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「いらっしゃいませ、2名様でよろしいですか?」

「こちらラズベリーティーでございます」


「3番テーブルにミルフィーユお願い」

「わかりました!!」






今日は土曜日、つまりバイトの日。











私と翔音くんはバイトの身だから通常より早めの8時にお店にきた。

もちろん朔名もきてくれた。




けどお店にはすでに店長と副店長である時雨さんと愁さんは出勤していた。




「は、早いんですね2人とも……」

「まあ店長はこうみえて忙しいのよ、人手も足りないくらいだから」

「ああだから愁さんもそのお手伝いで……、」

「違うわよ」

「……え?」

「1人でも大丈夫なんだけど、私だけ忙しいなんてむかつくから呼び出したの」

「…………」





やつあたりだ。






「違うよ、時雨は俺と一緒にいる時間を増やしたいんだよー」

「給料出さないわよ」






愁さんはちょっと困った顔をしながら“酷いなぁ〜”なんていってるけど慣れてるみたいだ。



というか、普段と営業中じゃほんと性格違うな。




営業中じゃ完璧なまでの綺麗な笑顔なのに。

今は確かに綺麗な笑顔ではあるけど……なんかだらしないような。


こう……タラシがするような笑顔の綺麗バージョンというか………あ、自分でもわからなくなってきた。

まあとにかくそんな感じで今日がはじまった。




私と翔音くんはお客様からオーダーを聞き、それを厨房へ伝え、出来上がったものを運ぶのが仕事。


注文の内容を間違えると大変なことになるから、笑顔で接客しつつも内心はかなり慎重である。






私が心配なのは翔音くんだった。


あまり人とコミュニケーションをとらない彼が接客なんて大丈夫なのかと思ったけど、杞憂だったみたい。




時雨さんから教わった接客の仕方とかすぐに頭にはいったみたいで順調に仕事をこなしている。







と、いうより……、







「翔音さーん、注文したいんでおねがいしまあすっ」

「あ、じゃあ次はこっちもお願いしますぅ」

「私のところもーっ」



ホストクラブか。




ほとんどの女性客が翔音くんを指名している。



もちろん愁さんだって指名率は高いんだけど、新しく入った翔音くんにみんな興味があるみたい。





もう品よりウェイターを選んでる感じになってきている。

でも売り上げは上がってるからこれは喜んでもいいのか微妙なところである。





「……お待たせしまし、た。こちら…季節限定の、梅ゼリーとシャーベットです」

「ありがとうございます……っ」




翔音くんの接客に女性客は赤面している。


うわ、時雨さんがいった通り、女の子が落とされまくってる。




まだ接客に慣れはじめたばかりで言葉が多少途切れ途切れだけど、この売り上げだからきっと許してもらえるだろうな。



恐るべし翔音くんの美貌。




カランカラン……




「いらっしゃっいま……、せ?」








「やっほー芹菜っ」

「こんにちわ、遊びにきちゃいました」

「随分可愛い店だね」

「綺麗な店だな、すっげーっ」

「……なんで俺まで一緒なんですか」





そこにいたのは、玲夢、柚子、新井くん、橘くん、桐原くんの5人だった。




「み、みんな……なんで、」

「棗が言ってたんだよ、この店はいいところだってな!!」

「そしたら藍咲サンと翔音クンがバイトしてるって聞いたから、これは行くしかないと思ってね」




私の呟きに橘くんと新井くんが、さも当然のごとく答えた。




来てくれるのは嬉しいけど、かなり恥ずかしいはこれ。






「芹菜の着てる服可愛いね!!」

「そうですね、メイドさんみたいで素敵です」

「う……あ……、」





そう、ここの女性用の制服はほぼメイド服のようなデザイン。


メイド服って膝丈のもあるから私は断固それをお願いしたのに、時雨さんに笑顔で膝上13cmのやつを着せられた。



悪夢だった。





私がどう答えていいのかあたふたしていると、ふと新井くんと目が合った。





「クスッ……似合ってるよ」

「!?……え、と……あの、「なーんていうと思った?」

「もういいです」




ものすごい笑顔だった、新井くん……。






「藍咲先輩の服装の談義なんてどうでもいいですから。馬子にも衣装ですね。それより早く案内してください」


くそぅ、めっちゃ言い返したい!!
でも今は接客中なんだよちくしょう。



私は頭にピキッときながらも無理矢理営業スマイルでみんなを案内した。







「先輩、顔すごいですよ」

「……生まれつきだよ」

「そうですか、すみません今まで気づかなくて」


このやろう。



「……ご注文をどうぞ」




なんであれ、今はバイト中だ。



接客はちゃんとしなければ。




「じゃああたしはこの季節限定の梅ゼリーとシャーベットで!!」

「では私もそれで」

「あっ、俺もそれがいい!!それとモンブランもなっ」

「圭祐、食べ過ぎ。……んー、俺はハーブティーと紅茶のシフォンケーキかな」

「……俺はラズベリーティーとカシスオレンジのタルトでお願いします」





みんなの注文を書き留めて改めて確認をする。




「季節限定の梅ゼリーとシャーベットを3つ、モンブランを1つ、紅茶のシフォンケーキを1つ、カシスオレンジのタルトを1つ、ハーブティーとラズベリーティーをそれぞれ1つずつ。……以上でよろしいでしょうか?」




うん、大丈夫、書きもらしはないっと。




「では少々お待ちください」




私は軽く頭を下げると、オーダー表を持って厨房へと急いだ。










「……ねえ、芹菜ってば結構バイト姿様になってない?」

「そうですね、笑顔はまだちょっと慣れていないようですが。さすが芹菜さんですね」

「柚子の笑顔は完璧だもんねぇ」

「ふふ、ありがとうございます」


「それより俺のモンブランまだかなあ」

「今頼んだばかりなんですから来るわけないでしょう」

「な、棗が冷たい……っ」

「そんなに早く食べたいならもう1回藍咲サン呼んで頼んでみたら?」

「お、いいなあそれ!!おおおい藍咲っ、俺のモンブラ「やめてください、まわりに迷惑がかかります貴方の声は」

「ごめんなさい」




私が去ったあと、こんな会話があったらしい。

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