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「前聞いたときから思ってたけど、サッカー部って大変だね」

「大変なのは俺ですよ」

「橘くんてそんなに問題なの?」

「そうですね。朝練は寝坊、ミーティングには来ない、そのぶん騒がしい。三拍子そろってますから」

「……じゃあなんで副部長やってるの」





私の質問に少しだけ沈黙があった。

けどすぐに桐原くんは口元を緩めた。




「……性格、じゃないですか」

「性格?」

「朝練は来ませんが放課後1人でも練習してます。ミーティングにも来ませんが先輩は視野が広いので部員をよくみています。毎日毎日騒がしいですが、退屈しません」

「…………」

「足りないところはたくさんありますが、別の場所で補っています。サッカーに対して真っ直ぐなんですよ。よく寄り道もしますが筋が通っているんです」

「真っ直ぐ、か」

「前の部長はきっとそこを評価したんじゃないですかね」





すごく真面目な話だった。


桐原くんは性格があれだからしょっちゅう毒舌だけど、考えるべきことは間違っていないと思う。





いろいろいってるけど、ちゃんと先輩として尊敬してるじゃんか。


私も自然と口元が緩んだ。

「藍咲先輩は部活やっていないんですか?」

「うん、立派な帰宅部だよ」

「そうですよね。50m走で転んだクチですもんね」

「何故知っている!?」

「橘先輩が話題に取り上げていたんで」

「あのやろおおおおお」






人の失敗を笑ってんのかあの赤髪ィィィィ。



叫びたくもなったがこんなほのぼのとした昼休みの廊下で騒ぐのもどうかと思ったので、ぐっと抑え込んだ。












廊下を歩いて、私のクラスが近くなってきた。



話してたらかなりお腹がすいてきた。
はやく教室もどらないと。




そう思っていたとき、“あ”と隣で声がしたので私は何かと聞いてみた。





「……そういえば藍咲先輩、さっきの話ですけど……」

「え、さっき?」

「“あんなこと”をいったの、覚えてますよね?」

「まっ……またその話!?何で戻すの!!」

「俺にとっては重要な話ですから」

「……………お、覚えてる、けど」





せっかく忘れかけてたのにまたこの話題をふるな!!


自分の顔が熱をもってくるのがすぐにわかった。



冷めろ冷めろ、お願いします冷めてくださいまじで。








「あれ、マジで忘れてくださいね」

「……………は?」



“マジで”がつくの?
そんなに忘れてほしいの?




「全部冗談なんで」

「……………冗、談」

「ちょっと言ってみたかったんです。思いのほか面白かったですよ、百面相」

「……………」

「……もしかして怒ってます?」

「……フッ、まさかっ。私は気づいてたよ冗談だってね。いつもとキャラ違うなあって気づいてたしー?」

「それは良かったです。あれを本気にするなんて相当幸せな頭しているとしか思えませんしね」

「うんうん、ほんとにねー」






完全に遊ばれた。
怒りというより呆れのほうが強い。


誰かこのドSな後輩を殴っていい許可をだしてくれないか。





((このやろおおお、もう絶対騙されない覚悟あるし!!))

((藍咲先輩、俺が“嫌い”とも言ってないことに気づいてるんですかね))


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