たらしい存在でも、貴方の大切な1部。貴方の血肉の1部なのだから。

「・・・。寒い」

「はいはい」

彼の為にエアコンをつけ、フリースのタオルケットを差し出す。しかし、憮然としたまま微動だにしない。心なしか顔色が悪い。なにかを云いたげであり、それを躊躇しているようにも見えた。

「どうかした」

「だから!さ、寒いと云ってるだろう」

白皙の頬を紅潮させ瞳を潤わせ、こちらを睨みつけていた。そこに至って始めて彼の真意を知り得、嬉しさで口元が自分自身でも判るほど綻んだ。そんな表情反則だよ飛影。

・・・馬鹿だ、俺は。ホントの馬鹿だ。こんなにも彼はこちらを見てくれていたのに。あの2人とは別に、このどうしようもない俺をも思っていてくれた。そのことがこんなにも嬉しい。

彼なりの甘えのサインだったのだ。今のいままで気づかなかったとは、我ながら情けない。わざわざ雪の日を選んで、ここに来てくれていたのに、ずっと、ずっと。その意味するところを気づこうともしなかった。今にして思えば、恐らく半分は自分自身に向けての嫉妬であったに違いない。まさか、自分もその対象になるとは思いもしなかった。嬉しい誤算だ。

「クスクス。雪降ってますものね」

でも、素直になるには自身は歪んでいることもまた事実。気づいていながら、敢えて釣れない態度を示してみた。飛影の今の態度は、普段は素っ気なく気まぐれな猫が、甘えて擦り寄ってくる様に似ていてなんだか可笑しくもある。案の定、グッと詰まらせわなわなしてる様が可愛い。あまり焦らすと、この黒猫はそっぽを向いてしまいそうだ。

彼がなにかを云う前にその躰を抱きしめた。薄紅の唇にそっと自分自身のそれを重ねる。

「どう?温まった」

「・・・、まだだ」

「全然足りない」、付け加えられたセリフに狂気乱舞する。掠れる声、震える声が蔵馬の耳を刺激的に誘う。

「仰せのままに」










Fin.
Title By HOMESWEETHOME



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