25


「今度は突き指ねえ、藍咲さん」

「あ、あはははは……」




私は今保健室で美人な北山先生に見てもらっている。



あれから私は試合を続けられなくて保健室へ直行。

その際、アタックした女の子も一緒に着いてきた。





「……ごめんなさい、私調子乗ってアタックなんかして……、怪我させちゃったし……」

「ああいいよいいよ全然。私が油断ぶっこいてたのが悪いんだし」

「でも……私、」

「スポーツに怪我なんてつきものだし、あんまり気にしないで?すぐ治るだろうしそんなに支障はないからさっ」

「……うん、ありがとう」




やっと笑顔になってくれた女の子。



でもほんと突き指ですんでよかったよ。



打撲とかじゃ洒落にならないもんね。





「じゃあ包帯巻いておいたから、今日明日くらいはあんまり動かさないようにね?」

「はーい、ありがとうございます」

「ありがとうございます」








ガラッ




急に保健室のドアが開いた。


何だと思ってみんなでドアの方をみる。




あ。




「こんにちは藍咲先輩」

「き、桐原くん……」




そこにいたのは桐原棗くんだった。


先輩と言われてるのに尊敬を感じないその生意気な態度は相変わらずである。





「なんでここに?桐原くんも怪我したの?」

「湿布を貰いにきたんです。そしたら保健室に入る先輩を見たんで」

「あー、そうなんだ」

「……突き指、ですか?」

「え?ああ、うん、まあね。でも全然大したことないから」




私はあはははとお茶らけたように笑った。





「……ごめんなさい」



また女の子が謝った。



「私のせいなの。私のアタックが外れて当たっちゃって……」

「……そうだったんですか。だから包帯ぐるぐる巻きなんですね、他の指と太さ変わらないですけど」

「ちょ、太いとかタブーだから!!」





怪我人にも容赦ねえ!!


何でそうスラスラと毒舌がはけるかなあ。

やっぱり先輩だと思われてない!?




するとずっと会話を聞いていた北山先生が綺麗にクスッと笑った。




「あなたたち仲がいいのねー」

「え……いやそんなことないですよ」

「でもポンポン会話が進むじゃない。もしかして藍咲さんの彼氏?」






……………なんですと!?




