おやつ | ナノ


火神君は食べるのが上手じゃなくて、正確にいえば食べ方が大変子供っぽい。何時までも口の中をもごもご動かすのは行儀がいいとはいえないし、彼の将来の為にならない。なんて思ってしまう私はお節介なおばさんみたいだなと自覚もするのだけれど。彼の食べる姿を見守りつつ呟けば、ごくんと丁度それらを胃に納めた本人が片眉を上げる。
「おまえだって人のこと言えんのかよ」
脇から伸びた大きな手に顎を捉えられて言葉に詰まる。喉元にぴたりと触れたそれがまるで首を絞められてるようで呼吸も止まった気がした。けれど、一瞬後にはその固く温かい指の腹が申し訳無くなるくらい優しく頬を掠める。
「おら、喰い残しついてンぞ。・・・っとにそういうとこガキっぽいよな」
指で拭った茶色いソースを見せて呆けたまま見つめ返す私を声無く笑う。バスケをしているときの表情がとても好きだった。でもこういう相手が限られた笑顔を、こんなくだらないことで当然のように向けるのはずるい。
「この天然・・・」
「あ?」
熱を持った頬を隠すより上目で睨み付けて、悔しくて、気づけばその太い手首を掴んでいた。ちゅ、ソースのついたそれを鳥が啄むように拾う。瞬間爆発爆発したように反応を返す火神君に、確かにマナーも何もあったものではないと思い知った。


おやつ/120722
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