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The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.


2013/03/10Sun
恋は否もの味なもの
群がる狼たち・・・



蔵馬は飛影の部屋から出ると同時に、時雨の物云いたげな顔と出くわした。云うべきかどうか未だ躊躇している様子である。云いかけては唇を閉じ、しかしまた重々しいため息を吐き出す。やはり、1度はっきりと云っておかねば、この蔵馬は際限がないことも、短い付き合いながらも時雨はよく蔵馬の性格を知っていた。それに、過去には派手な醜聞もあり、その内容は、男ならば羨ましがるか、自分自身を鑑みて嘆いてしまいたくなるかに分かれるのではないだろうか。女はどうかというと、才智に長け、美貌もその辺りの男共とは比べるのもバカバカしいとなれば、蔵馬を一時とはいえ恋人に出来たプライドからなのか、あまり悪い噂は聴かない。しかしながら、泣かせた女の数、(なかには男もいるというから恐れいる。)は星の数を数えた方がいいとのこと。その噂を聴いた時、時雨はうっかり同意してしまった。そうではないか、蔵馬に泣かされた女に一々惚気やら愚痴やらを永遠とも思える時間を拘束されるより、星を眺めて清らかな気持ちに誰だってなりたいに決まってる。他人の色恋に全く興味のない時雨等にとってはまさに地獄と同様である。

「少しは自重してくれぬか、蔵馬」

遠回しに、あの際の飛影の声がするのだ、と、抗議に出た。ばかりか、飛影の声を聴きたいが為に、蔵馬が訪れた際の飛影の部屋の扉の前でのポジションとりの凄まじいこと。いつであったか、あまりの押し合いへし合いの状態に、飛影の部屋の扉がその圧力に壊され、なかが丸見えの状態になったことがあったほどだ。が、蔵馬が口角を絶妙な角度で微笑みを造りつつ振り返ると、情けないことにみな悪寒を抱え脱出してゆくのだった。ちなみに、飛影の両隣り部屋は空室にした。蔵馬からのたっての要望でもあったが。「俺が傍らにいない時は危ない」、尤もな理由であるが、ならば、セックスの際の声も充分危険に思うのは気のせいであろうか。そもそも、ここでするのであるならば、予め結界をはる等の対策くらいはして欲しいと望むのは贅沢な望みであろうか。しかしながら、百足をこれ以上傷つけられては躯様に申し訳ない。これ以後、教訓となったのか、はたまた、自らの命大切さか、扉に張り付くのは1人につき10秒迄、というバカバカしいルールブックが百足の戦士たちの間に出来たのだった。

2人が愛しあうのは一向にかまわないが、翌日、パトロールに支障をきたす。パトロールの人事権を有している時雨にとっては、頭の痛いことこの上ない。それは、飛影だけに留まらないのが実状だ。哀しいかな。みな、昨夜の2人、特に、飛影の艶やのある声を各々がそれぞれ膨らませ、イタシテイル!お陰で、ヘロヘロになって百足の屋上へ続く会議室へと遅刻ギリギリに来る輩があとを経たない。飛影がそのまま翌日休日ならばまだよいのだが、その妖艶な気だるさを抱えて会議室等に来られたりすると、事態は更に悪化する。締まりのない顔でみな飛影を上から下迄見つめたかと思うと、我先に厠へと列をなす。以前、躯様はそれを面白可笑しく、「あれは視姦だな。気づいてねえー飛影もバカだがな」全くもって躯様の仰る通りだ。思わず突っ込みたくなる、「昨夜もオカズにしたであろう!」と。躯様は、はっきり云ってあてにならない。ばかりか、愉快愉快!と、事態を重く見てくださっているご様子ではない。酒の肴にするのみ。結果として、時雨が迷惑を被るという図式がここに成立するのであった。

「魅力的な恋人を前に、それは無理」

にべもない。口で勝てる相手ではない。いや、口だけではなく、単純に妖力も上回るからには性質の悪いことこの上ない。力技で従わせるのが1番楽であるが、それが叶う相手ではないことが、こんなにも歯痒いと思ったことは過去においても時雨には無かった。

「お主だけの問題ではないのだ」

狐が多情であることは承知しているが、少しは周辺への配慮を考えてヤって欲しい。それでなくとも、今では、蔵馬が百足に来るイコール、飛影の部屋でセックス、と、いうまったくもって有り難くないことがここ百足では定着しているのだ。この為、飛影を自分自身の妄想のなかでヤリまくる馬鹿がここ数ヶ月上昇の一途を辿っている。ある意味下剋上気分を味わえるのであろうが。ここは、征服欲が強い者たちが犇めき合っているのだ。それでなくとも、いい女が少ない百足。あの生意気極まりない飛影が、蔵馬との閨では別人か、と、疑いたくなるように代わる。漏れ聴こえる声は、飛影の普段を知る者ならば、自身の耳を疑ってしまうほど甘く切なく響く。そればかりか、その後の姿が非常に不味い。時雨でも、犯罪者が増えるのは致し方ないと呆れたほどである。それほど迄に、飛影の情事後の艶は凄まじい。後のことであるが、ツンデレという奇っ怪な言葉を時雨が知る切っ掛けになったのは、正にここからであった。これらの様々な理由から、再度時雨は蔵馬に対し苦言する。

「牽制のつもりか」

「だって、可愛いいんですもん彼」

やはり。周囲に知らしめる為にわざと盛大?なセックスに勤しんでいたのか。呆れつつも時雨は蔵馬の表情から、それらのことを読み取ったのであった。

「恋敵を増やすだけのように儂には思うが」

「フム。ちと、それは不味いかな」

時雨のセリフになにか思うことがあったのか、蔵馬は暫し考えこむ。が、しかし、その応えを聴き絶句し且つ、蔵馬には常識が通用しないのだということを改めて認識したのだった。

「暫くは飛影に“猿轡”はめて声はおさえますよ。それじゃ」

・・・

違う!儂の云いたかったことはそんなことではない!なんの解決にも至ってないではないか!そう、慌てて訂正を付け加えたかったのだが、その当の本人は颯爽と百足を跡にした後の為叶わなかった。一気に老けこんだかのように、時雨はその場で頭を抱え、自分自身の軽率な発言を悔いるのだった。

猿轡なんぞしてヤられた日には、もっと妄想をかきたてる輩が続出するのではなかろうか、・・・

やれSMだなんだと。そこ迄考え、ふと、時雨の脳裏にとんでもない飛影が映し出された。猿轡をさせられ、蔵馬の薔薇の鞭でその白皙の肌に赤い血が流れる様が。

「・・・。儂迄もが毒されるとは。恐ろしい2人だ」










Fin.
Title By 確かに恋だった



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