肝試し5 | ナノ


一応、青峰君もぴんぴんしている。元気すぎてこわい。一切の干渉を許さず一方的に攻撃するなんて彼のような存在は霊にとっては天敵だろう。あと私含め、他の皆も大事なく、精々塩ぶっかけて冷水浴びたくらいで済んだ。夏で良かった。

そうして水を浴びた今、私と黄瀬君は赤司君の前に正座させられていた。そうです、今回の反省会という名の制裁です。一部の人を除き皆の気の毒そうな視線が辛い。一部の人こと青峰君は赤司君と桃井ちゃんに連れられてきたけど半分寝てる。合流直後、ふらふらの黄瀬君に飛び蹴りをかまして自分のうっ憤は発散し終えているから後は好きにやれ状態。自由すぎる。紫原ちゃんは(ひょんなきっかけからできた彼の愛称)言わずもがなスナック菓子を頬張っている。彼は事の初めから終わりまでずっとこれしかしていない。

「黄瀬君は病み上がりだしお手柔らかに…」
「どうみても自業自得です」
「同情する気も起きないのだよ」
「とりあえず黄瀬が悪い」
「うわあああんみんながつめたいっすー!!」
「涼太」
「ごめんなさい…」
両手で顔を覆って泣き崩れる黄瀬君の頭を撫でる。悔しさを通り越して感心するほどサラサラした金髪が指を滑った。黄瀬君の潤んだ目が指の隙間から此方を見上げる。ぐしゃぐしゃになってるけどそれすら一々綺麗だった。それを見て赤司君が意味深げに肘をつく。
「まあ、涼太だけの問題と一言で済ますこともできないか…いい機会だ。今後の為にもここでケジメをつけよう」
目線を向けられて身が竦む。大きな挟の映像は真新しい。その台詞の意味を理解する間も与えず続ける。

「ここにいる全員、お前が霊感体質だと知ってるよ」
「な……っ!!?」
勢いよく身を起こす。でも明らかに動揺をしているのは私だけだった。皆の顔を見たら言葉なんてでてこなくて、再びその場にへたり込む。あまりのショックに思考が追いつかない。既に知られていたことをずっと隠そうとしていた自身に。気味悪がられたくない、電波扱いされたくない、そんな卑しさから隠し事をしていたことを気づかぬ内に知られてしまってたことに。だって私は赤司君や緑間君を知っていた。詳しい事情は知らないけれど、自分だけが厭だと彼らを蔑にしていたことと同じだ。最低だ。
「は?オレ知らねーんだけど」
「「「「バカ乙」」」」
青峰君の怒声も耳に入らず放心している私の手を黄瀬君が握った。変わらず潤んだ目で、でもずっと真剣な顔で。こんじきの視線。
「好き」
「へ」
ふにゃ、と表情が緩む。
「へってすか…、ヤ、でもいいや、なんでも」
火照った頬。あ、かわいい、などと和んだ隙に強く手を取られる。金髪が視界の端で揺れて。ぷちゅ。頬にキスされた。文字通り小鳥がつついたみたいな感触に頬を手で押さえたまま、黄瀬君をみつめる。花が咲く笑顔とはこういうことを言うのだろうか。
「わーい、奪っちゃったっす」
硬直した身体にガスコンロをひねったような火がつく。挨拶、スキンシップといったものに縁の無い私がはくはくと口を閉口させてるうちに、黄瀬君の顔面に鈍器が激突した。ふぎゃとかぎゃんとか子犬の悲鳴を上げて倒れる黄瀬君、良く見れば鈍器は有り難い塩の入っていた紅褐色の壺だった。
「認識できたか?」
後ろから伸びた手が両手で私の顎と頬を固定する。力など入っていない手に首を抱えるように包まれて一瞬にして背筋が凍った。正座した私を指で首を仰け反らせて強引に目線を合わせられる。厭な予感。
「ほら、お前を他人と思う奴はもういない」
「……!」
逃げ道は塞いでやったぞと言われた気がした。一気に血の気が引いていく私を他3名を覗いて黒子君と桃井ちゃんが気遣うようにみる。
「そんなに気負う必要は無いんですよ?」
「これからは何でも頼っていいからね!」
私はこれから巻き起こるだろう災難を思い両手で顔を覆った。絶対に巻き込むだろうし巻き込まれるだろう、道連れにハマっていく展開が安易に予想できる。
(……肝試しなんて嫌いだ)

120828/七話了

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