それ以外 | ナノ


鈍く痺れる患部からなるべく意識を逸らそうとアチラコチラへ視線を迷わせて、ああこれが目が泳ぐということかと理解する。鼻をすっと抜ける清潔な匂いがかえって緊張を濃くしていく。何故こんなことになっているのか。
「足を洗う為だろう」
「……テレパシー?」
「おまえとは波長が合いやすいからな」
赤司君は目を細めてお茶目に嘯く。

些細な不注意は怪我の元だ。内側から出血したのかひび割れたつま先から血が滲む。剥がれなくて良かったけれど赤司君は眉を顰めるて首を振る。歪めても綺麗な顔立ちとはどういうことなんだろう。このくらい気にしないといっても淡々と真っ当に返された。
「菌が入ったら困るだろ」
その通り。彼はいつだって正しい。いやでも何で?如何して赤司君に足を洗ってもらうことになってるのかが知りたかったのだけれど。
少なくとも本当に心配してくれてるんだろうな。余計なことに時間を割こうとしない人だ。私は彼が優しくないところを見たことがない。だからこそ逆らえない。

跪くように私の前に屈んで靴を履かせるような動作で踵を固定する。当事者ながらすごい光景だった。こんなところ誰にもみせられない。特別長いわけでもないのに何故かバランスよく見える指。短く切りそろえられた爪は全て整った形をしている。触れられ指の腹の部分、一見柔らかそうにみえるのに男性特有の硬さを持っていた。
「手のかかる子だね」
あ、と思ったときには遅い、醜く欠けた爪先に赤司君の唇が触れる。息がかかった次の瞬間噛みつかれて情けなく悲鳴をあげた。


Ubrall sonst die Raserei. (120803)
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