アール | ナノ


シーツに包まり膝を抱える姿は子供にしか見えないというのに、髪の隙間から覗く朱に染まった耳だけで煽られる己もどうかと思う。懸念するほど軽い身体を抱き起こすと、首に腕を回して彼女にしては珍しく自ら口唇を重ねてきた。案の定すぐに離れようするのを捉え、角度を変えて再び食らいつく。柔い上唇を軽く食んで口を開かせ舌をねじ込む。狭い口内を荒らしては甘い唾液を飲み下した。
「ぁ、アールさ、ん」
「はっ……可愛いな」
果実のような匂いが鼻腔を擽り、本当に気がおかしくなりそうなくらいだ。濡れた睫毛と目尻に浮かぶ涙が容赦無く加虐心を波立たせる。紅潮した頬を指で撫ぜれば猫が心地よさげに擦り寄る姿を連想させた。
首筋に顔を埋めればむずかって首を左右に振る。構わず薄い皮膚に吸い付いてやると咎めるように後ろ髪を引っ張られた。彼女が身をよじったおかげでシーツが床に落ちたらしい、押し殺した声に唆られるまま裾へ突っ込んだ掌を直に肌に滑らせる。
「一人で寝たく無いんだろ?」
「でも添い寝だけって…」
「ふうん?さっきのは誘ってくれてんのかと思ったけど」
腕の中で身体を震わせながら縋る眼で見つめられて、これ以上恥をかかせるのも気がとがめた。据え膳は食う主義だ、逃す手は無い。愛しげに微笑んだら顔を真っ赤にしたまま眉間に皺を寄せられた、どうやら全てお見通しらしい。


130112

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テーマ「人外ファンタジー」
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