肝試し2 | ナノ


青峰君が消えていった暗闇を見つめたままの私をみて、何が言いたいのか察した黒子君が肩をすくめる。
「あの場で止めて聞くと思いますか?見ての通り、逃げ足速いんで心配ないですよ」
「わぷっ」
宥めるように言いながら私に遠慮なく塩を振りかける。
彼の言うことも尤もだ。たとえ今から私が追いかけてもあんな無茶苦茶な人についていけるわけが無い。今やっと合流できたのに足手まといにしかならないだろう。
「それでもバラバラで探すのはやっぱり危険だとおもう」
「彼等は個人プレーの方が強みを発揮しやすいでしょう」
「バスケじゃないんだから…」
でもそんな黒子君のいつも通りの返答に今は救われる。
彼だって不安で仕方ないだろうに、ずっと大人だ。
「お互い様でしょう。これだけ恐い思いしておきながら、もう立ち直ってるんですから。普通の女子だったら泣いて引きこもってます」
「それって実は褒めてないんだね?」
「まさか」
黒子君は優しく笑ってくれた。
「貴方が無事で良かった」
「黒子君も」
小さな笑い声が車内に落ちる。
鳥肌は未だに病まないし耳も痛いけれど、黒子君が平常を保ってくれているから大分期が楽だ。二人しかいないワゴン車は広すぎて数時間前までの騒がしさが嘘のように感じる。あれからまだ2時間経ってないなんてあまりに夜は長い。下宿の人が出してくれたワゴン車は普段は誰も使っていなかったのか、窓ガラスがとても曇っていて只でさえ暗い外がより見え難かった。
「今思えばそれも怪しかったですけど」
何やら不穏なことを口にした黒子君に視線を投げる。
「そちらに関しては桃井さんが調べてくれています」
「桃井ちゃん…恐いの好きなのにまた関われなかったね」
「ある意味羨ましいエンカウント率ですよね…それはともかく」
黒子君が携帯を取り出す。カチカチプッシュしてたと思えばそれを耳にあてたのでメールじゃなくて電話だと理解する。そういえば私の携帯も下宿に置いてきたままだ。きちんと電波が通っていたのか程なくして繋がったそれを彼は私に差し出す。
「皆さん、すごく心配してましたよ」
その言葉に何も言えなくなって、彼の顔をみつめたまま恐る恐る携帯を耳に当てる。無機質にふれて、この時漸く自分の指が驚くほど硬く冷たくなっていることに気づいた。
「えと、ごめんなさい、私が、黄瀬君とはぐれたから…」
『言い訳はいいからとっと帰って来いやこンダァホが!!!』
『無事なのね?怪我ないのね?ほんっとアンタって子は手がかかるんだから!』
『この二人がビービー泣きまくって大変でなー、早く帰って来てやれ…って言いたいところだが、身動き取れないんだよな?』
「はい。僕は足場としてここを動けませんし、かといって彼女を一人で行かせるのも危険です」
怒涛の攻撃に呆気にとられている私を余所に横からひょいと携帯をとって黒子君が答える。私はというと先輩たちの声を聞いてふるえていた。さっきまで吹っ飛んでいた癖に部の皆が恋しくて、はやくかえりたいと思った。
『だよな、打開策はあるのか』
「はい、一応」
驚いて黒子君を見る。淡々と彼は続ける。

「赤司君を呼びます」

120825/四話了

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -