(ロディマス×ウルトラマグナス)R18



握らされたパスワードを打ち込み、指定されたその部屋の床を踏む。外装からは予想もつかないような上等な造りと、もう1枚扉を隔てた先で待つ人物に足取りは重い。ロディマスは意を決して平静を装い、入室を許可した声に進んだ。広すぎる寝台の傍で権威がグラスを傾ける。
「お久しぶりです、ウルトラマグナス総司令官」
「ああ。直接顔を見るのは久しいな、会いたかったよロディマス」
「光栄です。私も貴方に会える日を心待ちにしておりました」
「肩の力を抜きなさい、と言ってもここではそうもいかないかな?」
「いえ、そんなことは…」
薄く笑みを浮かべるウルトラマグナスにロディマスは歯切れが悪くなる。口にしたことは本心であるが、確かにこの場については不服だった。権力を笠に着る者が有する、愛人を囲うための隠れ家。噂で耳にしたことはあれど真意は定かでなかった。しかし認めなければならない。その使い道についてはそれぞれ異なるが、端的に言ってしまえばヤり部屋である。上司と部下、もっと近しければ友人以上の恋人未満といった関係故に、ロディマスにはウルトラマグナスの心中が掴めないままだ。しかし、状況を把握できないほどの純情さもなく、幼くもなかった。
「まあいい、察しの通りだ。シャワーを浴びてくるといい」
「はい。では、そうさせて頂きます」
生真面目に頭をさげて絡むような視線を振り払った。
ロディマスが気乗りしない洗浄から戻ると、空のボトルが2本に増えていた。節度を守る飲み方にしてはピッチが早い。そのせいかウルトラマグナスの頬はかすかに赤らんで、雰囲気は柔らかなものだ。滑らかな動作で不馴れなマットレスに押し倒される。熱い吐息に反して、心がすうと冷えていった。
「君に拒否権がないわけではない、私は君を尊重しよう」
落とされた声は存外、穏やかで冷静だ。だからこそ窺われるものがある。
「司令官、私は」
「ロディマス。私の肩書きに関係はない」
「ウルトラマグナス、私は貴方を拒絶しない。それをどう受け止めるかは貴方の判断にお任せします」
「…それを聞いて安心した私も君は軽蔑しないのだろうな」
可哀想に、と空気が震えた。それがどちらを差すのかを悟る前に視界を閉ざす。触れた唇の感触に歯を割り押し入る舌に吸い付きながら、ロディマスは背に手を回した。腕に余る大きな青の機体が、遠い存在であったはずなのに今はこんなにも近すぎる。ウルトラマグナスが角度を変えて何度も求め声を漏らす度に、くちくちと音立てる緩衝液に胸にある恐れを自覚した。
「君は何もしなくていい」
「ただ寝ていろと?」
「そうだ」
首から胸へ腹へと唇が遠のく。ロディマスは自らハッチを開けて、握られたコネクタに腰を浮かせた。ウルトラマグナスがそれに口付ける。峻厳な声のするそこに飲み込まれた快感に身をよじり、視線がぶつかりあうとくっと喉で笑われた。名を呼ぼうとしてやめることで、表情の変化を読み取る気にもなれない。慣れた仕草で与えられる微かな痺れに、嫌でもその多淫さを見せつけられているようで、不快だった。
言葉通りにロディマスは動くことなく、その腹に跨ったウルトラマグナスの変わり果てた姿を見上げていた。機体差からの負担がないよう極力体重を預けないように気遣い、それでもレセプタ縁際の浅いところが好きなようで一心に腰を振っている。声を抑えることに意味はないというのに、不規則な排気音ばかりが耳につく。
「私は君が愛しいよ、ロディマス。わかるだろう?」
ぐちゃぐちゃと股の間を濡らしながら聞きたい言葉ではなかった。緩く首を振ってウルトラマグナスの手に触れる。それだけでびくりと震えるくせに、ロディマスの言葉を待つ愚かな青い目を見た。
「貴方も、私の心がわからないほど愚かではないでしょう?」
「…私は自惚れたくはない。言ってはくれないのか」
「貴方はずるいですね」
「こうでもしなければ君に抱かれることなどなかったはずだ」
酷く同情を誘う涙であったが、それに引きずられ手放しに喜ぶことなどできなかった。ロディマス、と繰り返し呼ばれる。それに咎められたものを返すとウルトラマグナスが俯き、それでも喜ぶようにコネクタを震わせた。ぎゅうと締めつけるレセプタからの刺激は大したことはない。
「手放せないのは私も同じですよ、ウルトラマグナス」
ロディマスはこの行為の意味について考えることをやめ、言い知れぬ感情を書き変えるだけの快楽を求めるために縋りつく大きな手を強く握り締めた。



140115
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