45


「さーて、次はいよいよお待ちかねのミスコンの発表だァァァァ!!!!」



ステージの司会の声により、周りにいる観客や校舎内にいる先生、生徒、一般客ほとんどがステージに視線を向けた。


うん、やっぱりミスコンはみんな気になるんだね。




「いってらっしゃい翔音くん、でるんでしょ?」

「……ん、いってくる」



そういって翔音くんはステージの裏側へと向かっていった。





「芹菜ーーッ!!」

「、玲夢?」



翔音くんの姿が見えなくなったあとすぐに玲夢がこちらに走ってきた。



「あれ?今翔音くんと一緒じゃなかった?」

「うん、いたよ。でもミスコンでるみたいで今さっきステージ裏にいったよ」

「えっ!!やっぱり翔音くんミスコンでるんだ!!さっすが〜、イケメンだもんね〜」

「あはは……、あ、あれ、柚子は?」

「あ、実は柚子もミスコンに出るみたいでさっきステージに向かってったんだよっ」

「えっ!?柚子も出るの!?」



す、すごいなー……。

うん、でも柚子って本当にふわふわしてて可愛いし笑顔とか天使並だもんね。


……あの腹黒さがなければ。




「すごいよねー、友達から2人もミスコンに出るなんてさー!!」

「そうだねー」

「あ、芹菜にとっては3人じゃない?」

「……え?なんで?」

「今年も出ると思うよ、剣崎くん」




あ、剣崎くん、ね。

毎年出てるもんね、相当すごいと思う。



ふと剣崎くんを思い出すと、昨日の最後の出来事を思い出してしまい、私は顔が熱くなった。


ち、ちくしょー、なんて恥ずかしいことをしてくれたんだあのチャラシスト!!(あ、なんか新しい)



そもそもミスコンに毎年出るくらいイケメンで可愛い女の子にモテまくりの人が、なんで私なんかにあんなことをするのかね!!


からかってる……ようには見えなかったと思うようなそうでないような……。




「……芹菜どうしたの?そろそろミスコン発表だよ?」

「あ、ううん、なんでもない」



いけないいけない、せっかく知ってる人が出るんだし、ミスコンみなきゃね。




ミスコンはそれぞれ学年ごとに発表される。

3年の発表は一番最後だ。



順調に1、2年と発表されるごとに歓声があがる。


さすがミスコン、みんな可愛い子とイケメンばっかりだ。






「それでは最後、3年生の発表!!」



司会の声に今までより歓声があがる。

おお、さすが最高学年。





「まずは3位の発表!!第3位の男子は木村俊さん、女の子は北条柚子さん!!」



ステージに呼ばれた男の子と、柚子が立った。



男子の歓声が一層あがった。


ひゃー、やっぱり柚子人気だなぁ。




「柚子3位だ!!あとでおめでとーって言おうね芹菜!!」

「うん、そうだね!!」





「続いて第2位!!女の子は山中茜さん、そして男の子はなんと来たばかりでこの人気ぶりはすごいね!!翔音さん!!」



柚子たちの隣に、呼ばれた女の子と翔音くんが並んだ。



翔音くんがステージに上がった瞬間の女の子の黄色い声が凄まじかった。


ほんとすごいよ、まだこの学校にきて半年も経ってないのに、いきなりミスコンで2位とっちゃうなんて。




「やっぱりすごいなー翔音くんは、ねー、芹菜?」

「そうだねー、改めて思うよ、翔音くんの美貌すごすぎるわ」

「……いっとくけど、この女の子の歓声の凄さは翔音くん奪われるヤバさに比例するんだからね?」

「え、なにその比率」





奪われるとかなんとか言われても……そんなんどうしろと?


ふと翔音くんに目を向けた。


ステージに立ってるだけなのに、いつも以上に美少年に見えてくるから不思議である。





翔音くんとパチッと目が合った。


すると、彼はぎこちなさはあるものの、わずかに目を細めて微笑んだ。




え?
なんで今微笑んだ?




その瞬間、さっきとは比べものにならないくらいの女の子たちの歓声が上がった。


な、なんだこれ、コンサートか何かですかああああ!?



ってか、すごく僅かに微笑んだだけなのにみんなよく気づくね!?






「そしてそして第1位の発表!!第1位は、天野優里さんと、今年も優勝、剣崎櫂斗くん!!剣崎くんはなんとミスコン3連覇だよすごいねおめでとおおおおおお!!」


司会の人が大声で発表したあと、剣崎くんたちがステージに立った。


さっきと同じかそれ以上に歓声がすごい。


そっか、剣崎くん毎年優勝してるんだよね。


そんなすごい人と一緒に学園祭まわったとか、いよいよ天と地がひっくり返ったのかな。




すると、剣崎くんともパチッと目が合い、翔音くんと同じように、こちらに微笑んだ。

剣崎くんの場合、完璧なまでのイケメンキラキラスマイルだけどな。


なんでみんなそんなに微笑むの?

ファンサービス?






「お疲れ様翔音くん!!さっすがだよ、もういきなり2位とっちゃうなんてほんとすごい!!かっこいい!!」

「……ありがとう」



ミスコンが終了したあと、玲夢が真っ先に翔音くんにかけよって満面の笑みで言った。

翔音くんは翔音くんで驚いていたけど、ゆっくりとお礼を言う。




玲夢が駆け寄ったことにより、ステージ前でミスコンをみていた女の子たちが、わーっと翔音くんに群がった。



あ、ありゃー、お疲れ様言いそびれた。

さすがにあの人混みには行きたくないわ、うん。




そのとき、柚子がこちらに歩いてくるのが見えた。



「あ、柚子!!ミスコンおめでとう!!」

「ありがとうございます、ちょっと恥ずかしいんですけどね」



照れ笑いする柚子はほんとに可愛い。

1位でもおかしくないんじゃないかな。




「……芹菜さん、翔音さんのところへ行かなくていいのですか?」

「ええ……行きたいっていうか、お疲れ様くらいは言おうと思ってたけど……あれに混ざりたくはないわー」




翔音くんがいるであろう場所に目を向けると、ほとんど女の子のかたまりしか見えなくて本人どこ状態。


うん、無理。

私、人混みは苦手です。





「さすが翔音さんの人気ぶりはすごいですね」

「ね、玲夢もそれ言ってた」

「私、あくまで噂でしか知らないのですけれど、ファンクラブがあるみたいですよ?」

「え?なんの?」

「翔音さんの」

「………あ、うん、玲夢から聞いたそれ」





翔音くんのファンクラブ、か。




「……どういうことなんだろうね」

「それだけ翔音さんを好きな人が多いってことですね」

「へ、へぇー……」

「……芹菜さんはもっと危機感を持った方がよろしいのでは?」

「え」




玲夢にも似たようなことを言われた気がする。


な、なんだ?
なんか私、自分でもわかってないこととかがある感じ?


最近よく同じようなこと言われてるけど、未だにわかってない……ような……。


あれ、私、もしかして鈍いのか?





「……まあそんな鈍いところも芹菜さんらしいですけどね」

「やっぱり鈍いの!?何が!?」

「ふふ……、言いません」

「えっ、なんで!?」

「気づいてない芹菜さんをみていると楽しいので」

「それいじめじゃんんんん、どんな楽しみ方してんの!?」




いたずらっ子みたいな笑みを浮かべる柚子。


そんな顔も可愛いけど、可愛いけどさ!!


じ、焦れったい!!

このなんかもやもやとしてる感じが、どうも気になってしまう。




気づいてない、か……。




…………。





ポンッ


「わひゃああああああ!!??」



しばらく考え込んでいると、誰かに肩をポンッとされて思わず叫んでしまった。





「……ひとりで何してんの」

「え、か、翔音くん……?」



振り返ると、さっきまで女の子に囲まれていた翔音くんがいた。



あれ、いつの間にあの人混みかきわけたの!?


っていうか、ひとりって……、隣には柚子が……。



そう思って隣を振り返るが外にある屋台だったり、ステージを見に来ている人だけで、柚子の姿はどこにもなかった。



あ、あらー?




「おかしいな、さっきまで柚子といたんだけど……」

「………」

「あ、そうだ。ミスコンお疲れ様、翔音くん」

「……ん、ありがとう」

「もう少し早く言おうかと思ってたんだけど、翔音くんかこまれちゃってたから」

「………………………」




沈黙が長いな。

やっぱり抜け出すの大変だったのかな。




「玲夢も柚子も言ってたけど、翔音くんの人気ぶりはすごいって!!私も思ったけどさ」

「……抜け出すの大変なんだけど」

「や、やっぱりそうなんだ」



私は苦笑いになる。



あ、そうだ、あともうひとつ疑問が……。




「翔音くんさ、名前呼ばれてステージ立った時、私と目合った、よね?」

「……?ん、」

「ええっと、じゃあ、そのとき笑ったよね?」

「……うん」

「あ、今回は自覚あるんだ。なんであのとき笑ったの?」

「……芹菜がいたから」

「……えっ」




それって笑った理由になってるのか?


っていうか、あの、……うん、ねえ?



「……芹菜、また顔赤い」

「っ、うっさいわああ、言うな馬鹿ああああ」

「俺より芹菜のほうが馬鹿でしょ」

「えええいきなり暴言吐かれた!?」

「……よく顔赤くなるね」

「だっ、誰のせいだと思って……っ、!!」

「……俺なの?」



きょとんとする翔音くんにさらに真っ赤になってしまう私。


みんな私を鈍いとかいってるけど、私より翔音くんのほうがよっぽど鈍いでしょこれ!!



ああああもう逃げたい、ここから逃げ出したい。


なんでこんなに顔熱いのかなあ!!



私が見えたから笑った、だって?


なんで?


笑うときって、嬉しいときとか楽しいときとかだよね。



……え?


嬉しい……?

私が、見えたから……?



そこまで考えて、また一気に顔が熱くなってしまってそれ以上考えることができなかった。




「〜〜〜っもう私、クラスの仕事に戻る!!」



だめだ、考えても何故か恥ずかしくなるし、頭もうまくまわらない。



とりあえず頭を冷やすために私はくるっと向きを変え、校舎内に戻る。






はずだったのに。




ガシッ


「待って」



翔音くんに腕を掴まれた。



おいこらああああここで腕掴むとかやめてえええええ、余計に恥ずかしいでしょなんか!!





