18


目の前をみると、翔音くんはゆっくりであるがリズムよくケーキを食べている。


店のウエイトレスさんたちがたくさんのケーキをもってきたからこのテーブルにはいろんなケーキで埋め尽くされている。



まさか全部食べる気?





「それ全部食べたら太るよ?」

「……でもうまい」

「まぁ、確かにこれはすっごく美味しいから食べたくなるのもわかるけど……」

「……」



事実、私もあと何個かは食べたい。

私宛のケーキじゃないけどこんなにあるから構わないだろうし。


ウエイトレスさんたちも仕事にもどってここにはいないし。




「じゃあ私も食べていい?結構数あるしさ」

「……食べたら太るんじゃないの?」

「……………」

「デブ」






真顔でデブ呼ばわりされた!?
腹立つなこのやろう。
まだ食べてもいないのに!!

つーかまだ私はスマートだああああ。






「くくっ……、翔音にデブとかいわれてやんのー」

「外に植わってる薔薇の棘に顔面突っ込んでやろうか?」

「激しくすいませんでした」





ハッ、口じゃ私に勝てないよ朔名め。


まぁ10割方ただの八つ当たりだけど。



しばらくケーキを楽しんでいたとき。


時間はあっという間にすぎてすでに営業時間になっていた。



今はちょうどお昼時だ。

朔名のはなしによればだいたい12時から16時までが仕事のピークらしい。


ということはちょうど今がその時間なわけだ。




たしかに、私たちがここに来たときよりはるかに満席に近くなってきた。


ウエイトレスさんたちがせっせと厨房とこちらをいったり来たり。






そういえば、私と翔音くんはバイトをしにここに来たんだよね。

さっきから食べてばっかりだけどいいのかな。




そんなことを考えていたとき、私たちのいるテーブルに黒崎さんがきた。




「当店のケーキはお口に合いましたか?」

「あ、はいっ。すっごく美味しかったです」

「ありがとうございます」




すでに営業時間になっているからなのか、さっきみたいな軽い感じの雰囲気は一切感じられなかった。


完璧な営業スマイルである。





「あの、私たちさっきから食べてばっかりなんですけど、……バイトのお話は……」

「あぁそうでしたね。ですが只今ピーク時でして従業員の手が空いていないのです。申し訳ありませんが夕方からでも宜しいでしょうか?」



眉を下げてしゅんとしたような表情をする黒崎さんは本当に申し訳なさそうな顔をしていた。


確かにウエイトレスさんたちは忙しそうだ。



まぁ私たちも急いでるわけじゃないしね。




大丈夫と伝えれば黒崎さんはホッとしたようで、ごゆっくりどうぞという言葉とともに仕事にもどっていった。




あと3時間くらいか。

この店のこといろいろみてようかな。



そう思って私はテーブルにあるたくさんのケーキに手を伸ばすのである。



18.幸せなひととき

(じゃあ私このミルフィーユ食べようかな)
(……俺のなんだけど)
(たくさんあるんだし1個くらいよくない?)
(やだ)
(どんだけケーキに依存してるんだ)


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