AM9:00 | ナノ


覚醒からの第一声に綺麗な黒髪もくしゃくしゃな状態で思いつめた表情で紡いだ。
「首括ります」
「待って待ってそれ亀甲だから!」
蜜蜂くんが草臥れたネクタイを首にかけて結び目を複数作り出したので取り急ぎ止めに入る。
どんだけ錯乱してるのか、やっぱりもう一度寝たほうがいいかもしれない。
体躯の差から如何しても支えきれずに縋るような形になってしまう。
身体の強張りが伝わって此方が申し訳無くなってきた。
耳が仄かに赤くなった辺りで妥協して置けば善かったろうに、否、こうなるまで付き合わせた上司達の責任だろう。
その癖何かあれば直ぐうちに押しかけるのも控えてほしい。

「うち薬とか無いんだけど、水持ってこようか?」
誤って首を絞めないようにネクタイを外しながら彼の顔色を窺う。
とても良好とは謂えないけど幾分か調子が戻ってきて決まりが悪そうに目線を逸らした。
「あの、無責任ながら見事に記憶が無いんですが……先輩に何か粗相をしませんでしたか?」
「ん、別に」
昨晩は酔って服に嘔吐された程度だ。
どうせ二枚でニキュッパだったし、わたしは許容イコール愛だと考えているから差し支えない。
普段から弱いところを晒してくれないから寧ろ嬉しいなどと思ってる。

「……部屋をアルコール臭くしてしまってすみません」
「あははは」
「オフの日にまでお邪魔してしまってすみません」
「じゃあ回復したら一緒に朝ご飯でもつくろう」
そう謂うと僅かに目を瞬かせた後何故か溜息を吐かれた。
意図が解からず首を傾げると切実そうに眉を下げる。
なんとあらわすべきか、ただ見慣れてるからなのか彼にはこういった表情がよく映える。
「常々思ってましたが本当に……いえ、先輩が男だったら嘸ぞタラシだったんでしょうね」
「ど、どういうこと?」
「そういうことです」
煙に巻く言い草に困惑するわたしをみて蜜蜂くんは漸く笑った。


AM8:32/110217

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