西谷? | ナノ


※東峰視点

本人に自覚があるかはともかく、態度は誤魔化しようもない。西谷が彼女を好きなのは一目瞭然だ。例えば、清水に向けるような憧憬や尊崇といったものでは無く、欲望を宿した獣性の眼差しで彼女を追っている。何よりも眼が語る。彼女が誰と話している時でも、ギラついた剥き出しの嫉妬心が常にそこにあった。彼は恋をしている。だからといって俺にしてやれることなど無いし、向こうも望んじゃいないだろうけど。長くは持たないだろうということも何となく予測もついた。

「私、西谷くんが好きかもしれない」
数日前まで弟ができたようで嬉しいと笑っていた彼女とはあまりに離れた言葉。俺にというより自身へ問いかけるように呟いた横顔は戸惑いと恐れと期待で乱されている。告白されたのか、或いは別の何かがあったのは明白だった。
「東峰くん、その、西谷くんのことで何か知らない?」
不安げに伺うように此方を見上げる視線に不甲斐なさを思い知る。少なからず西谷に同情してしまう。自分のことは徹底して鈍いのにどうしてこういうところだけ鋭いのか。
「いや…でも、あいつはいい奴だよ」
言ってて情けないほど空々しい台詞だったが、彼女は控えめに笑って頷く。
「私もそう思う」
耳に馴染む彼女の声に、ひょっとしたら本当は全部気づいていたのでは無いかと思った。俺にとって西谷も彼女も大事な仲間で二人が上手くいってくれるなら十全だと考えていた。だというのに何故今の俺は疎外感を感じているのか。せめて応援する気持ちくらいは本当だと信じたい。


130225

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