◎ 31
今日は待ちに待った遊園地にいく日。
前日にちゃんと準備してから寝るようにした。
明日何着ていこうかなあなんて女の子みたいなことは(女の子だけど)考えてないけどね。
目覚ましもセットしたしこれで完璧!!
そう思って私は寝た。
「……なのに何で寝坊するの」
「だってええええ!!」
ただいま翔音くんと走っている最中。
待ち合わせ場所は駅だから、そこまでとにかく走る走る。
「目覚ましかける時間間違えちゃったんだよおおおお」
「……馬鹿だね」
「うぐっ」
あーあ、完全に遅刻だ。
これはもう遅刻癖がついたなきっと。
「………最近芹菜って遅刻多いよね」
「ゴメンナサイ」
駅についたらまず玲夢に怒られた。
「目覚ましかけてる?」
「うん……でも今日はかける時間を間違えました」
「……芹菜さんってわりと真面目にみえるけど案外馬鹿なんですねー」
可愛らしい笑顔で真っ黒いことをいう柚子。
うん、でも今の私なら何いわれても反論できないいいい!!
「まあまあいいんじゃない?別に遊園地が逃げるわけじゃないしね」
「あ、新井くん……!!」
わあああなんて珍しく優しいんだこの人は!!
「じゃあ1番最初にお化け屋敷入ろうか」
優しくなかったああああ!!
電車に乗って約1時間で遊園地に着いた。
楽しみなはずの遊園地なのに、私への罰ゲームなのか最初にはいるのはお化け屋敷らしい。
無理、ほんとに無理。
脅かされるってわかってるはずなのにそれでも怖い。
自分が脅かし役なら問題はないけど、される側は駄目だ。
きっと女じゃない奇声を発する。
「うわあ結構並んでるねー」
玲夢がお化け屋敷の列をみて驚きの声をあげた。
「あ、でもよ、待ち時間40分って書いてあるぜ!!わりとはやくはいれそーじゃんか!!」
「ほんと?じゃあさっさと並んじゃおっ!!ほら、芹菜もはやく来なって!!」
どうしてあんたらそんなに楽しそうなのおおおお!?
私への配慮はないんですか!!
「じゃあくじ引きで誰とまわるか決めよーぜっ」
ジャーンという効果音がつきそうな感じで橘くんが出したのは割りばしだった。
「わざわざ用意してきたんですか橘先輩」
「おう!!これなら不公平とかねーだろ?」
「貴方は馬鹿ですか」
「ええっ何でだよ!?」
桐原くんのいいたいことはわかる。
普通遊園地に割りばしのくじ引き持ってくる人いないと思うよ。
まわりたい人同士でまわるだろうしね。
けどせっかく作ってくれたこともあり、私たちはそれぞれ1本ずつ引いていった。
「翔音くんは何色だった?」
「……黄色」
「黄色かあ、私は赤だから違うみたいだね」
「芹菜チャンは赤なんだー、お化け屋敷にはいるの正解だったかもね」
にこにこしながらこちらへ来た新井くん。
手に持っている割りばしの色は赤だった。
……え、マジ?
くじ引きの結果、私と新井くん、翔音くんと柚子と桐原くん、玲夢と橘くんという感じになった。
うまく男女はわかれたけど……。
そっか、私は新井くんとなんですね!!
まさにお化け屋敷入ろうとかいった元凶じゃないですかあああ。
「じゃあ俺たちも入ろうか」
「え」
いつの間にか順番がきていて、ほかのみんなはすでにはいったらしい。
……行動が早すぎる。
「………帰ってもいいですか」
「駄目に決まってるでしょ」
にこにこしながら入っていく新井くんに、私は着いていくしかないのだ。
「ま、真っ暗だ…………」
「そりゃあお化け屋敷だからねー」
その言葉どおり、お化け屋敷に明かりなんてほぼ無いに等しいから不気味さが増して気味が悪い。
でも怖いくせにあたりを見回してしまうという、人の悪い癖。
もちろん私もその1人。
足取りも悪いし、本当に最悪である。
「……随分ビクビクしてるね」
「し、してないしっ」
「芹菜チャンてほんとにこういうとこは駄目なんだ?」
「だ、だだ駄目じゃないしっ」
「へー?」
さっきからずっとにこにこ顔をやめない新井くん。
面白がってるもしかして!?
「こういうときくらい素直になりなよ」
「……………」
「怖いんでしょ?」
「っ、怖いよ、真っ暗だし……怖くないほうがおかしいわ!!」
こうなったらもうやけである。
「さすが、芹菜チャンは面白いねえ」
「ちょっと!?私は本気ですよ!?」
「わかってるよ。そんなに怖いなら手、繋ごうか?」
「きっと恐怖で握りつぶすと思うよ」
「……そこは“うん”っていったほうが可愛いのに」
悪かったな、可愛くなくて!!
ひたすら真っ暗な中を進んでいく。
コツコツという足音だけがあたりに響く。
このお化け屋敷はいくつかのルートがあるみたいで、道を変えれば何通りかの楽しみを味わえるらしい。
私にとってはそんなサービスいらないけどね!!
そして、本日何回目かの分かれ道。
「芹菜チャン、次どっちいく?」
「出れるならどっちでもいいぃぃぃぃっ」
「クス……ッ、はいはい」
私はもうほとんど投げやり状態であるが、とりあえず右の道を進んだ。
通路が狭く、1人ずつ進む程度の幅しかない。
私は新井くんの後ろに着いていく。
「……ね、ねえ……やたら長いよね、このお化け屋敷……」
「そりゃあちゃんとした営業のものだしね」
「出口……まだかな?」
「さあ?」
鼻歌でも歌いそうなくらいのテンションで、さらっと答える新井くん。
その度胸、私によこせ……っ!!
狭い通路を進んでいくが、まわりには壁と小さな蝋燭形のライトしかない。
それがかえって不気味で私は身を縮こませる。
ボフッ
「ふぶっ!?」
前を見ていなかった私は、立ち止まっていた新井くんの背中にぶつかった。
う……、鼻打ったぁぁ………っ。
「……翔音クン?」
「…………え?」
顔をあげると、確かにそこには何故か1人でいる翔音くんがいた。
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