act.3 秘密のリキュール



 買い込んだ食料を手分けして抱え、最後に二人が入ったのは老舗の酒屋だった。

「珍しいな。お前が酒なんて」

「わたしだって酒くらい飲むぞ?」

 カミュは悪戯っぽく笑ってひとつの瓶を取り、シュラがラベルを確認するより先にさっさと会計を済ませてしまう。
隠すようなことでもあるのだろうかとシュラは訝しく思ったが、カミュは相変わらず上機嫌なので何も言わないことにした。



 聖域に戻ると、二人は磨羯宮を通り抜け宝瓶宮のキッチンに大量の食材を運び込んだ。

 日はまだまだ高く、いくら黄金聖闘士といえど両手に荷物をぶら下げて宝瓶宮まで階段を登れば汗くらいかく。

「暑いな・・・」

「カリツォーでもやってやろうか?」

 カミュは本当に機嫌が良いらしい。滅多に言わない冗談を飛ばし、買ってきた食材をテーブルに広げなにやら仕分けをしている。

「カリツォーはいらん。シャワーを借りるぞ」

 いったいどういう基準で仕分けをしているのかシュラにはわからないが、カミュは昔から片付けが上手い。ここはカミュに任せ、シュラはシャワーを浴びることにした。

 シュラが風呂場に消えると、カミュは冷蔵庫の奥から小さなボウルを取り出し、中で揺れる真っ赤な液体の中に浮かべたいくつかのフルーツを綺麗に取り去って、2つ並べたグラスに液体をあける。
そこへ買ってきたばかりのリキュールのボトルを開け、慎重にグラスに注いでそっとかき混ぜた。

 シュラが風呂から出てくるまで、もう少しかかるだろう。すう、とひとつ息を吐いて精神を集中させ、掌に小宇宙を込めた。



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