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恋人を支えるのは当然だなんて一丁前な夢見事を日頃恥ずかしくも思っていたわけだけど、実際寝不足の恋人に圧し掛かられた私は彼ごとドミノ倒しの如くぶっ倒された。後ろが彼が寝転がれる程の大きなベッドだったから悲惨な事故にはならなかったものの、あまりの圧迫感に本気で息が止まった。私は彼自身の体で全身を縫いとめられてその分深くベッドが沈んで、私の思考は素っ気無い天井と直ぐ傍の汗と整髪剤の匂いで埋め尽くされる。
「た、た、大我君!」
動揺のあまり悩まされる相手に助けを乞う。重い、重すぎる。彼はいつもこんな重さで立ち、歩き、走り、飛んでいたのか。そして普段どれだけ手加減をされていたのか思い知らされる。
「ねえ、苦しい・・・」
視界にちらつく赤髪に縋ると部活中からは考えられない鈍い動作で首が僅かに動く。
「・・・っくしょ、頭痛ぇ・・・悪ぃ、大丈夫か?」
すごくしんどそうな声に直ぐに髪を撫でて背中を擦ってあげたくなったけど私の体はびくりともしない。歯痒くて仕方なくて、苦し紛れにギリギリ動く首を振って、動物がじゃれるように大我君の肌、ちょうど項辺りに鼻先を擦り付ける。かっと彼の身体が発熱するのがわかった。十分間を置いて勢いよく上半身を持ち上げる、丁度腕立ての体勢。その表情をみて、ぞくりと背筋に何かが走る。今まで彼にこんな目を向けられたことがあっただろうか。別人だと錯覚しかけた。火傷しそうな視線、動物のようなむき出しの疼き。
「った、」
「大声出すな響くだろーが。あと目ぇ閉じとけ」
大きな口で塞がれたかと思えば湿った分厚い舌が入ってきて、別の生き物が侵入する感覚に身体が震える。探しものでもするように急いた動きで咥内を暴く。彼は舌まで大きいから窮屈そうだった。呼吸の合間で吐かれる私の名前に熱が高まった。
「ん、ぅ・・・ふ、」
私はすっかり逆上せ上がってお互い身体を密着させる。おかしな事態に酷く現実感が欠けていた所為かもしれない。大我君が唇を離すと私のだらしなく開いた口から唾液が零れる。
「甘ぇ・・・」
喉を鳴らしてそれを飲下す肉食獣がこのまま大人しく眠ってくれるように祈った。それでもお腹がすいたというのなら当然断ることはできない。


delta/120722
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