瞼 | ナノ



目蓋に軽く口付けるとむず痒がって身を捩る。寝起きのとろとろした眼差しを無防備に晒して緩慢に伸びた手に耳を引っ張られた。
「ちょ、痛い痛い!」
「ピアスがまぶしい」
逆光ですごいチカチカする、と目を擦りながら寝返りをうつ。寝汗で肌に張りついた髪と白い首筋に滲む汗がいい具合にやらしい。というか起きる気はないんだな。引っ張られた耳朶を抑えつつベッドに乗り上がれば何だか素敵な体勢になる。枕元に腕をついていい眺めだなんて思いながら手懐けられた犬みたいに飼い主にすり寄る。
「フレンチトーストつくってくれるって言ったじゃねーッスか」
オレは雄犬だ。恋しく鳴いて尻尾振って頭の悪い犬になる。
「起きてよ」
枕に貌を埋めようとする彼女の乱れた前髪をかきあげて目尻にキスをした。そうすると気だるげな手がやわらかく髪を撫でてくれる。手首がちょっと赤くなってた。また寝てるうちに引っ掻いたのか。赤くなった患部を擦って握り返す。本当はぎゅっと力を込めて体重だって全部乗せて潰してしまいたいくらいだったけどそんなことしたらずっと起きれなくなってしまう。
「……なんでにやにやしてるの」
わかってる癖に。

Freundschaft auf die offne Stirn,(120804)
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