◎ 24
最近転入してきた紫髪の美少年―――……名を翔音。
そんな髪色に加えヘアピンにピアスに赤目とくれば、どんな不良だと思うかもしれない。
けど、その顔がわりと色白で童顔、そして女顔とくればどうだろう。
そのギャップ上に魅了される女の子が数知れず。
男も例外ではない。
今日1日1回でも彼と会話できれば、その相手は1日中舞い上がるなんてこともあるらしい。
だが彼はあまり会話をしない。
無口なのだ。
学校で人と会話をするところはあまりみたことがない。
一緒に住んでいる私や朔名とは最近ようやくまともに会話するようになった。
まぁその言葉足らずなゆえに私が変な勘違いしてしまうこともあったけど!!
彼は未だ帰宅部だ。
何度も部活に誘われているのはみたがどれも興味がないらしい。
さて、そんな誰をも魅力する彼だけど、果たして運動は得意なのだろうか?
「うわあ、何も今日に限ってこんなに晴れなくたっていいのに……」
外に出てみると雲ひとつない晴天だった。
太陽が鬱陶しいくらい輝いている。
どうしてこんな暑いのに外にいるのかというと、今日は球技大会だからである。
球技大会とはその名の通り、生徒たちがクラスごとに別れ、バスケやバレーやサッカーなどの試合をしてクラスの順位を決める大会だ。
けど……どうしてこんな暑い日にやるんだ。
季節はそろそろ夏に近づいてきたし、動いたら絶対に汗だくになりそうだ。
「芹菜はなんの種目に出るんだっけ?」
「私はバレーだよ。玲夢は?」
「あたしはバスケとサッカー………って、芹菜あんたひとつしかやんないの!?」
「そりゃあめんどいもん、暑いし」
「いいなぁ、あたしなんか運動部だからってことで強制的に2つもやるはめになったし!!」
……運動部の人ってだいたいそういう運命だよね。
「で、翔音くんはっ!?」
「え?ああ、翔音くんはたしか……バスケじゃなかったっけ」
「バスケね、わかった!!芹菜、絶対翔音くんを応援するんだからねっ!!」
「………は?私も?」
「あったりまえじゃん!!」
「あああ……でも、」
「行くからね?」
「う………はい」
ああ、玲夢のその眩しい笑顔には逆らえない……っ!!
すっごい楽しそうに話すんだもん、断りづらいじゃないか!!
開会式はグラウンドで行った。
暑くて聞いていられる状況じゃなかったけど。
それからは各自試合場所に移動。
私は体育館へと向かった。
体育館ではバレーとバスケの試合が行われる。
どっちも男女の試合があるからわりと時間がかかる。
私のクラスのバレーはまだ出番じゃないから他の試合みていようかなあ。
「ああ、いたいた芹菜ーー!」
大声でかけよってくるのは、さっきわかれたばっかりの玲夢だった。
「ど、どうしたのそんな慌てて……」
「何いってんの、バスケの第1試合には翔音くんがでるんだよっ!?」
「え、あ……そう……だっけ?」
「ほら早くっ、1番前で観戦できる場所確保するんだから!!」
「えええ」
な、何ですかこの勢いは。
思いっきり連れていかれてるパターンなんですけど!?
そういって確保出来たのは、最前列のスコアボードの隣。
つまりは真ん中である。
といっても椅子が用意されてるわけじゃないから床に座ってるかたちなんだけどね。
「うわ、ほんとにこんな1番よく見える場所がとれたね……」
「でしょ?早いもん勝ちだよ!!さっすがあたしじゃん」
そのやる気を試合で出したらどうだろうか。
私はそんな玲夢に苦笑いした。
試合する選手たちが真ん中に並びはじめた。
やっぱり自分が所属している部活の種目に出ているのか、何人かはずば抜けて背が高い人がいる。
その中に一際背の低い人がひとり。
翔音くんだ。
赤色のビブスをきて私たち側の一番端に並んでいた。
選手が並んだその瞬間だった。
「きゃああああ翔音くうううん!!」
「翔音くんがんばってーっ!!」
「翔音先輩かっこいいいいい」
「私と付き合ってえええ!!」
おい誰だ最後にいったやつ。
とにかく女の子たちからの歓声が凄まじい。
もちろん後輩からの人気も高い。
そんな女の子たちの声に当の本人は何で自分の名前が呼ばれているのかわからないようで、きょとんとしながら首を傾げていた。
そしてその仕草にときめかない女の子はいないようで。
さらに歓声が高まった。
となりの玲夢も例外ではない。
ああああ逆効果だよ翔音くん。
「ねえもうやばいよ芹菜!!あたし萌えすぎて死ぬ!!」
「も……もえ……?」
もえって……萌えだよね?
え、何、あの首を傾げる仕草にきゅんときたの?
アンタらここへ何を見にきたの。
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