キャスパー | ナノ


口元の笑みを浮かべたまま、私の顔半分を覆う四角形の絆創膏に目を留めた。取り繕うこともできないうちに彼の両手が私に伸びる。
「おいおい、君はいつからこんな化粧をするようになったんだ?」
あくまで笑いながら、頬を隠す絆創膏を勢いよく剥がされた。痛みに顔を引きつらせると更に笑みを深くさせて距離を縮めてくる。
「近い、近い、近いです」
彼は独特な笑い声を上げるだけで聞いてはくれない。傷の深さを確かめるように傷口付近の皮膚を指で好き勝手に探る。引っ張られる痛みに声を上げると満足そうに笑う。仕上げにちゅう、と傷に唇を落として顔を上げた。
「誰にやられた」
愛しげに目を細めてそんなことを言う。そんな彼を憎く思えないからこそ、行き場を失った掌に嫌な汗が滲む。
「わ、忘れました」
「くっ」
堪えきれず吹き出して一人でケタケタ笑い出す。見ている此方が空虚になるような笑い方に眉尻を下げるしかない。彼は一通り笑い声を上げた後、私の背に腕を回した。逃げられぬよう拘束してから大事そうに力を込める。
「いやぁ、君は本当に素直で可愛い」
子供がお気に入りのぬいぐるみに身を寄せるときの仕草に似ていると思った。無理やり暴かれた傷口が空気に触れてヒリヒリと痛む。私はとうとう溜息をつく。


130107

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