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The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.


2013/04/11Thu
空冥の泣き出した夜
蔵馬の突然の行為に・・・



嗚呼、その顔。苦悶に打ち拉がれていながら尚もこちらを睨みつける。反骨精神多せいな気高い孤高の獣。そんなんだからこちらの嗜虐心を煽るとまだ気づいていない。

「ちゃんと入れてきたみたいですね。云いつけを守って偉い偉い」

蔵馬は殊更含みのある云い草を放った。それに対する飛影の反応は、蔵馬の期待以上であった。

「巫山戯るな!」

「とんでもない。至って真面目です」

狂ってなどいない。ただ目覚めただけのこと。抑えていた嫉妬は、かたちを代えただただ貴方を襲う。黒い焔となって。他人からみたら滑稽に映るか、それとも狭量者の織りなす馬鹿な地獄と映るか、しかし、どちらにせよ蔵馬は今更この茶番を止めるつもりはなかった。口元に笑みを浮かべつつ、手もとのスイッチを押す。慣らしなど必要ない、とでも云いたげに蔵馬は問答無用で最強を選択した。途端に、飛影は声を震わせながら膝を屈した。

「クスクス。いい格好ですね飛影」

「・・・、ぁんん、う」

「それにとてもいい声で啼いてくれる」

絶対的な支配者を前にしても、飛影は怯むことなく蔵馬を睨み返した。そのルビーを彷彿とさせる瞳には、1点の曇りもなかった。何故、蔵馬がこんな真似をしているのかも理解してはいない様子であった。

「クスクス、そうこなくちゃこちらとしても虐めがいがないですからね」

飛影は膝を折り、くの字の姿勢で悶え苦しんでいた。突然。そう、全くの突然だった。前触れなどどこにもなかった。朝、あり得ない場所に違和感を覚え、恐る恐るその場所を開き、驚愕した。排泄器官であるところに奇妙な突起物を瞳に捉えた時、文字通り血の気が引いた。なにがなんだか判らないまま辺りを一瞥すると、ベッドの上に1枚の紙切れを発見した。魔界文字で書かれたその内容に、更に驚愕した。“人質”に“脅迫”。雪菜に兄と知らせるだけならばまだしも、幽助にこちらの思いを知らしめると。どちらをとるか。一瞬、そんな保身的な誘惑にかられたが、最善はどちらも守ることだと自分自身を納得させた。雪菜も思いも、自分自身の矜恃も。結局飛影はそれを抜くことなく、手紙を出した本人の前にあらわれたのだった。そして、あの云い草。怒るなというほうが無理である。一体なんの為にこんな馬鹿な真似をしているのか、理解に苦しむ。寝ている間にこんなものを挿入され、そのままの格好で人間界に来なければ2人にばらす。殺意を込め睨みつけても、蔵馬からの反応は皆無に等しい。ただ、凍てつく瞳でこちらを見下ろし、唇だけが奇妙に笑っていた。その様は暗黒の覇王の如く、不遜であり恐れを知らぬ危険な眼差しであった。

「何故、こんなこと」

「うーん?気まぐれと自分の欲を満たす為かな。最初は彼女を殺そうかと思ったんだけど、すぐ犯人俺だと判るでしょう。幽助も同様。つまらないじゃない?それじゃ。だからさ、手っ取り早く貴方を傷つけられるのはなにかな?て、考えてさ、じゃ、それを脅迫のネタにしようって思ったわけ。クスクス。そんな判らないって顔しないでよ。やってる本人は真面目なのに」

「こんなものを!」

「その割に感じてるみたいだけど。シミ出来てますよ」

「・・・、俺が貴様になにをした」

「なにも」

そう。なにもしてくれなかった。感情というもの全て2人だけに捧げ、他は貴方のなかには芽吹くことはなかった。次第に、自身の感情だけが肥大し、出口さえも塞いだ。まさに四面楚歌。後は、どす黒い嫉妬がとって代わった。

こんなにも愛しているのに。こんなにも貴方が好きなのに。それなのに、報われない自身はなんと滑稽なのだろうか・・・

いつから貴方を愛していたかも忘れるほど。好きになって欲しいという夢は、結局夢。そんな現実的なことは永遠にこないのだと、日々思い知らされていった。

「心は要りません。だから、その躰を俺だけにください。安心して、男でも感じる躰にしてあげますから」

「・・・。断る!」

「クスクス。そう云うと思った。でも、いいの、俺にそんな強気な態度とって」

「バラシたければそうしろ。貴様に屈するくらいなら死を選ぶまでだ!」

「そう。残念。せっかく妥協案を提示したのに。じゃ、そのまま苦悶したまま旅立つことですね。考え違いしているみたいですから訂正しておきますが、俺は貴方の屍体だって喜んで抱けますよ」

その言葉に飛影は絶句した。目の前の男は、はたして己の知っていた男なのであろうか。狂気という名の漆黒の闇が、この時飛影の全てを覆った。そして、絶望という文字が、飛影の頭の中を過ぎった瞬間でもあった。紅く輝く瞳から、透明な雫が落ちてゆくことも気づかないまま。悟らざるを得なかった、蔵馬を冥界の覇者にしたのは、己だということを。出口のない暗い闇に堕ちた己たち。もう、日は登らない。朽ちるまで、蔵馬の愛玩具。死しても続く性奴隷。これは、蔵馬を愛せなかった罰なのであろうか。それとも、・・・

屍体ならば心はない。貴方に苦しめられることも、醜い嫉妬に焼かれることも。

「さて、手始めにその躰に入ってるもの自分でとって見せて、俺の前で。じっくりと代えてあげる」

蔵馬は既に自分自身の退路を絶っていた。身も心も。堕ちるところまで、貴方を手放したりはしない。憎しみたければそうするがいい。蔑むならばそうするがいい。呪詛が叶うと思うならばそうするがいい。全ての増悪ごとこの漆黒の焔で燃やして消してやる。俺の愛は、そんなことでは色褪せることはないのだから。

「さあ、その白い躰を俺に捧げなさい」










Fin.
Title By たとえば僕が



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