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「あ、こんにちわ藍咲先輩。あの素敵な笑顔はまだ続行中ですか?」

「嫌がらせか」





嫌なやつにあってしまった。


せっかくの昼休みだし、また購買で何か買おうかと思った数分前の私を殴りたい。




「嫌がらせじゃありませんよ。ちゃんと素敵な笑顔といってますから」

「皮肉しか込められてねーよその強調」





昨日、あれから散々言われ放題だった私は不機嫌を通り越して無気力であった。


顔が歪んでますよとか言われたけど、そりゃあ笑顔もひきつるわ。





時雨さんによると、桐原くんはお店の常連客らしい。


あのラズベリーティーがお気に入りみたいで部活が終わったあとに寄るそうだ。




あの店の制服は可愛いからそういう目当てで来たんじゃないのかと聞いてみたら、『マジで殺るぞ5秒前』みたいな顔をされたので全力で逃げました。



「……これからあの店にいくたびに藍咲先輩に会うのかと思うと憂鬱ですね」

「何でそう次から次へと毒舌発言するのかな。私何かしたっけ?」

「すみません、これが俺の性格なんで。藍咲先輩がMになれば事は済むんじゃないですか?」

「誰もそんな解決の仕方望んでないけど!?」





むしろあんたがN(ナチュラル)になるべきだろ。



桐原くんには毒舌しか吐かれてない気がする。

まともな会話なんて皆無だよ、私先輩なんだけど。






「……桐原くん、私のこと嫌いだよね」

「好きになってもいいならなりますけど」

「………………………」

「……なんて顔してるんですか」

「いや、だって、今……っ」






こいつ、今なんて言った?



真顔でさらっと言うから危うく聞き逃すところだった。




ここにきて初の毒舌じゃない言葉!?(偉そうだけど)

なにこれ、何フラグ?




いやでもこれは冗談だよね、さすがにわかるよ私だって。

いきなりこんなシチュエーション有り得ないじゃん。





「藍咲先輩、嘘だと思ってます?」

「そ、そりぁ……いきなりだし、ね……」

「そんなの言えばわかるじゃないですか」

「言うって?」

「……好きになってもいいんですか?」

「……そっ、れは……」





なんだこの展開。

生憎今この廊下には誰もいない。
ちょ、昼休みなんだからみんな廊下に出ろし!!




つか、何なの?
なんでこんな展開になった。
私のこと嫌いだよね発言は地雷だったのか!?


どう答えればいいのさ!!



「……っ、くく……っ」

「な、何で笑ってんの」

「だって藍咲先輩がっ、百面相してるっ……からっ、くく……っ」




別にしたくてしてるわけじゃないんだけど!?




「あ、あんなこと言われたら、誰だって百面相くらいするでしょ!!」

「あんなこと?」

「……………“好きになってもいいんですか?”って……」

「柄にもなく恥ずかしいんですか?」

「っ、んなわけあるか!!」

「顔が赤いですよ。そんなタコ顔でいわれても説得力ありません。出直してきてください」

「まさかのダメ出し!?」





あーもう、調子狂うこれ。
私はこういうのに慣れてないんだよ。


反応に困るじゃないか。


つかむしろ桐原くんはどうしてこうも手慣れてる!?
あんなこと真顔でいってて恥ずかしくないんですか!?




私だったら掃除ロッカーに駈け込むよ。






「そういえば、藍咲先輩これからクラスに戻りますよね」

「え?あ、うん、もちろん」




いきなり話題が変わって声が裏返ってしまった。


ああああ、どれだけ羞恥を晒すつもりなんだ私。




「俺も行きますんで」

「……またミーティング?」

「いえ、今日は部長がいないので放課後の練習メニューを橘先輩に考えてもらうんです」

「考えつくのそれ?」

「100%無理ですね」



酷い言われようだ、橘くん。

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