23


「帰りたい」

「誰のせいだよ」

「………」



はい、私のせいですね。





どうしてこんなことになったのか?












「「「いただきます」」」



いつもどおり3人で夕飯。



今日の献立はロールキャベツにご飯にサラダ。

ロールキャベツはトマトスープにつけてある。
凄い美味しいから私は好物である。




「芹菜ー、今日は学校どうだった?」

「うーん、別にいつもと変わんないよ。………あ、担任が黒板で突き指したくらいかな」

「うん、俺はどうやったら黒板で突き指するのか知りたいね」




にこやかに言われた。

担任バカにしてるよね、まぁ人のこと言えないけど。




「宿題とかは?優しいお兄ちゃんが手伝ってやるよー」

「自分でいうな。宿題なんてそんなもん無い……………いや、あるわ!!」




そうだ確か、プリント渡されて机の中にいれて……あれ。





「お、なんだやっぱりあるのか。じゃあ俺が「ヤバいどうしよう朔名……」は、何が?」







「宿題学校に置いてきちゃった」



そうです、全ての原因は私にあるんです。

「……………………」

「なんだよ芹菜、やっぱ怖いのか?」

「怖くないよ」

「そんな顔で言われてもなあ………」

「だから怖くないって」

「いや、怖いよ?お前の顔が」

「怖がってる顔じゃなくて顔そのものが怖いの!?」

「……声、うるさいんだけど」

「あ、すいませんでした」




翔音くんに怒られてしまった。











私たちが今いるのはもちろん我が校、桜葉学園。

その名の通り桜が綺麗で有名な学校だけど、5月になった今では花は散って緑の葉が生い茂っている。



そんな緑にかこまれた学園内に、私たちはきていた。



昇降口の前に立って校舎を見上げる。


わりと綺麗な学校ではあるが、夜じゃそんなことわからないしかえって不気味な感じがする。


うん、気のせいだと思いたい。





「ねーねー、やっぱり帰ろ?もう21時だよ、真っ暗だよ」

「今さら何言ってんだよ、学校来ちゃったじゃん」

「たかが20分の登校距離くらい我慢できるって」

「せっかく来たんだからさっさと取りにいきゃあいいだろ」

「いいよ宿題なんて、どうせ担任の授業のやつなんだから。絶対誰もやってこないって!!」

「お前、担任を教師だと思ってねーよな」



「……てか、あれ?翔音くんは?」



朔名と話し込んでいると、いつのまにか翔音くんがいないことに気づいた。




「そういやあ………あ、」




朔名が指差した方を私も見る。

そこは昇降口だった。


昇降口に向かってすたすた歩く翔音くんの姿があった。



な、なんですでに学校内に入ろうとしてる!?




「ちょ、ちょちょ……っ、翔音くん!?なんでそんな早く学校はいるの!?」

「……早く帰りたいから」

「ま……ぁっ、待ってよ、私はまだ心の準備が……!!」

「準備……?」

「そう、準備!!……まだ入るには時間がかかりましてね……、」

「……じゃあ準備が終わったら来て」

「え」




さっきと何も変わらず翔音くんはそのまま学校内へといってしまった。



え、“心の準備”の意味を純粋に受け止めたのか!!
一般的にはそんなこと言ったって強引に連れていくものなのに。



無垢って素晴らしい……っ!!





「……で?芹菜の心の準備とやらはいつ終わるんだ?」



ニコニコ顔でそう問いかけてくる朔名、その笑顔怖いです。





「多分明日かな」

「そうか、じゃあさっさと行くぞー」




腕を掴まれもう逃げられない。


さらば私の人生。



真っ暗で視界が悪い廊下をゆっくりと歩いていく。

月明かりがあるため全く見えないということはないが、さらに不気味さが増しているため有難いとも思いづらい。




私と朔名は2階にある私のクラスを目指して進む。

2人ぶんの足音だけが響くこの廊下は果てしなく居心地が悪かった。




「……ねえ、翔音くん、どこいったんだろうね」

「あぁ、そういえば会わねーな」

「もしかして迷ったかな……」

「俺が探しにいってこようか?」

「待て待て待てええい!!私を置いてくなっ、宿題とってきたあとで一緒にさがそ、ねっ、ねっ?」

「芹菜はほんと怖がりだなあ。大丈夫、お兄ちゃんがついてるから」

「おい、顔がニヤけてるぞ」


人がこんなに必死になってんのに何でそんなご機嫌なんだ。

絶対馬鹿にしてるでしょ!!








話している間に教室にたどり着いた。

私は急いで自分の机の中を確認する。


やっぱり、机の中には今日配られた数学のプリントがあった。




「よかったあ……これでやっと帰れる」




もしプリントが入ってなかったら泣くところだった。

こんな夜にこんな場所にわざわざ来たんだから、無くては洒落にならないもんね。





「朔名あ、プリントあったよーっ。これでやっと……、」




私の言葉はそこで途切れる。




だって教室の入り口には誰もいなかったから。



え、嘘。

朔名……?


も、もしかして置いてかれた!?

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