(ディーノ×ハウンド)R18



凍てつく夜だ。アメリカ某所、彼らトランスフォーマーにとってはまるで意に介すほどの寒さでもないが、取り分け冷えた風に晒されながらハウンドは岩場に腰を下ろし巨体を震わせた。紫煙をくゆらす薬莢を噛み、物憂げにしんと月を見上げる。賑やかしの若者たちからはぐれると、どうにも静かで心は穏やかだがまた寂しいとも形容できた。空気を吸い込み、吐き出す。次にハウンドはゆっくりと瞳を伏せ、胸にともる灯を思い描いていた。

「なにしてんだ、じいさん」
声に顔をあげると燃えるような赤が実体化し、月明かりを浴びてこちらを見ていた。ハウンドは手を伸ばし、しかし彼は素早く口元から咥えた薬莢を奪い取ると、まるで舞うような歩みで遠ざかる。無言で眺めているとそれを興味なさげに放って、ニヤリと笑う愛しい男だ。
「いやなに…お前さんのことを考えていた」
「ハッそいつは嬉しいね」
「それで、ディーノ。お前さんの方こそ何をしにきた」
「なんだ解らないのか」
わざとらしく肩を竦めておどけたポーズまで様になり、見惚れるうちに距離を詰められる。小柄なディーノは座り込んだハウンドとほとんど変わらぬ位置で顔を近づけ、青く煌めくオプティックを細めた。眼差しだけで愛しいと語った男の口付けを拒めるわけもなく、ハウンドは少しだけ首を突き出すようにして応じる。頭部の大きさからも倍ほどの差があるというのに、ディーノ噛みつくような仕草に圧倒され、腰がむず痒い。
「あんた……察しは悪いのに、ノリはいいよな」
「お前が、のせるのが上手いんだよ」
「光栄だな。ついでにあんたはアッチの具合もいい」
「ツラに似合わねぇなあ伊達男」
「ひとのこと言えねえ体して言うなよ、ハウンド」
しなやかな指が下肢を引っ掻いてハウンドは息を詰めた。厚い装甲に覆われて痛みどころか感覚さえも微々たるものだが、期待が別の意味を持ち熱を生んでいく。ディーノは軽やかに笑みを浮かべてもう一方の手で、ハウンドの蓄えられた髭を弄んでは、合間にキスをして状況を楽しんでいた。求められる快感を知っているからこそ、焦れるように太い腿をすぎて丸い腹を撫で、核心を避ける。
「趣味がいいな、まったく」
「俺を選んだあんたも相当なもんさ」
ディーノの甘い囁きに脳が痺れ、循環するエネルギーさえ湧き立つようだ。冷えた夜に炎にも似た男から与えられるものが愛しかった。ハウンドは堪え切れず、予告なく下腹部を寛げる。窮屈に閉じこめられていたコネクタがぶるりと震え、粘液を零して上を向いた。
「相変わらず宝の持ち腐れって感じだな」
「フンッ……お前さんに使ってもいいんだぞ」
「おっかねぇな。そんなんブチ込まれたら腰がぶっ壊れちまう、遠慮しとくよ」
細い指を巻きつけながらディーノが笑い、自らのものを引きずりだすとハウンドの喉が鳴った。屹立したものは洗練された持ち主そのままの刃のような鋭さがある。青白い光を反射し、互いの体の影になると脈打つそれはいっそ怪しげなほど卑猥に映り、同調するようにレセプタで液が分泌される。
「それ、入れてぇか」
「入れて下さいの間違いだろ?」
「ああ……欲しい。ディーノ、早く中にソイツをくれ」
「素直で結構。愛してるぜ、ハウンド」
やれやれと溜息をつきながらもハウンドは素直に腰の位置を直した。足の間にディーノを迎え入れながら岩に寝ころぶと月と目が合い、一瞬の戸惑いを覚えた。それをかき消す快感が直ぐそこまで来ている。丸く口をあけたレセプタに侵入するコネクタの異物感。冷えた金属の体を震わせる熱に、ハウンドが声もなく悶えた。体内から焼け尽されるような強烈な存在を確かめるように、内壁が絞れる。
「キツかったろ…出した瞬間に中うねりやがった」
「まったく、何度やってもクるな……コイツは」
「休んでる暇なんかねぇぞ」
「ははっ気持ちがいいだろ。満たされてるって感じがよ」
「なんだよ、俺の顔もまともに見れねぇくせして」
あまりに緩やかな律動を続けて、ディーノはほとんど腹に抱きつくような体勢でハウンドを犯した。摩擦に応じて溢れる粘液は場違いなほどに音を立てる。重なるふたりが何時しか無言で唇を寄せ合っても単純な行為は途切れることなく、冷たい夜の中で異質な熱となる。
時々癖のように軽口で濁しながらの接続にじゃれあいを重ねて、やがて陽が昇るまでの愛しい一時に、ハウンドは酔っていた。


「なんだ、いっちまったのか」
ハウンドはそれだけ漏らしそっと火を育てた。気付けば夜は明けていない。何度となく味わった苦さと天へ昇る紫煙が揺らめいて消えれば、月光下の幻影にまで想いを届ける気がしていた。



141101
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