「やめてくださいよ先生。こんな先輩が俺の彼女だなんてさすがの俺も傷つきます」

「どういう意味だああああ」



真顔で言われた。

桐原くんは北山先生から湿布をもらっていた。


ああ、そういえば湿布もらいにきたんだよね。




「じゃあ俺は戻りますから」

「あ、私も戻る。もう包帯巻いてもらったし」

「…………藍咲先輩と一緒にですか」

「心底嫌な顔するのやめようよ」





もう一言一言がイライラします。







「あ、あの……っ、き、桐原くん」




ずっと黙っていた女の子が桐原くんに声をかけた。




「なんですか?」

「えと……、桐原くんて出場する種目サッカー……?」

「そうですけど」

「……次の試合にも出る?」

「……まあサッカー部ですし、レギュラーなんでフル出場ですね」

「そ、そっか!!……じゃああの、私……っ、応援するね!!」





女の子はパァァァと嬉しそうな顔をすると、私に一言謝ってからパタパタと保健室をでていった。





「……人気者ねえ、桐原くん」



北山先生は何か楽しそうに笑っていた。




「あの子何で桐原くんのこと知ってるの?学年違うじゃん」



私は疑問をぶつけてみた。




「きっとサッカー部のファンとかじゃないですか」

「……ファン?そんなのいるの?」

「いますよたくさん。部活のときとかよく見に来てますから」

「へえ……知らなかった」

「橘先輩もかなり人気ありますからね」

「まあ無邪気なところあるしね。……でも今の子みたいに桐原くんのファンだってたくさんいるんじゃないの?」

「いますよ」

「……モテモテじゃんすごいね!!」

「別に。俺はそういうの興味ないんで」

「えええもったいないなあ……。……まあでも女の子に浮かれる桐原くんはちょっと気持ち悪いかも」


「ぶっ飛ばしますよ」



「……そういえば、翔音先輩はいないんですか?」




保健室を出て校庭へ向かう途中、ふと思い出したかのように桐原くんが質問してきた。




「ああ、うん。橘くんが“俺の試合見ていけよ”ってことで翔音くんは試合見てると思うよ」

「……やっぱりですか」

「自分のシュートを見てほしいんだってさ。橘くんが言うと、翔音くんが彼女みたいに聞こえるんだよねー」

「想像できるのが嫌ですね」







桐原くんといろいろ話していると、あっという間にグラウンドへついた。



サッカーの試合が行われているところまでいくと、観客の中に翔音くんと橘くんを見つけた。





「翔音くーん、橘くーん!!」

「………」

「おお、おかえり藍咲!!……って、なんだ、棗も一緒か!!」

「……なんですかその笑顔」

「いやー、お前も俺の活躍を聞いてくれるんだって思ってさっ」

「俺は聞きたくもありません」

「えー、聞いてくんねえのー……?」

「何ちょっと可愛い声だしてるんですか。俺に甘えたところで何もありませんよ」





桐原くんと橘くんの会話を何気なく聞いていた私。




………あれ、今可愛いって言った?


あの桐原くんが……?

いっつも毒舌ばっかはいてるのに。




「桐原くんってもしかして……ツンデレ?」

「埋めますよ」





ものすごく睨まれた。


怖いです、この後輩。




「あ、そうだ翔音くん」

「?」

「これ、預かってたヘアピン。さっき返すの忘れてた」

「……ん」




翔音くんの手にヘアピンをおいた。


さすがにもう髪は乾いているようで、すぐに前髪をいつもどおりとめた。





「…………」

「……え、何?」




何故か視線を感じると思ったらそれは翔音くんからで。




「……それ、怪我したの?」

「え?……ああ、さっきのバレーの試合でちょっとね」

「ふーん……」

「まあただの突き指だし平気だよ」

「……よく怪我するよね」





そういって翔音くんは私の突き指した方の手をとった。




「え……っ、ちょ、」

「……前も顔怪我してたし」

「やめてその話、私の黒歴史にはいってるから」





50m走のスタート直後に転ぶとか屈辱以外の何ものでもないんだから!!




「……痛い?」

「痛くないっていったら嘘になるけど……ちょっとぐらいかな」










「………なら、よかった」

「……え?」




今、………もしかして心配してくれた?



前は私のことマヌケ呼ばわりしたのに。




どういう風の吹き回し?






「おおおおい藍咲、翔音!!何俺らの前で手なんか握っちゃってんだよーっ」



ハッとした私はパッと手を隠す。



「べ、別に何でもないから!!」

「見せつけてるんですか?藍咲先輩がいる時点で目が溶けるんですけど」

「ちょっとおおおお!!??今までで一番の侮辱なんだけど!!」

「いこうぜ翔音、お前の次の試合みてーし!!」

「ん」





「あっ、ちょっと2人とも置いていかないでよ!!」

「うわ、こんなのと残されるとか屈辱過ぎる」

「こんなのとかいってる時点で私のこと先輩だと思ってないでしょ!?」

「そんなわけないじゃないですか、藍咲先輩」

「名前だけ!?」










こんな感じで今日の球技大会は終了したのである。


ちなみにいうと、

私のクラスのバレーは3回戦まで出場。(私)
男子バスケは4位。(翔音、新井)
男子サッカーは1位。(橘)
2年の男子サッカーは2位。(桐原)



という結果になりました。











25.辛辣な君は通常運転

(おかえり藍咲サン、翔音クンとのデートは楽しめた?)
(は?な、何いって……)
(翔音クン、水浴びしたんでしょ?さぞかし綺麗だったんだろうねえ)
(う……あ、)
(ねえ?)

((こ、こいつやっぱエスパーだ!!))


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