31


「あれ、翔音クンは1人なんだ?」

「……気づいたら1人になってた」





つまり迷子か。





「じゃあ俺たちとまわろうか。翔音クンがいたほうが芹菜チャンも安心するだろうしね」

「………安心?」

「え……何それ、どういう意味?」

「そのままの意味だけどー?」




にこーっと笑う新井くんに少し疑問を持ったが、3人でまわるのは賛成だ。





私たちは翔音くんも一緒にまわることにした。















「ひぎゃ……っ!!」


「ふぉぁ!!」


「あたぱあああああ」







「……それ悲鳴なの?」





暗闇を進んでいく中、脅かされるたびに悲鳴をあげる私。



そんな私に翔音くんの呆れたような一言。




悲鳴だよ、悲鳴以外のなんだって言うんだ!!






「……あ、あれ?そういえば新井くん、は?」




何故か姿が見当たらない。




「……いないね」

「え………ま、まさか迷ったのかな……」

「………」





翔音くんの次は新井くんが迷子ですか!!


どうなってんのこのお化け屋敷の構造はっ!?






「な、なんか……迷子になりやすいのかな……ここって」

「……さあね」

「……みんなも、迷ってたりして……」

「………」

「あ、でもみんなお化け屋敷好きそうだったから、大丈夫……かな」

「………」

「いざとなったら、脅かし役の人に聞くってのもあるし………、ちょっと夢壊しちゃうけど……」













「……よくしゃべるね」


「…………え?」





前にいる翔音くんがこちらに振り返った。





「……そんなに怖い?」



私は一瞬言葉につまった。


この場合どう答えればいいのか。





《こういうときくらい素直になりなよ》





「……怖……い、」





さっきいわれた言葉が頭に浮かび、気づいたら私は口を動かしていた。







「……今日は素直だね」

「う゛……っ」

「前に夜の学校いったときは意地張ってたのに」

「………そ、それは……」





素直に答えたはいいものの、普段こんなこと言わないから無茶苦茶恥ずかしい!!




私のキャラじゃないこんなのはっ。







「……はやく出ようか」

「……え?でも、ここ道がわかりづらいし……また迷ったりはぐれたりで……」







すると、翔音くんはパシッと私の手首を掴んだ。







「……もし迷ってもこれならはぐれないでしょ」

「……!!」





そしてそのまますたすたと歩き出した。



当然私も歩くはめになるんだけど……。






「ちょぉ………、かっ翔音くん……っ!?」

「……何?」

「て、ててっ手……、手!!」

「………ててって?」






うわああ伝わってないよ馬鹿ああああ!!



手だよ手ェェェェ!!





なんでこう物事ストレートにいくのっ、いろんな意味で緊張するじゃない!!






私の心の叫びも虚しく、翔音くんは手を離してくれない。





……出るまでこのままなのかな。


う………、それは恥ずかしい。






「あ」

「……え、何?」




翔音くんの声に顔を上げると、少し先に出口の明かりが見えた。


やった、やっとでられるんだ!!




「はやく出よう翔音くん!!」

「……ん」




私は出られる嬉しさにさっきまでの恥ずかしさも忘れて、今度は私が翔音くんの手首を掴んでいた。


そして小走りで出口に向かった。














のがいけなかった。







出口付近に来た瞬間、天井からグロテスクな生首が釣り下がってきたからだ。








「ひぎゃあああああああああ!!」

「っ、ちょ……!?」




私は翔音くんの手首を掴みながら恐怖のあまり猛スピードで出口へと駆け抜けた。



「はぁ……はぁ……、」

「………っ、」





なんだろう、今までで1番速く走れた気がする。


人間ってすごいや。





「はぁ……まさか最後にあの不意討ちとは……」





まださっきの生首が頭に浮かぶよ。

ああ気味が悪い。







「芹菜ーっ!!」




玲夢たちがこっちにかけてきた。





「あ……、れ、玲夢……」

「……っていうか芹菜も翔音くんもなんでそんなに息切れしてんの?」

「え、あ………あは、はははは……」






私はとりあえず笑ってごまかした。



だって生首が怖すぎて逃げてきたなんていえないじゃん?









「ねえ芹菜チャン」





玲夢が翔音くんをつれてみんなのところにいったあと、新井くんは何故か私のもとにきた。





「な、何……?」

「素直になってよかったでしょ?」

「……え、」





“なんのこと”と思ったけど、1つだけ思い浮かんだのは、私が翔音くんに“怖い”って打ち明けたこと。




そういえばあのとき新井くんはいなかったはず、だけど……。





「……エスパー!?」

「頭大丈夫?」





うわ、真顔でいわれた!!





「だって俺がいたら素直になれないと思って」





いつものニコニコ顔でいう新井くん。



もしかして、わざと迷子になったってこと?




……なんのために?






「うーん、素直な芹菜チャンを見てみたかったからかなー、面白そうだし」

「うわああああ勝手に人の心の中を読むな!!プライベートの欠片もないッ!!」


「プライバシーね」







新井くんが何をしたいのかさっぱりわからないが、ここで玲夢たちに呼ばれ、会話は中断した。





おっと、そうだ、今は遊園地にきてるんだ。

もっと楽しまなきゃ損するよね!!





次は何に乗ろうかなあ。



31.私で遊ばないでください

(先輩、次何に乗ります?)
(ジェットコースターにしようぜっ!!)
(わかりました、じゃあ昼食にしましょう)
(俺のはなし聞いてるッ!?)

((……さすが桐原くんだ))


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