紅玉 | ナノ


彼が同情を受けて快く捉えるような人間でないことは解っていた。
優しい彼に甘えて知った上で続けていたのだから仕方ない。
止められなかったのだから仕方ない。
「好きだから、止められないの」
無茶してないか怪我してないか寂しくないか、全部私の勝手なお節介。
「ばっかやろ」
呆れ顔の火神くんにデコピンをもらう。
じんじん痛む私の額以上に火神くんの耳が赤い、彼の照れ隠しが下手くそで良かった。
「そんなに心配ならここ居ろよ」
その言葉の意味を深く受け取ってしまう程度には私は彼にのぼせている。
「私、火神くんを一人にさせたくないって思ってるよ」
「………」
「火神くんが一人になるのは嫌」
「知ってる」
乾燥した固い指の腹がそっと私の頬に触れる。炎を纏うようだった。
「その代わり、お前も俺にちゃんと頼れ」
性格を示すような真っ直ぐで甘く、不器用な声色。
信じられないくらい綺麗で強く、優しい、そして脆い紅玉の瞳が貫く。
「俺の為に傷ついたら許さない」
こんなに粘着質な女に捕まった可哀想な貴方。その笑顔があるから今日も息ができる。



121110/紅玉

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