(オプティマス+ラチェット)BH/生存if



悲願であった母なる星の再生を遂げ、漸く活気を取り戻しつつある大きな通りを無意識に大股で歩く。彼の帰った青い星の闇に沈むような夜とは違い、あちこちに光が溢れているというのに酷く寂しく、忙しなく行きかう見知らぬ誰かの中で1人また1人と目を移して虚しさを紛らわせようとも、胸にぽっかりと開いた穴にはより冷たい風が吹き荒ぶばかりだ。金属の群れを抜けだそうにも叶わない。ふうと一つ溜息をついてオプティマスは帰路についた。彼の声を反芻する。一字一句と逃さずに記憶した穏やかなそれを何度も、何度も、足取り重く彼のいない部屋に着くまでに、ひたすらに繰り返した。
「明日になればまた、地球へ帰るよ」という彼の言葉に、予期していたとはいえ複雑な思いでオプティマスは「そうか」と声を絞り出した。全盛期とはほど遠いが、サイバトロン星は少しずつ理想へと向かっている。ここには全てのトランスフォーマーの居場所がある。軍医としての手を必要とするのではなく、ただ傍にいてほしいという利己的な思いを告げてみれば、結果はこの通り。
『君にそう言ってもらえて本当に嬉しいんだ。けれど、たくさんの事が起こり過ぎた。正直に言って、私も君が好きだった。それは今の君と同じ感情だ。あんな酷い戦争の中で、呑気なものだろう…それだから今になってこんな、こんな思いをするんだな』
震えを殺しきれない怯えた小さな体で、あまりにも悲しい、世界で一番優しい全てがすり抜ける。
『オプティマス、私を救ってくれたのはいつだって君だった。ありがとう、友よ』
戸惑い、ただ一度顔を伏せて、それからはただ真っ直ぐに瞳を見詰めた彼の意思を守りたかった。と、都合よく演じることが正しいと愚かにも思ってしまった。きっと縋っても、押しきることなど出来なかったはずだ。わかっている。彼のことを何よりも優先して生きたかったことも、何もかも。
「ラチェット、」
声に出しても届かない。
「君との幸せが、なによりも欲しかった」
かつて剣を握った手を開けば、別れの握手の感覚すらも消えていった。



140218
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