30


《遊園地かー、芹菜ってばいいこと思いつくじゃん!!》





帰宅したあと、私はリビングのソファーに座って玲夢に電話をかけた。



だいたいいつもこういうまとめ役は玲夢だから、彼女に電話すればいろいろ提案してくれると思ったからである。






「もしいくならいついこうか?」

《うーん…学校は今週で終わりだから月曜日にしない?週末だと混んじゃうし》

「ああそうだね、平日のほうがいっか」






詳しいことはまた連絡するということで、電話を終えた。



みんな都合が合えばいいんだけどなあ。







「……誰と話してたの?」




後ろから翔音くんの声がしたので私は首だけ後ろを向けた。





「玲夢だよー、月曜日に遊園地いこうって連絡してたんだ」

「………ふーん」

「翔音くんも予定はないでしょ?」

「……ん」

「じゃあ、《ピロロロロ》あ、電話……ちょっとごめん」






私は翔音くんに軽く謝ってから電話にでた。






「はーい、もしもし?」

《ああああ芹菜か?芹菜だよなっ!?》




電話越しで声を張り上げたのは橘くんだった。





「た、橘くん?なんで私の携帯の番号………」

《光に聞いた!!》


教えた覚えないけど!?




「……で、どうしたの?」

《さっき川上から電話もらってさ、今度遊園地いくんだろ!?》

「……行動早いなあ玲夢……。そうだよ、予定が合えば月曜日にいこうと思って」

《俺もいくっ!!光も棗も誘って絶対いくからな!!》

「う、うん、もちろんそのつもりだよ」




あまりの必死な声に私はたじろいだ。



と、ここまできてふと疑問が浮かび上がる。





「そういえば、みんな部活は?夏休みなんて毎日部活あるんじゃないの?」

《いや、テスト終わったばっかりだから今週末の土、日、月は3連休なんだ!!》

「へー、なるほど」






それならみんないけるかな。


ただ、桐原くんの場合、断る口実がなくなって無理矢理にでも橘くんに連れてこられるのが頭に浮かぶけどね。





そんなことを考えていると、後ろから肩をちょんちょんとされたのに気づく。




振り向けば、翔音くんが手を差し出していた。





「……電話、かわりたいの?」

「……ん、」




………電話に興味が沸いたのかな?




「橘くん、ちょっと翔音くんがかわりたいみたいだからかわるね」

《おおマジか!!かわってかわって!!》





私は携帯を翔音くんにわたした。




翔音くん、電話初挑戦。




「………」

《………あれ?翔音にかわった?》

「……ん、かわった」

《おおお翔音だっ、なんか電話越しで話すの初めてだから変な感じするなあ》

「………」

《それよかさ、お前ももちろん遊園地いくだろ?》

「………いく……かもしれない」

《“かもしれない”じゃなくていくんだよ!!ジェットコースター乗るのっ、コーヒーカップめっちゃ回すのっ、アイス食うのっ、すっげえ楽しいんだぜ!!》

「…………………………」





ああ、橘くんの声ここでもよく聞こえる。

なんだか盛り上がってるなあ。





《ジェットコースターは絶対乗ろうな!!あれ速えんだっ》

「………」

《そういえば一回転するやつもあったなあ》

「………」

《そうだ、お化け屋敷とかもあんだぜ!!夏には定番だっ》

「………」

《あれ?翔音?もしもーし》

「……?」





《おーい翔音いるかあああ!?もしかして電話切っちゃったか!?》

「……切ってないよ」

《ああよかった切られたかと思ったあ》

「………」

《電話だと声しか聞こえないからな》

「………」

《………》

「………」

《………なあなあなんか話して!?俺さみしい!!電話で無言はさみしいの!!》






ここでも聞こえる、わああああと喚く橘くんの声。





私は思った。




翔音くんを電話に出すのはやめよう。


会話がもちません。




あのあと翔音くんと電話をかわってなんとか橘くんを宥めた私は電話を切った。





そして今は夕食中だ。




「遊園地か、俺もいきたいけどなあ」

「やっぱり仕事?」

「まあな。さすがに遊園地が理由で休暇なんてとれねーし」




朔名は残念そうに苦笑いをした。


確かに遊びが理由だなんて、即クビになりそうだしね。





「……で?誰といくんだ?」

「えーっと、私と、翔音くんと、」

「もしかして2人でデートかッ!?」

「“と”って言ってるでしょ、最後まで聞けよ」

「すみませんでした」










「なるほど、友達とか」

「当たり前でしょ」

「彼氏といくんじゃねーのか」

「いや彼氏とかいないし」

「つくればいいだろ、なあ翔音?」

「……?」




突然翔音くんに話をふる朔名。


一方話をふられた本人は食べていた手を止めてきょとんとしている。





「翔音も彼女とかほしいだろ?」

「?なにそれ」

「ちょっ、何聞いてんの朔名!?」

「遊園地いくなら観覧車とかで必ず2人っきりになるんだ!!」

「……なんで?」

「そりゃあ観覧車ですることが、キ「いい加減にしろ食事中だ馬鹿ああああ」」






全くなんてことを言おうとするんだこいつは!!


そんなこと純粋な翔音くんに教えなくていいんだよおおお。







とにかく朔名の言葉はともかくとして、楽しんでこよう、遊園地!!



30.みんなで遊園地にいこう!

(ねえ、かのじょって何?)
(……まだ知らなくていいよ)
(……観覧車ですることって何?)
(そ……っ、それこそ知らなくていいの!!!!)
(…………?)


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