肝試し3 | ナノ


目を覚ましても辺りは暗く、気分も最悪だった。(何今の走馬灯?こわ…)中学時代の夢をみて、湧き上がるのは羞恥心と後悔と憎らしさ。子供に笑われるほど単純でかっこ悪い動機。ひとつだけ上げるとすれば、オレが彼女を好きだということだ。
廃墟を見つけたのは偶然で、肝試しといったのは口実だった。なんでも構わないからきっかけがあれば今日こそ訊き出せると思っていた。高校にあがって学校が変わってから会う機会はがっくり減って、今思えば切羽詰まってたんだろう。だってそうでもなければ、「幽霊がみえるのか」なんて普段は訊けない。今までだってそれとなく話題にあがっても下手な嘘で流されてしまったのだから。ああそうだ、オレは彼女に隠しごとをされていてそれがずっと気に食わなかった。中学の頃さんざん悩まされて苦しめられていたのに、彼女はとうとう打ち明けてくれなかった。同類だと一言伝えてあげれば良かったのかもしれないけれど、それは結局彼女が望んでオレを受け入れてくれるわけじゃない。彼女がつくった壁を彼女の手で壊してオレと向き合ってほしかった。今思えばなんて身勝手な男の理屈なんだろう。ただ赤司や火神に嫉妬していただけだ。今も、オレのヘマでこんな状況に陥ってるわけだから、目も当てられない。赤司からの処罰が恐ろしい。
「っつーかその前に青峰っちがキレんだろうなーやだなー」
彼女は無事に合流できただろうか。いつもメンツなら誰かしらに保護されてるだろうけど、オレの所為で無駄にトラウマを増やしてしまうのは忍びない。というか今回の件で嫌われてしまったらどうしよう。うわ死にてー。
「……まー今まさに死に向かってるとこなんスけど」
取り憑かれるた身体は腕一本自由がきかない。意識が朧で身体が鉛のように重い。きっと『この子』が生前死ぬ前の症状だっただろう。見つけたあの廃墟は元は病院だったらしい。といっても病院だったのはかなり昔で、すぐに別の施設となったがそれもあっけなく閉まってしまったようだ。この子が『入ってきた』とき、大体理解した。確かな物量となったこの子の思念が流れ込みオレと同調する。この子の気持ちもオレにはほんの少しだけ分かる気がして、仲間意識のようなものを感じた。好きな人との子供ができて、でも認知してもらえず、事故に遭い流産となってしまってもただ慌てるばかりで
何もしてくれなかったらしい。心の支えを失くしてそのまま自分の体調もどんどん悪化して亡くなったそうだ。
「片思いは辛いっスよね…でも、オレも行かなきゃ」
背中を預けていた木の幹から身体を起こす。途端、前のめりに倒れそうになるのを辛うじて耐えた。やばい、感覚ないからわかんないけど膝がすげー笑ってる気がする。胃袋ごとゲロりそうな嘔吐感と戦いながら、どうにか前を見据える。まだ伝えられていない。自分の気持ちは黙ってた癖に、話してくれない彼女だけ悪者にしようとした。話して欲しいならまず此方から話さなければいけなかった。だからこそ、ここで終わらせるつもりなど毛頭ない。
(これは試練だ!愛の力で乗り越えろオレ!)


120826/五話了

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