頬 | ナノ



「桃井ちゃんの髪っておいしそう」と言えば、「むっくんみたい」と彼女は少し恥ずかしそう笑う。「き、気をつけてね」と不安になって言ったら「心配してくれるの!」と嬉しそうに笑う。細くて長い、柔らかでいい匂いのする髪がふわふわと流れるのを見てやっぱりおいしそうだなと今度は心中思う。手を伸ばして遠慮がちに髪の先を拾ってみる。枝毛どころかなんの痛みも見当たらない。先の方は少しだけ色素が抜けて溶けるようだった。目線だけで強請ってみれば、少しだけねと目線だけで返された気がして、本当になんとなくなんだけどそれだけで手に取った淡い色の長髪にキスを落とす。お姫さまでも口説いてる気分だった。お姫さまは照れたようにして、でも笑みをますます濃くして寧ろ上機嫌に身を乗り出す。するりと白い手が頬を撫で、指先で輪郭を辿り躊躇いなくそこにキスされた。
「こっちのがずっと美味しそう」


Auf die Wange Wohlgefallen,(120803)
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