顔だけ翔音くんに向き直る。


ああああ、絶対まだ顔赤いよ。

どうしたの私、ほんとどうしちゃったの?



しばらく掴まれたまま沈黙が流れる。


え、何、用があったんじゃないの?




「………俺、」

「……、な、に?」







「……あー、たこ焼き食べたい」

「それ私の顔色みて思いついたろ」



この美少年は空気を読まない。


いや、でも今回ばかりは助かったのかもしれない。



ほんと、さっきみたいな緊張は、居心地が悪いわけじゃないけど、思考が働かないし、うまく喋れないし、……なんだろうね、コレ。





「ねえ、翔音くん、女装に戻らないの?」

「……俺の素顔は男だから”女装”には戻れない」


屁理屈だ。

まあ要するに戻りたくないんですね。




そんな会話をしたのはだいたい30分くらい前。


ミスコン終わった後、お腹もすいてきたので、他のクラスが出しているお店でいろいろ買って食べていると、何人もの女の子たちが集まってきてしまい、「翔音くん(先輩)の女装見たいです!!」とせがまれ、あれよあれよと自分のクラスに引き戻されてしまった。






「……………………」

「翔音くん、人生こんなもんだよ」



私はポンと肩に手をおいた。


女装に着替え直した彼があまりにもどん底みたいな顔(雰囲気)してるから。




でもそれとは別に、売り上げのほうはかなりの黒字。


だってうちのクラスには、翔音くん、剣崎くん、柚子と、ミスコンの1位2位3位がそろってるんだから。


むしろミスコンが終わってからはほとんど休む暇もなくお客さんがくるのでものすごく大変だった。






そして、時刻は17時。
2日間の学園祭が終わった。





「つっかれた………」



男装からいつもの制服に着替え、学園祭のセッティングのままになっている机にダイブした。



午前よりむしろ午後のほうが忙しかった。


というかお店のほうばっかりやってたからほとんどまわってなくない!?



まあその分売れたからいいけどさ。






「お疲れー芹菜チャン、大変だったねー」



他のみんなも着替え終わると、新井くんがこちらの机に来た。




「……新井くん、なんか、久しぶりって感じがするんだけど」

「うん、俺ほとんど教室にいなかったからねー」

「え、何故!?」

「芹菜チャンたちが戻ってきたから宣伝する人がいなくなったでしょ?あれ、俺と、あと店番じゃない女の子とまわってたからね」




なんだって。




「だ、だって新井くん、女装のまままわるの嫌だって……!!」

「嫌だね。でも宣伝も仕事だから」



真っ当なこと言っているように聞こえるけど、顔はものすごーくいい笑顔。


今の言葉、裏を返せば”教室で店番大変だから逃げてきちゃったー☆てへぺろ”ってことだよね。



「間違ってないけど、てへぺろーなんて思ってないよ」

「でたなエスパー新井!!でもなんかそんな感じだったんだよ顔が、てへぺろ言いそうな笑顔だった!!」

「俺がそんなこといったらどう思う?」

「…………やってみて」

「てへぺろ」

「………………なんかエロい」

「ありがとう」

「ほめてないし!!」




新井くん、未だに謎な人だ。





「そういえばこの後後夜祭あるんだよねー」

「え、あ、そっか、忘れてた」




この後18時半から始まる後夜祭。

まあどの学校もだいたいキャンプファイヤーみたいな感じでダンスとかやるんだろう。

この桜葉学園も例外ではない。




「とりあえずダンスはパスかな。私踊れない」

「じゃあ俺と踊る?リードしてあげるよ」

「新井くんダンス踊れんの!?」

「人並みにはね。ただし足踏んだらお仕置きね」

「バンジーか?それともバニーか?」

「どっちもってのも面白いねー」

「逃げるが勝ち!!」




新井くんならやりかねない!!


私はダッシュでその場を逃げ出した。







そろそろ後夜祭が始まろうとしていた。

あたりも暗くなり始め、メインとなる櫓(やぐら)に火が灯された。



随分大きな櫓だなー。

あのまわりでダンスやるんだよね。

私は傍観者になろう。









「藍咲さん」



後ろから誰かに呼ばれて振り返る。




「……あ、」



「……昨日ぶり」




そこにいたのは剣崎くんだった。




「早いね、ここ来んの」

「うん、まあ、逃げてたらここ来ちゃったみたいな」

「逃げてた?何から?」

「エスパー新井くんから」

「……っくく、懲りねーなあ、あいつも」


ケラケラと笑う剣崎くん。


私は教室でもよく新井くんとさっきみたいな会話してるから、クラスの人なら想像はできるみたいだ。





「あー、なあ藍咲さん、」

「うん?何?」

「……ちょっと、話さねぇ?」




そういう彼の顔は、どこなく寂しそうに見えた。



45.ほら、早く気付いて?

(……話って、なんだろう、)

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