レーム | ナノ


花の淡い匂いに目を瞬かせた。意外そうな表情が出てしまってのだろう、レームさんはおどけた様に片眉を持ち上げる。珍しい、こういう役は大抵ヨナ君かバルメさんだと思っていた。(私だからか)周囲から言わせれば私は彼に弱いらしい。慕っているという自覚はあれど、弱いというよりは甘いというのが近しい気がした。
「似合わんだろう?」
「いいえ」
確かにこの人といえば硝煙と煙草のイメージがすっかり染み付いてしまっているように思えるが、鈍く光る大きな黒いエモノを背負い、白い花束を手にする姿は中々絵になっているように映る。
「とっても格好いいですよ」
「嬉しいこと言ってくれるねえ」
レームさんが歯を見せて軽く笑う。かたい掌で頭を撫でられて、頬が緩みそうになるのをこっそり堪える。誤魔化せるような人では無いと分かっていても、単純さを指摘されて恥をかいた経験も少なくない。
「わざわざありがとうございます」
墓参りに赴くだけにも護衛が必要とは情けない、などと悲観したら笑い飛ばされるだろう。実際そんなやり取りも嫌いでは無かったけれど。歩くたび揺れる白い花をみつめて彼の隣に並ぶ。
「私この花好きなんです」
「そりゃあ良かった」
レームさんは視線を一度だけ此方へ向けてそれきり詮索はしなかった。自分から話すまで待ってくれているのか、それとも既に知っているのか。空気を壊すのを恐れて沈黙で答えると了承したようだった。本当に付き合いのいい人だ。
「隈できてんぜ。美人が台無しだ」
「うわあ、わかります?」
「あんたの顔は天気見るより分かり易いからな」
私の力無い悲鳴に笑い声が重なった。双方の足取りは飛べそうな程軽い。


130109

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