ジャリ組 | ナノ


天を向いた角と耳。広く深く裂けた口から覗く逆三角形の牙。
180度見渡せるのではないかと疑うほどの磨かれた硝子球がぎょろりと光る。
人鳥君がぎゅ、と袖を掴んできたので庇うようにぎゅう、と抱いた。
抱いたもののわたし程度では時間稼ぎすら危うい。
さんざ自覚しているけどせめて表には出さないと、焦らすほど鈍い動作で腕を振り上げるのを唾を飲みながら構えた。

 ぱん!
「!!」
虚を突かれた破壊音に思わず人鳥君とひし、と抱き締めあう。
それが差し出された風船が破裂したのだと気づくのに時間を要した。
アトラクションの着ぐるみの背の向こうで白鷺たちと一緒に別行動だった蝙蝠が機嫌良さげに笑っている。

「つーか人鳥はともかくあんたはどこまでチキンなんだよ。お譲ちゃん今年いくつだっけか?」
「少なくとも貴方に心配されるようなチキンじゃないからご心配なく、ねえ人鳥君」
「そ、そ、そうですよ、一見地味と思って見縊らないでください!」
「地味……」
胸にしみた。
「ったくようかわいいねえ、だっせえなー」
「ひどいよ、大人しく絶叫系並んできなよ!」
「お子様2名をお迎えに来てやったんだろーが」
「あんなぐるぐるぐるぐるぐるぐる落ちる奴絶対嫌だ……!」
「きゃはきゃは、煽んな煽んな」
「わ、来ないで、しっしっ!」
着ぐるみを挟んでじりじり距離を取るもこの場で可哀相なのは中の人だった。

「やれ今日は随分テンション高いな」
「人鳥ちゃんと揃って遊園地デビューだもんねえ」
「ああしていれば普通の女子と変わらんのだがな」

「保護者に徹さないで援護してください!」現役女子学生、夢の国初体験。入場早々逃げ腰。


ジャリ組/110202

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -