掌 | ナノ



咄嗟に伸ばした手は何なく制されるどころかそのまま引かれる。体格差だけでない男女の違いをそのまま捉われた手首が示している。逃げることも耳を塞ぐことも許さず、それでもギリギリで手加減していると解かる。
好きだと告げた言葉は御世辞でも言い訳でもない。ましてや恋愛対象に見れないわけでもない。今の立場で言えた権利でもないのは承知の上で、決して軽い気持ちじゃなかった。何だってしてあげたいと思うし、たぶん何だってしてあげられる。でもそれだけなんだ。わたしにはそれしかない、つまらない女だ。(だって、貴方は私の夢だから)未来を約束されてる。望めばいくらだってなんだって出来てしまえる。そう私など最初からお呼びじゃない。才があり、努力家で、環境にも愛されてる。だから言わないで。
「好きだ」
彼は強い眼で一言だけ零して手の平に唇を押し付ける。


In die hohle Hand Verlangen,(120810)
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