幼馴染 | ナノ
眠そうだね、柔らかで心地のいい声音と共に伸ばされた指が目尻に触れた。
じわり彼女の体温が浸みていく感覚に緩やかに瞬きをして返す。
ぬるい弱音を吐く代わりに彼女の肩へ凭れかかれば緊張から小さな身体が身じろいだ。
幼い頃から変わらない黒髪が肩から零れるのを視界の端で捉える。
「なに」
「団扇、あつくない?」
首の後ろを頼りない風が撫でていく。
相変わらずの非力さと、僕を離してまでクーラーのリモコンを拾おうとしないところに笑った。
駄目だな本当に思考が低下している。
とっとと団扇と取り上げて白い布団に誘わないと。
:
おや、と顔を覗き込むけど今の体勢では表情までわからない。
微かに聞こえる寝息とゆるやかに上下する肩にちょっと本気で驚く。
珍しく素直に甘えてくれたかと思えば、今日は一体どうしたのだろう。
弱いところを晒すのを一番怖がってる筈なのに。
(辛い悩みじゃありませんように)
扇いでいた団扇を置いて彼の深紅の髪に頬を寄せて祈った。
赤司君と幼馴染/120823