13


正面ゲートを通った瞬間聞こえるのは我が学園の女子生徒の歓声。

最近では何かのイベントみたいにこれが毎日起こる。



別に私がその的になっているわけじゃない。
的なのは私と一緒に登校している翔音くん。


さらさらな紫色の髪にヘアピン、ピアス。
これだけだとただのチャラい奴だけど、まだあどけなさの残る可愛らしい端正な顔とくれば自然と女の子たちも集まってくるわけだ。


女はギャップが好きだからね。




だがさすがに毎日こうもやられるといい加減呆れてくる。

通学路がわかれば下校のときバラバラで帰っても問題はないけど、朝食の時間が一緒だから自然と一緒に登校することになるのだ。


だから必然的に私もこの歓声を浴びることになる。



勘弁していただきたい。












それはもちろんクラスにいても同じこと。


教室に入った瞬間また女の子たちに囲まれる。
私はその隙に自席に逃げる。




翔音くんは嫌な顔はしないが(もしかしたら内心してるかもだけど)、目をぱちくりしているとこをみると多分この女の子たちの対処の仕方がわからないんだろう。



この歓声で“うるさい”とは言ったことあるけど、“俺に近寄るな”なんてことは言ったことがない。


まぁこのタイプの女の子はそんなこと言われようが決して屈しない頑固な娘が多いけどね。




翔音くんは自席にいけず、教室の後ろらへんで囲まれているが、ごめん、こればかりは助けられん。
なんとか自分で切り抜けてくださあああい。



1.翔音くんのまわりにはいつも女の子




「翔音くんほんとすごい人気になったよねー」

「毎日まわりに女の子たくさんいますものね」



席にいくとすでに教室にいた玲夢と柚子が後ろをみながらそう呟いていた。



「あれ、玲夢はあの中にはいらなかったの?てっきり一緒になって騒いでるのかと」

「まっさかー。さすがにあの中には入りたくないさ。翔音くんが1人でこっちに来たときには騒ぐけどねっ」

「さいですか」




ばちこーんとウインクする玲夢はこういう人だ。














「翔音くんてどこからきたのー?」

「授業わからなかったら私が教えてあげるーっ」

「藍咲さんと付き合ってるってほんと?」

「ねーねー、私と付き合おうよ、なんてっ」




休み時間になるたびに左斜め後ろの席からそんな女の子の声が聞こえる。

まるでハーレム状態。
これぞイケメンの特権である。



女の子たちは化粧もばっちりで“華の女子高生”という言葉がぴったりな人ばっかり。

つまり可愛い子ってことだ。

まぁさっきの1番最後の人の言葉なんて自分に自信がなければいえるようなものじゃないけどね。



2.授業は真面目に受ける



数学、英語、日本史などほとんどの授業はたいていつまらない。
授業が面白くてしかたないなんて人、是非とも君の意欲をわけてはくれまいか。



そんな人がいなくなってきた世の中に、1人の美少年はまさに“そんな人”と呼ばれるべき人物だと私は思った。




美少年――もとい翔音くん。
こういっちゃ何だけど頭が良さそうにはみえない。

授業中は頬杖ついて外をみてるか寝てるか携帯いじってるか(携帯はもってないけど)、そんなイメージがある。


転校当初はそうだった。
慣れない授業で外を眺めるか寝るかで時間を潰していた。



だが今はどうだろうか。
只今数学の授業で教科担当者は我らが担任。

左斜め後ろをちらっと見てみれば、彼はぎこちないながらにもノートを写しているようだ。

写し終えると教師の解説を聞きながら黒板とにらめっこ。



理解しているかどうかは定かではないが私がこれだけ後ろを向いてても気付かないのだからかなり集中してるみたい。




私からしてみればこれはかなり意外な光景だった。
普段の彼を知っているからこそ真面目な翔音くんが別人のようにみえる。



授業が面白いんだろうか?
その集中力を私にも「藍咲ー、いい加減前を向きなさい」



「え」



考え事に集中していた私は教師の声にハッとした。




「まぁ確かに翔音を見たくなる気持ちもわかるぞ、なんせ美少年だからな!!」



見たくなる気持ちがわかるのか?

先生は同じ男である翔音くんを授業中に見たくなるのか?




「だがな、今は俺が授業をしているんだ。見るなら翔音ではなく俺「それ以上言うんじゃねーよ。……ちゃんと前向くんで授業をお願いします」………うむ、そうか……」





担任はちょっぴり落ち込んだ。

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