27


昼休み、私はみんなでお弁当を食べたあと1人で図書室にきていた。



テストが近いということで、参考書をさがすためだ。




買うのは嫌だしワークは解けないしで参考書に頼るしかないのだ。






……それでも理解できないのは置いといて。






何の教科借りようかなあ。


数学は公式覚えればなんとかなるから必要ないでしょ……。


日本史は暗記物だからこれもいいや。





あぁぁ………、やっぱ英語、だな。



文法とか全くわかんないし。


英語はいっつも赤点ギリギリセーフって感じだから危ないんだよね。



よし、英語の参考書借りよう。





「えーっと……英語英語……、あ、あれか」




棚の上から2段目に置いてあった。




手を伸ばしてそれを取ろうとした。





が、届かない。



……椅子もってこようかな。






「届かないんだ、ちっちゃいねえ」

「!?」





急な声に驚いて振り替えると、そこにはニコニコした新井くんがいた。




「あ、新井くん?何でここに?」

「んー?ちょっと藍咲サンと話したいことがあって」




……あれ、嫌な予感しかしないんだが気のせいか?






「あの英語の参考書が欲しいの?」

「え?あ、うん。そうだけど……」

「じゃあ俺が取ってあげるね」

「え……っ」





そういって私の前で参考書に手を伸ばす新井くん。




……てか、待って。




私の背中には本棚、前には新井くん。



ちょ、めちゃくちゃ近いんですけどおおおお!?



え、何これどうしてればいいのさ私!!



しかもご丁寧に本棚に反対の手ついてるし!!


逃げらんないし!!





やってもらって悪いけど、早く参考書取ってくださいいいい!!








「はい、参考書取ったよ。借りるんでしょ?」

「う、うん……ありが、とう……っ」

「……顔、真っ赤だよ?」

「?!……そ、そんなこと、ないからっ」









「恥ずかしかった?“芹菜チャン”?」

「っ!!??」






こ、こいつわざとだったのか!!


ちくしょう、はめられた気分だ、なんてやつ!!







「まあ深く考えないでね、冗談だから」

「じょ、冗談じゃ済まないから!!こっちはびっくりして……っ、」

「トキメいちゃった?」

「んなわけあるか!!」

「ごめんね、悪いけど君の気持ちには答えたくないな」

「答えられないじゃなくて答えたくないのか。嫌悪感まるだしですか」

「別に誰も嫌いだとはいってないでしょ?」

「………」

「好きともいってないけどねえ」

「このやろう」







私は深いため息をついた。


本当、疲れる。








「……それで、私に話って?」

「言わずとも気づいてるんでしょ?」

「………」





また、いつもと変わらないニコニコした顔でそういった。







けど……、目が、笑ってない。






どうやらお見通しのようだ。





「……わかった、話すよ。だから、その顔……やめてくれない?」

「クスッ……怖かった?」

「自覚あるのかよ」

「こうでもしないと話してくれそうになかったから」





またニコニコとしているが、さっきと違ってちゃんと笑っている。



本当読めないやつだ。



私は話した。


本当は親戚じゃないってこと。


倒れているところを拾ったこと。


記憶が欠落していること。


私たちが家族になって新しい記憶をつくってあげようということ。







新井くんは黙って私の話を聞いてくれた。



普段はあまりみない、真剣な顔で。










「……だいたいこのくらいかな。私自身も、あんまり翔音くんのことはわかんないから……」




話終えて私はふぅと息をはいた。




「……そっか、記憶が、ね……」

「今まで黙っててごめん。こういうことは、あんまりべらべらと話さない方がいいと思って……」

「まあ、その判断は正しいと思うよ」

「………」








「話してくれてありがとう」




その言葉とともに、新井くんは私の頭を撫でた。



今まで聞いたことないくらい、ひどく優しい声だった。







な、なんか今日の新井くんいつもと違くない!?


こんなに優しい新井くんなんて……!!



まさかこれもからかってる、とか?







「人の優しさも素直に受け入れられないなんて哀しい人だね」



……エスパー降臨した!!






「イタタタタタッ!?ちょ、頭がしがしするのやめてくれません!?」

「……せっかくお礼言ったのになあ」

「だだだだからこの手を……っ!!」

「言わなきゃよかったかなあ」

「いやああああ禿げる禿げる!!」

「禿げれば?」


鬼だ。



新井くんからなんとか解放された私は頭を押さえながら授業へ。


玲夢に変な目で見られたけど、気にしたら負けだ。











帰り道、いつも通り私は翔音くんと帰っていた。



もちろん会話はないけど。





昼休みに新井くんと翔音くんのことを話していたから、その話題の人物が今自分と一緒にいるというのは少しだけ変な感じがした。





記憶、戻るといいな。






「……何?」

「え、何が?」

「……俺のこと、見てたから」

「み、見てないからっ!!」

「……ふーん」





翔音くんてすごいストレートに物事聞くよね。

ときどきびっくりするよ。








「そういえば翔音くんはテスト勉強どうする?」

「……てすと、べんきょー?」

「テストっていうのは、今まで習ったことを問題形式にして実力を試すことだよ。だからそのテストのために復習みたいなことをするのをテスト勉強っていうんだけど…………」

「…………」





あ、でもとっても意外だけど翔音くんて頭いいんだよね。


教わったことはすぐに吸収するし。






「ねえ、私と頭交換しない?」

「やだ」





SO KU TO U☆

ひ、酷すぎる!!




でも勉強するなら今週末がチャンスだよね。




ここはもう覚悟を決めよう。






「翔音くん!!」

「……何?」



27.頭を下げる

(私に勉強を教えてください!!)
(…………は?)


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