The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.
2013/02/13Wed
鎖に繋がれた心と体と血
自らを傷つける飛影・・・
嗚呼、また。気づくと彼から血の臭いが漂う。今日もまた。原因は判っていた。だから、無言でそれを手当てしている。しかし、少しばかり腹たつ。自分自身を斬る“彼”が。死にたがりな彼。ことある事に、彼は自分自身の手首を斬る。苛々しているだとか、その理由はたわいないものばかり。しかし、真の理由は多分自身に帰す。不毛な関係を彼が気に病んでいることは前々から承知していた。秘事は甘美を通り過ぎると毒にもなる。だが、彼を手放すことは出来ない。例え、彼の心がこのまま衰退したとしても。
「包帯きらしてますよ今日は」
僅かばかりのそれは抵抗であったのだろうか、言葉を紡いだ蔵馬自身にも定かではなかった。
「・・・。いい、舐めておけば治る」
そんな治療法などなんの根拠にもなりはしない。呆れてため息をつき、仕方なく絆創膏だけを貼り付ける。不格好極まりないが、彼の手首自身よりははるかにましであろう。至るところに、切り傷がある。手首だけに留まらず、躰のあちらこちらに。自身で手の届くところにはその痕跡が蝕んでいた。
「駄目ですよ飛影」
貴方の躰は貴方だけのものではない。誰が愛しい者の傷を見て喜ぶというのか。
嗚呼、此処にいたな。蔵馬は自嘲ともとれる笑みを浮かべた。その傷口に自ら赤い痕跡を辿っている事実に思い至った為でもあった。セックスの際、その傷口さえ愛しいくて。だって、この証は彼の動揺の軌跡。振り回されることに苛立ち、そんな自分自身を歯痒く思い、結果、自分自身を傷つけてゆく。傷口が治りきってない場所を殊更拡げるように嬲る自身は、飛影同様にあるいは壊れているのかもしれない。
バカだね、貴方は。こんな狂ってる奴のことなどさっさと見捨てればすむものを。そう、もう1人がどこからともなく聴こえてくるようであった。昔の貴方ならば、きっと一刀両断にしていたに違いない。でも、優しさを手に入れてしまった貴方。最初から持ち合わせてはいた。しかし、魔界での生活では無用の長物であったそれを今の貴方は持て余し、どのように表現するのか判らず、結果、自分自身を追い込んでいるようであった。
「ヤらないのか」
「ヤらないと不安」
逆に問いかけると、どうしていいのか判らないといった表情になり俯く。躰だけを預ければ、それでことは足りるだろうと、安易に差し出すから。それがこの結果を生んだことにまだ気づいていない。貴方が手に入れたその優しさは、どんな刃物よりも鋭いものだった。貴方にも。そして、自身にも。
別れれば、きっともう彼の躰には傷はつかないであろう。でも、もう遅い。貴方に出会ってしまったのだから。たった1人の貴方に。
きっとこれからも、貴方の躰からは血臭が途絶えないであろう。それでも、いい。見えない鎖は貴方をこれからもずっと縛り、苦しめてゆく。その度に貴方は自らを傷つけてこの恋を実感してゆくのだろう。その甘美なる貴方の血の臭いは、自身の狂気を和らげてくれる。それと同時に、貴方への愛を、貴方自身の恋慕をも確認出来る。だから、その最後の1滴迄。
俺にください───・・・
Fin.
Title By HOMESWEETHOME
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